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Sense And Madness Online  作者: 一二 三四五
◆第一章
14/50

10

 2時間くらいだろうか、襲い来る熊や狼を退けながら少しずつ、森を進んでいく。

 このまま『魔獣の森』まで進んで、死に戻りする予定だ。ただ、幻獣は倒せるなら倒して大幅レベルアップを狙うらしい。


 最初の熊との戦闘から狩りは順調で、1時間が経った頃には俺も狼狩りに参加させられるようになった。狼は熊よりも素早いが、攻撃力はその分低い。攻撃は極力回避しているが、それでも数が多く、避けきれない攻撃というものが出てくるが、その攻撃力の低さが幸いして、回復POTもまだ余裕がある。


「おい、タタリ、回復POT余ってないか?」

「あ、余ってます。ちょっと待ってください、今渡しますんで」


 ギガント相手にトレード画面を開く。ダンジョンのど真ん中でトレードするのは自殺行為だが、エレアとリンゴとウィンディが警戒しているため、その危険は無い。

 アイテム画面からトレード画面に小さい回復POTを5個移動して、決定ボタンを押す。これで、後はギガントも決定ボタンを押せばトレード完了だ。


「回復POT5個か。じゃあ1個150ゴールドで買い取るわ。750ゴールドっと」

「い、いいですよお金なんて。PTに入れてもらってるんですからこれくらい。それに、これって100ゴールドで買えるやつですよ」

「何言ってやがる。回復POTはダンジョンの奥地じゃ生命線とも言えるんだぞ。これでも安いくらいだ。払わせろ」


 ギガントの押しが強く、断りきれずに決定ボタンを押される。普通のプレイヤーならダンジョンの難度にもよるが2倍3倍は当たり前らしい。クローズドβ時はそういった商売をするプレイヤーもいたらしい。もっとも、大量のアイテムを持つにはかなりのSTRが必要だし、持ちすぎると移動速度が遅くなるので、その商売ができるのは高レベルの戦士職だけだったらしいが。



――『動物の森』 魔獣の森へ至る道


 日が沈み始めたころ、俺が参加しているギガントのPTはようやく『動物の森』の出口にたどり着く。

 ここから先は文字通り次元が違う。本来なら、2~3回で転職してから挑むような所だ。

 出てくるモンスターの強さは1体が高レベルの上級戦士並。それが集団で襲いかかってくるのだ。下級職で構成された俺含めたギガントPTの全滅は必至だろう。

このまま一気に進んでもいいのだが、レベルの確認や収集品の整理等をするためにここで小休止することになった。


「ウィンディー、職業レベルどれくらいになったー?」

「22。リンゴは?」

「うへー、私は20。もっと前出るべきだったかなー」

「いやいや、ワイなんて18やで?リンゴでも十分前出てる方や。ギガントはどんなんや?こん中じゃ一番敵倒してるやろ?」

「俺は25だな。タタリ、お前はどうだ?」

「あ、俺は19です」

「うっひゃー、タタリちゃんワイより上か・・・。ま、前衛職やから仕方ないんかな」


 『拳』もLv13に上がっている。狼の攻撃を何度か受けたからか『軽装備』もLv7になっていた。それはさておきタタリ"ちゃん"って。俺一応男ですよ、エレアさん。

 苦笑いしているとウィンディが俺の頭を撫でてきた。この人は本当に俺の頭を撫でるのが好きなようだ。

 そして口を開くと、


「タタリは今は魔法少女だ。だから言葉使いも女の子らしくした方がいい」

「いや、でも、俺元は男ですよ」

「女の子らしくした方がいい」


 こんな感じで俺に女の子らしく振舞うようにさせてくる。それに従ってもいいのだが、男時にうっかりやってしまったら俺の通り名が「オカマ格闘家」になりそうで、抵抗がある。うっかりをやらかさなければいい問題なのだが。


「タタリちゃん。別に俺っ娘でもワイは一向に構わんでッ!でもできれば「ボク」って言ってほしい!」

「はいはい!私は「あたし」が似合うと思います!」


 エレアはボクっ娘スキーのようだ。リンゴは……なんだろう?あたしっ娘スキー?

 それで「あたし」とか言ったらまたキャーキャー言い出すと思うので言わないが。ギガントの方を見ると、何かの画面を見ながら笑っていた。俺の視線に気付くと、画面を閉じて俺に話しかけてきた。


「ああ、俺は別になんでも構わんぞ。それよりタタリ、掲示板見てみろ、面白い事になってるぞ」


 ハハハ、とギガントは笑う。なんだろう。何か凄く嫌な予感がする。



――――――――――


357 名前:不死アナさん

ガチムチ☆魔法闘士☆タタリ


358 名前:HackYou

やめろwwwww


359 名前:OIL

TATARIは森の奥地にたどり着いたのだろうか


360 名前:不死アナさん

熊さんに掘られてるんじゃねwwwww


361 名前:IDATEN

>>191

「無刀流と魔法少女でHP以外の全ステータス5倍になってます(キリッ」

だっておwwwwww


362 名前:貴腐人

今日のホモスレはここですか?


363 名前:電柱

そうでござる


364 名前:試練の地H道

腐女子は隔離スレ池


365 名前:ギアナ低地

格闘家ってまだ廃止されてなかったんだな・・・


366 名前:HackYou

逆に強化されてるらしい

強化されても弱いけど


367 名前:不死アナさん

格闘家強化って誰が得するんだよ


368 名前:IDATEN

TATARIが得するんだろwwww


368 名前:電柱

格闘家強化する暇があったら侍強化するべきでござる


369 名前:虚無僧等

【職業】クレリックLv7

【性別】男

【ステータス】HP:1850/SP:185/MP:242

       STR:17/VIT:17/TGH:34/DEX:17

       INT:34/MND:34/LUK:17/AGI:9

【センス】杖Lv5、重装備Lv4、マナLv5

【希望】前衛3人募集

【コメント】熊に殴られて回復させてくれるマゾ募集


368 名前:不死アナさん

タタリー!出番だー!


――――――――――



 ネットは残酷だった。知らない内にガチムチ☆魔法闘士☆タタリという渾名が俺に与えられていた。さらにホモでマゾ扱いだ。俺は崩れ落ちたように倒れる。


「……遅かった」

「うわっ! ひどっ!」

「ガチムチ☆魔法闘士☆タタリかー、実際はマジロリ☆魔法少女☆タタリなのになー」

「エレア、そこじゃない」


 リンゴ達もあのスレッドを見たようで、リンゴは「酷い!」を連呼し、エレアはそのままニヤニヤしながらスレッドを見続け、ウィンディは倒れた俺を抱きかかえ、頭を優しく撫でる。時折「大丈夫だ」と言ってくれるウィンディの優しさが嬉しいが足りない。

 そこにギガントが申し訳なさそうな顔でやってきた。


「あー、なんだ、すまん。笑って悪かった」

「おーい、ギガント、これギガントとワイとタタリちゃん並べば、ガチムチ&魔法闘士&タタリでいけるんじゃね?」

「エレア、そのヘラヘラした笑いを止めろ。殺すぞ」

「ひー、冗談、冗談やってウィンディ。そのナイフ下ろしてくれ。・・・ごめんな、タタリちゃん」


 エレアはヘラヘラした笑いを上げていたが、ウィンディがナイフを眼前に持ってくると、その笑いを止め、画面を閉じて俺に謝る。

 そして、みんな黙って、だんだん雰囲気が悪くなっていった。

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