高田伸晃
タイトルは高田ですが、ここで主人公・佐藤隆起がやっと活躍します(#^.^#)見てやってください((+_+))
隆起は、東校舎を制圧することになった。あまり敵、テロリストがいないところだからだ。日向は西校舎。ここにもあまりいない。真治は正面校舎だ。正面校舎にはテロリストの本隊がいる。そこに用人の娘がいるクラスがあるからだ。
東校舎は、正面校舎から少し離れている。体育館(アリーナ)があり、職員室などもそこにある。
西校舎は、正面校舎に繋がっている。しかし、かなり用人の娘のクラスとは距離があり、あまりテロリストもいない。だが、繋がっているので見張りは多い。この校舎は正面校舎と同じく4階建てで、3階からはなぜか、正面校舎に行けない作りになっている。よくわからない作りだ。
正面校舎は、西校舎とほとんど変わらない。
何とか、隆起とマイセルフは東校舎にたどり着いた。当然、いつまでも警察官の格好はしていない。防弾などに強い特殊警察専用コスチュームを着こみ(無駄に迷彩カラー)、あのメガネをかけ、手にはサイレンサー付きのハンドガン。
ハンドガンも特殊仕様であり、コルトに似ているがそれよりもさらに小型で、射程が15~20メートルほどしかない。出来る限りの消音を期待したのだ。ただ、弾ぶれはほとんどない。けど・・・かなり接近しなくては当たらない。当たっても痛い程度にしかならない。使えるかは疑問だ。
一応マガジンを5個。弾は55発。マイセルフも同じ装備をしている。が、今回の任務でそんなに弾は必要なさそうだ。そんなに使っていたらすぐにばれてしまう。
ここまで来るのも、意外とひと苦労だった。それも高田があまりにも役に立たなかったからだ。隆起たちが特殊警察課だと説明するも、警察の機動隊になぜか門前払い。自分たちでなんとかできるから心配するなとのこと。
「高田さん?これは一体?」
不安気というか胡乱気に尋ねたのは日向だ。門前払いされた4人は、かなり惨めだった。四人の周りだけ、冷たい風が通り抜けた。
「えーと、私たちにはあまり実績というものがないからなー。期待のマイセルフも、秘密だから説明できないし。機動隊より優っている証明ができない」
「わかりました・・・て、引き下がれるか!!!これじゃあ話が進まねーじゃねーか!!どうにかしてくださいよ、高田・・・さん!!!」
日向がかなりキレていたが、それは全員に言えることだった。高田も、そのキレっぷりに、生命の危機を感じたらしく、そこからの交渉は必死、死に物狂いだった(そもそも交渉している時点で本末転倒なのだが)。
そして、奇跡的に何とかなった。侵入の方法は至ってシンプルだ。隆起、日向、真治がそれぞれに別れ、侵入する校舎の死角になる場所から、テロリストの視界がはがれた瞬間に単身で乗り込んだ。マイセルフたちはそのあと、少し経ってから同じ方法で乗り込む。真治のマイセルフ『グットアック』がやはりデカすぎて、ばれない為に苦労したようだ。
隆起は自身のマイセルフと合流し、東校舎の状況を読み取る。テロリストたちの人数は五人。簡易式のレーダーのようなもので、それで簡単に調べることができる。巡回している奴が二人。正面校舎を見張っているものが1人。あと2人が周りを見回っていた。
「問題はこの、巡回している2人だね。あとは、こっそり近づくことができれば、鎮圧するのは簡単だ」
マイセルフを見ると、軽く頷いた。よし、調子はよさそうだ。
この東校舎は西と正面と違い、3階までしかない。1階は多目的ホールや柔道場、それにトイレがある(トイレは全階にある)。2階には職員室や校長室などがあり、3階はアリーナだ。
「テロリストたちは、今、見張りを覗いて・・・巡回が2階と、すぐ近く1階の多目的ホールにいるね。こいつは、いや、こいつら全員・・・かなり油断しているね」
巡回している奴も、レーダーを見る限り、動きが遅い。立ち止まってもいる。テロリストとしても、犯罪を犯しているものとしての自覚がないように思える。ゲームじゃないっての。
隆起は一応、大事を取って、多目的ホールにいる1人はマイセルフと一緒に制圧することにした。音もなく近づき、ドアの前に立つ。レーダーでは、多目的ホールにはかなりの椅子が並んでいるようで、そいつは丁度真ん中付近で立ち止まっていた。どこを向いているのか、それは分からない。
「マイセルフ・・・上に小窓があるから、中の様子を見てくれないか?」
そういうと、マイセルフは昆虫のように壁を伝い、端っこからそーと中の様子を探ってくれた。そこでメガネからマイセルフの視界を覗きこんだ。テロリストは手にマシンガンを持ってはいたものの、あろうことかホールのほうを見ている。何やってんだ、こいつは?仕事は違えど(って犯罪者だが)まじめにやらない奴を、隆起は大っ嫌いなのだ(そもそもそいつは犯罪者だし)。
マイセルフを上で待機させ(その姿はまるで・・・いや・・・)、隆起は静かに、物音一つ立たせずにドアを1人通れる分だけ開け、そのまま閉めずに進んだ。閉めたら余計な音が立つからだ。何より、迅速にことを終わらせる方を優先させていた。
そのテロリストは、全く隆起に気が付いていない。呑気に鼻歌のような鼻息が聞こえてくる。その間、マイセルフに周囲(もう1人見回りをしているテロリスト)を見張らせ、隆起はメガネからマイセルフの視界と、目の前にいるテロリストの動きを見ながら近づいた。
