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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第二章
17/50

「――い、おい! タタリ! 俺だ! ギガントだ!」

「ぅえ……ギガ、ント……?」


 目を覚ますと、目の前にギガントの顔があった。いつもなら、即座に払いのけるのだが、今の俺にはギガントの温もりが暖かかった。そのままギガントの胸に顔を埋めてしまう。


「あー、なんだ。タタリ、歩けるか、ここは危ないから、宿屋に行くぞ。……ウィンディ、そんな怖い顔でこっちを見るな。善意でやってるんだ、善意で」

「……そう」


 振り返ると、ウィンディはそれを少し離れた所から苦虫を噛んだような顔をして見ていた。

 そこにリンゴとエレアが近づいてくる。リンゴは少し涙目で、リンゴもこの状況に混乱しているようだ。


「ど、どどどどうしよう! みんなパニックになっちゃってるよ! み、みんなおちつちちてー!」

「まずはリンゴが落ち着けや」


 バシン、とエレアがリンゴの頭を叩く。それにより更にリンゴが混乱する。……町でもPK可能だったのかな。


「うー、い、痛いー。って、ててててて、痛い!? つ、痛覚まであるよ! どうしよう! どうしようどうしよう! それにPK行為も制限されてないし! あばばばば」

「あー、うっさいなー。ちっと黙ってろ。すまんギガント、ワイら先にCランク宿に行ってるわ」


 エレアはリンゴの口を手で塞ぎ、小脇に抱え込み、走り去っていく。見る人によれば、その光景はまるで誘拐しているように見えただろう。


「タタリ、俺達も宿屋に向かうぞ。繰り返すが、ここは危ない」

「このままここに倒れていれば怪我をする。早く行くぞ」


 ウィンディに手を捕まれ、そのまま引っ張られるようにして広場から離れる。後ろを振り返ると、あるところでは殴り合いが始まったりしていた。

 このまま、混乱は広場全体に広がっていくだろう。しかし、俺にはどうする事もできなかった。



――始まりの都『アガレス』 C級宿屋


 『アガレス』には宿屋がS級、A級、B級、C級、D級、E級、F級、G級の8つあり、C級宿屋は4番目に良い宿屋だ。

 値段は良い宿屋ほど高くなるが、その分設備も充実してくる。G級の宿屋は馬小屋同然だが、F級では寝袋、D級では布団、C級ではベッド、と寝具もだんだん良くなっていき、B級からは調合台や台所等も付き始める。


 この寝具というのが重要で、寝具を使うと、動けなくなる代わりにHP、SP、MPの自然回復量が大幅に上がる。

 この自然回復量はゲームにログインしてなくとも自動的に適用されるので、基本的にプレイヤーは夜寝る時になったら宿屋に入ってログアウトし、朝になったら狩りに出かける。まあ、学生は朝と昼は学校に行かなくてはいけないので夕方からだが。

 中には寝ずに回復POTを使って戦い続けるプレイヤーもいるが、夜になるとモンスターの能力が上がるし、『暗視』等のセンスが無いと命中、回避が下がって危険度が増すので、そういったプレイヤーは一部に限られる。


 他にも、町の外で寝たらモンスターに襲われて気付いたら復活ポイントに居ました、って事もあるし、宿屋に泊らずに一晩過ごしたら、たいしてHP、SP、MPが回復せずに朝になっていた、という事もある。

 寝るだけなら僅かに回復量が上昇するG級でこと足りるので、家を買うまではG級で宿代を節約するのが(ギガントやエレアが言うには)一般的だが、今は非常事態なので普通の寝具があるC級宿屋に泊っている。


 家にもランクがあり、級が高い家だとレギオンの拠点や、宿屋等の個人商店として機能させることも可能だ。しかし、今日始まったばかりのゲームなので、個人商店として機能している家も、レギオンの拠点として機能している家も、まだ存在していない。……はずだ。

 ひょっとしたら、ハム辺りは既にレギオンを立ち上げてレギオンの拠点となる家も買っているかもしれない。


「とりあえず飯でも食いながら、何が起こったかをゆっくり理解しよう」


 そうギガントが言い、俺達5人は宿屋の食堂に向かった。

 D級からは宿に食事が付くので、一般プレイヤーは旅行等で長期間ログインできない状態になる前にD級以上の宿屋に泊ることで餓死を回避するのだが、ログインしていない間、どうやって食事を取るのかは謎だったが、どうやらC級では自分から食堂に赴いて食事を取るようだ。



 食堂に到着すると、適当な席に座って料理が来るまで適当に話して待つ。

 この料理は宿屋毎に決まっていて、C級では夜はパンとスープとサラダ。D級では朝昼夕全ておにぎりらしい。

 適当に宿屋で出る料理の話をした後、ギガントが本題を切り出す。


「で、料理の話は置いておくとしてだな、このログアウトできない非常事態をどうやって打開するか、だが、これはおそらくあの声の言っていた通り魔王を倒すしか無い、と考えるのが妥当だろう」

「でもなー、ワイらが参加してたcβに魔王って存在は居らへんかってん。荒野にゴブリンキングとかちょっと離れた山に火竜の王とかはおったけど、多分違うしなあ」

「うんうん。となると、この大陸に魔王はいなくて、港町から船で魔王のいる大陸へ行く、って事も考えられる。船もあるってことは確認してるし」

「ただ、船は家並に高い。小さい船くらいなら安いが、それだと別の大陸にまでは行けないと思う」

「ま、そんな訳でしばらくは魔王に挑むための準備だな。船に装備にレベル上げだ。っと、料理が来たようだな。どうやら嗅覚もあるみたいだ」


 ギガントは「ほら」と厨房の方を指さす。

 厨房の方を見ると、ふくよかな女性が料理の乗ったトレイを器用に5つ持って運んできていた。本当の人間のように見えるが、NPCかプレイヤーかはわからない。


「はい、これが今日の夕食だよ。味わって食べな」


 料理の乗ったトレイをテーブルに置き、厨房に戻ろうとした女性にギガントが声をかけて引き止める。


「あー、あんた、ここで働いてるのか?」

「はあ、何を言うかと思えば。……この『太陽の羊亭』はね、私、フレダ・アトマックの店さ。十数年前に建ててからずっとね」

「十数年前か……どうも」

「ああ、食ったらそのまま部屋に戻ってくれて構わないよ。皿はこっちで回収するからね」


そう言ってフレダと名乗った女性は厨房に戻っていった。


「……NPCも人間らしくなってやがるな。ひょっとしたら俺達は異世界に迷い込んじまったのかもしれん」

「ゲームみたいにメニュー開いたりできる異世界、ね」

「ひょっとしたら、だ。ついさっき響いた声も、別の大陸のお姫様、かもしれねえな」


 この大陸には国というものは存在せず、大陸の中央に『アガレス』という名の都市があるだけだ。

 その別の大陸のお姫様に呼ばれたってことなら、たちの悪い悪戯としか思えない。

 なんせ、1人や2人ではなく、おそらくSaMoをプレイしていたプレイヤーのほとんどが呼ばれたのだから。

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