メンバー紹介
特殊警察課に所属され、すでに2年の月日が経っている。初めの1年目でマイセルフを育て、僕こと佐藤隆起(さとうりゅうき、20歳になりました)は晴れてマイセルフ試験も合格し、半人前だけど特殊警察課の警察官になれました。
うん。やることがない。特にテロなど起こらず、隆起のような新人の特殊警察課の人間は、交番勤務やパトロール、交通安全、取り締まり、など普通の警察官と同じことをやっていた。
時には張り込みの手伝いなどもやらされ、警察の(えらい役職以外の)IDはほとんど持っていた。持たされていた。その間にも、当たり前のようにあのメガネ(マイセルフに着用者に心理などを覚えさせるアレ)は着用し、マイセルフも同じように交番勤務やパトロールなどを行っている。
たまに違う県での特殊警察課の活躍を聞くと、うらやましくもあり、悔しくもあった。もどかしさが一番かもしれない。勤務歴五年になる日向純一(ひなたじゅんいち。27歳)も隆起と同じような心情だが、最近では「まあ、警察官としての務めは熟しているからいいか」なんてぼやいている始末。
ここで(タイミング的にはいいか?)、特殊警察課に所属しているメンバー(仲間?同僚?)を紹介しよう。
あえて、今さら言う必要もないが主人公の佐藤隆起。自身のマイセルフの名前は『マイ・マイセルフ』(名付け親は本人)。マイセルフの大きさは隆起の身長と同じで179cm。職務歴は二年。出動したことは、当然ない。
続いて日向純一。身長170cm。自身のマイセルフの名前は『バディー』(名付け親は本人)。バディーの大きさは140cmほど。小さいほうが役に立つかと思ったからだ。職務歴は五年。出動したことは、隆起と同じでない。ないがために、バディーが役に立つかもまだわかっていない。その特徴がしっかり活かせるかは、未だに不明だ。性格はまじめ。でも程よく適当。まあ顔も悪くない。
最後に(え?と、思うかもしれないが現場で戦う者は3人しかいない。隆起のような現場型は3人ということ)松岡真治(まつおかしんじ、31歳)。身長186cm。自身のマイセルフの名前は『グットアック(グットラックの言い間違えをそのまま)』(名付け親は高田。だから適当なのだ)。アックの大きさは200cm。真治は日向と逆で、アックを大きくしていた。職務歴は九年。出勤は・・・2度ほどある。銀行強盗の鎮圧と、大型デパートジャックの鎮圧だ。2回とも、アックは予想外の活躍を見せた。2度ともアックが目立ってくれたおかげで真治自身が暗躍でき、事態を収拾するのに一役買ってくれた。結果オーライだ。
一応あと、司令部の者なども紹介したいが、ここは名前だけにしよう。総司令官があの高田伸晃(たかだのぶてる)。技術部に森永。あとは高田の下に3人・・・名前はいいか。
隆起と日向と真治はほとんど顔を合わせない。金曜日の夜だけだ(それも毎週ではない)。かといって話もろくにしない。話すこともあまりなかった。
そんな代わり映えのしない毎日を、退職するまで普通の警察官するのかなー。と思いながら過ごしていると、突然に連絡が入り、事態は急変した。
隆起たちの持つ特殊な携帯が一斉になりだしたのだ(ただの支給品の携帯だが)。3人とも今は別々のところで、それぞれの職務をしている。しかし、それが鳴ったらもう行くしかない。それはもちろん、特殊警察課にと思っていたら、その携帯からは現場の場所と地図がメールで示されているだけで、他には何もなかった。
現場に一番近かったのは隆起だ。しかし、とにかくこの任務命令自体初めてのこと。一体どうすればいいのかなんてまるで分らなかった。しかも、最悪なことに、今まで通常任務(警察官としての職務)をしていて、それを勝手に抜け出したことになっている。その言い訳は自分で考えなくてはいけなかった。もしその言い訳が通らなかったら、流石にクビにはならないが、減俸とうの処罰は受けなくてはいけないのだ。
なんという不条理。毎日その言い訳ばかり考えていても、うまく伝えることができるだろうか?本当に無理難題を言う(でも、この特殊任務が行われた際には特別ボーナスが出るので、そこまで悪い話ではないが、そういう問題でもない)。
とにかく今は、高田を探せ。隆起とマイセルフは手分けして高田を探した。
ここは、とある有名な高校。当然神奈川にある高校なのだが、ここにきて、ピーンと来ない者はいない。ある用人の娘が通っている高校だ。高校の周りはすでに人だかりとなり、警察も駆けつけている。高田は野次馬に扮して、この人だかりの中に紛れていた。いつまでも隆起が見つけられずにいるから、高田から声をかけて来た。
「ここだ。どこ見てんだ?」
と、高田が怒るもんだから、隆起も慌てて「すみませんでした」と平謝り。顔を隠すように帽子を被り、完全、完璧に一般人の野次馬親父と化していた高田をここで見つけるのは、あの有名な『何とかを探せ』をしているよりも難しい。今ここに誕生した『高田を探せ』には一切のヒント、一切の特徴はなく、この男は本当に無理難題を押し付けてくるのが好きらしい。
そんな高田が今の状況の説明を始めようとしている。まだ全員揃っていないというのに、説明し始めてもまた同じ説明をほかの2人に繰り返すだけだぞ?そう思っていても、武田はなんの躊躇もなく説明を始めてしまった。