ドアを開けた瞬間から、隆起は呼吸を一切していない。まるでゴーストのように(ゴーストに感情移入をさせながら)、・・・と近づく。そして、ゆーっくりとそのテロリストの背後に回り込む。真後ろに隆起が立っていても気が付かないほどの無音。気配すらも、無と化している。
隆起は、テロリストに思いもかけない行動に出る。不意にその油断しきった男の肩に手を置いたのだ。
「わ!!!」
と、言った瞬間に、隆起は男の口に手を当て、男はもごもご言うだけで何も言えなくなった。マイセルフの視界を見ても、その声にほかのテロリストたちは全く気が付いていない。隆起は、にこっと笑い、男の首を絞め、落した。手際よく、口を縛り、手足を縛り、服の中を探る。
「さすがに身分証名書は持っていないか。でも、仲間とのれ・ん・ら・く・に・・・あった」
男の服の中から携帯用の無線機が出てきた。これで連絡を取り合っていたようだ。そのマイクに小さいシールのようなものを張り付けた。
「これで良し。マイセルフももうこっち来てもいいよ」
呼んだが、隆起自身にもうこの多目的ホールには用がないので、マイセルフが来る前にここを出た。マイセルフも隆起の思考が分かっているのでじっと待っていた。もう天井には張り付いていなかったが。
「・・・じゃああとは、取り敢えず(まだ2階にいて動かない)もう1人の見回りを捕まえに行こうか」
「・・・」
レーダーを見ると、2階にいるテロリストは職員室にいた。隆起は先ほど取り上げた無線機をマイセルフに持たせ、窓などから見えないよう警戒しながら進む。階段を上るときが一番神経を使った。
「ここで見つかったらアウトだ」
レーダーで動きを確認しながら(テロリストはなぜか職員室からは出ようとはせず、中をうろうろしていた)、慎重に階段を上って行った。呼吸は線のようにか細く、それでいて落ち着きを払っていた。マイセルフも、天井までは伝っていけないし、ましてや、そんなことをしたら窓から丸見えになってしまうので、隆起の後ろを若干離れて進んだ。
職員室の前に着き、ドアについている窓を覗いて気が付いた。この中は、外から丸見えの全面窓ガラスだった。どうやって中に入ればいいんだ?ドアは職員室の前と後ろに付いている。今いるとこを前というならば、後ろの方からも中を覗き込んでみた。前を遅くたどり着いたマイセルフに見張らせながら。
「こっち(後ろのドア)のほうが、ほかの校舎から見えやすいな」
窓からドアの距離は12メートル(もないかな?)ぐらいあり、通常なら窓の外からなんて見えやしない。しかし、ここは2階なのだ。見えてしまう。テロリストは教師たちの机の引き出しを物色していた。めったに見られない上に、とにかく油断しているのでそんなことをしているのだろう。
「どいつもこいつも・・・まったく」
と、言いながらも、そいつはドア方向に体を向けているので、慌てて身を潜めた。マイセルフも待機するように命じる前に待機している。隆起はそっちに行った。行くも、今はドアを開けることはできない。テロリストがこっち側を向いている限り。
「待つしかないのか・・・」
少しだけ中の様子を覗き込むと、テロリストの姿が消えていた。なんだ?と、理由を考える間もなく、マイセルフがドアを開けていて、瞬間、隆起が中に乗り込み、すぐに閉めた。1秒も満たない間。風すら立たない、立たせない動きで、そのまま隆起は職員たちの机の陰に隠れた。
かすかに聞こえるテロリストの舌打ち。おもむろに姿を現し、手に何か持っている。何かを落し、拾っていたようだ。入るのが刹那でも遅れていたらドアの開閉に気が付かれていた。隆起は運以上に、マイセルフとのコンビネーションの必要性、重要性、価値に興奮していたが、もちろん今も、無呼吸だ。興奮しても、心拍数を上げる訳にはいかなかった。
いくら訓練していても、運動しながらの無呼吸には限界がある。最悪なことに、このテロリストは机から出したものを無造作に床にばら撒いている。そんな中を、距離にして6メートル。無音で接近しなくてはならない。
男が見飽きたのか、次の机に移動し始めた。チャンスだ。男の移動は5歩程度だが、隆起の移動音を消すには十分な足音だった。さらに、チャンス到来。男は思っている以上に雑な性格らしく、机の引き出しを開けるのも大雑把でうるさかった。ここで一気に間を詰める。
コンコン。小さいが、何かを叩く音が聞こえ、男はマシンガンを手にし、ドアを見る。マイセルフがドアを小さくノックしたのだ。男の視界に入ったのは、ドアではなく、人。隆起が男の目の前に立っていた。
「なん・・・」
なんだ?と最後まで言わすことなく、隆起の拳は男の腹に突き刺さり、食い込み、男はその一撃で動けなくなった。隆起は倒れかかった男を支え、さっと椅子に座らせ、とどめの一撃を顔に叩き込む。万が一、その様子を外から見られていても、急に座り込んだとしか思われない。隆起の姿は、気絶した男の陰に隠れている。
こそこそと、先ほど同様に口と手足を縛り、携帯の無線機を奪い取る。もう呼吸はしていたが、それでも来た時のように隠れながら職員室を出ていった。
「これで、東校舎を制圧するのは簡単になったね」
マイセルフにまた無線機を持たせ、話しかける。隆起は、ゆっくり西校舎のほうを見た。建物内だし、窓も気にしている隆起には西校舎を見ることはできない。
「・・・とにかく、ここを終わらせよう」
隆起は残りのテロリストを鎮圧すべく、先を急いだ。