「この高校は、分かっていると思うが、あの、有名な、あの用人の娘さんが通っている学校だ。知ってるよな?」
隆起は高田にうなずく。当たり前だった。一応は隆起も国家公務員の一人だからだ。どれほどのものと高田は隆起のことを思っているのだろう?聞くことでも気にすることでもないが。
隆起が聞き返す。
「その高校が、この騒ぎは一体なんなんですか?僕たちが呼ばれるほどの何かが起こったのですね?それはなんですか?」
「それは今から話す。が、全員が揃った時、佐藤がまとめて説明しておいてくれ」
「?どういう意味ですか?」
首をかしげる隆起を余所に、高田の説明は呆気なく終わった。遅れて、ほぼ同時に日向と真治が到着した。少し探して、この2人はすぐに高田と隆起を見つける。高田が嫌味ったらしく2人を褒めまくっているが、この2人は隆起とそのマイセルフのことを探していたから簡単に見つけられたのだ。
現に隆起を見つけた時、「おーーい。高田さんはどこにいるんだ?知ってるか?」と、言おうとした直前で高田が声をかけて来た。正直、近づいてきたのが高田だとは思わなかったし、そのことで(高田の性格上)隆起に嫌味を言っていることを察し、そっと2人は隆起に謝っておいた。いつものことだ。隆起は全く気にせずに、2人に状況を分かりやすく説明する。
今、起こっていることはこうだ。この高校は今、まさに今テロリストたちに占拠されているらしい。教師、生徒はほとんど解放されているのだが、用人の娘のいるクラスの教師・生徒は全員捕まって人質と化している。詰まる所、金目当ての誘拐事件だ。違うな。金目当ては正しいが、人質立てこもり事件だな。
「大体事件はこんな感じ・・・らしいです」
4人が人だかりから離れて円陣を組むように作戦会議をしている。ほとんどの人が、やはり、この人質立てこもり事件のほうが気になるようで、まったく後ろの方で出来上がった円陣には気が付いてもいない。まあ、見た人たちにはクスクス笑われていたが仕方がない。わざわざ円陣を組んだのはそのためでもある。周りの音を掻き消して(多少は聞こえるがそこは無視で)、4人は作戦会議に集中する。
「でも・・・いっつもこんな感じなんですかね?」
「こんな感じと言うと?」
隆起の疑問に日向が聞き返す。分かるだろ。聞き返さずとも。なんで作戦会議を円陣組んでやるんだよ?当然の疑問だ。だけど、日向の聞き返しにより、隆起はもう言葉を噤んだ。なんだろう。なぜだろうか。それ以上は何も言う気がなくなった。
「なんでもありません。会議を続行しましょう」
全員がうなずく。余計なことで時間を割いている時間がない。隆起は空気を読むまでもなく、話を戻した。高校が占拠された今、そんなことはとても些細なことだった。
高田が現在の高校の中の状況を教える(その説明、どう乗せようか迷うとこだがここは高田が言ったことをそのまま載せよう)。
「犯人グループは全部で21人」
「そんなにいるんですか?」
驚いたのは意外にも真治だ。日向はそっちに驚き、目を見開いた。確かに、21人は多い。でも、そのぐらいのほうが面白い。正直、高田も言ってからその犯人の多さに後悔した。
「ああ、21人だ。20人でも22人でもない。問題はそこじゃない。犯人が身代金と脱出経路を確保するまで動かないことと、一か所にまとまっていないこと。見張ってなおかつ、見回ってもいるらしい。当然ながら、校舎に入っても見つかれば即、立て籠もっているクラスのほうに情報が行き、人質も皆殺しにされるだろう。もしかしたら、そのあと犯人グループも死を覚悟で戦争を仕掛けてくるかもしれない。どのみち、見つかれば終わりだな」
「うへへぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「ここはひとつ、金で解決するのもいんじゃないですか?」
日向をジロッとみんなで睨み付ける。日向は「じょ・・・冗談ですよ」と慌てた様子で今言ったことを否定した。でも、その考え方もありっちゃーありだ。しかし、まだ一度も戦闘の一つもしていない。金で解決してしまえば、それこそ、次の出動の機会がいつになるかわからない。やはり、ここは戦うことにした。それは避けなければならない。
「ですが高木さん。まさかの隠密ですよね?私たちは、・・・私はこれで3度目になりますが(それでもまだ3回目なんですが)、日向や佐藤は初めての任務になるのですよ。大丈夫ですかね?」
真治がまじめ顔で真剣なことを言う。日向と隆起にとって無駄にプレッシャーになった。高田が次にいう言葉は決まっている。聞かずとも、なんていうのか分かっている。一応聞いてみるかと思う前に「馬鹿野郎!!!何のための特殊警察課なんだ!!!!」と、周囲の人たちも振り向いてしまうほどの怒鳴り声で怒られてしまった。そんなに甘くはないし、当たり前だ。
この真治という男は何を考え・・・ちらっと真治の表情を盗み見ると、真治は小さく、でも確実に笑っていた。この男、分かっててわざと言いやがた。その意図は?気合と責任感とこの任務の重要性を二人に叩き込むため・・・と、勝手に解釈することにした。そう解釈せざるを得ない。
「話を続けるぞ」
高田がイラつき始めている。そりゃそうだ。マジにまじめにならないといかん。事態は思っている以上に深刻だ。よし、会議を続けよう。話はそれからだ。
次の話からバトルになっていきますよ




