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植木 仁

基本はガンアクション系な話です。基本的にはカオスな感じになっています。フィクションです。なんとなくでも読んで貰えたらうれしいです。

 朝から、・・・正確にはそうじゃない。起きた瞬間から僕の任務が始まる。僕の名前は佐藤隆起(さとうりゅうき)。警察官になろうと試験を受けたら、運良くなれた。そこまではよかった。僕は頭はそこそこだったけど、運動神経で警察官になれたんだ。ゲームで鍛えた反射神経も役に立った。

 警察官になってから、もう3か月経っていた。警察官になりたての頃、僕に、上官が言ってきた。

「お前、名前はなんていう?」

 上官の名前は植木仁(うえきひとし)。はっきり、隆起のことを馬鹿にしていた。自分が試験管だったら絶対に落していたと、今でも思っている。隆起を見る目は見下しと冷笑が込められているも、隆起にはそんなこと気づきもしなかった。

「佐藤隆起と申します。よろしくお願いします」

 植木は馬鹿にされてもなお、礼儀正しく接しようとする隆起に内心、更なる見下しをしたが、そんなことは微塵も表情には出さなかった。少しだけ舌打ちするように左頬に憎らしい笑みが走る。傍から見ればムカつくほど隠しきれていなかったが、気が付いた隆起にはなんか笑ったようにしか思わなかった。

「佐藤(名前は本当は知っていた。話のきっかけがなくて聞いただけ)、お前に命令が出たぞ」

 命令と言ってもそんな大袈裟なものではなく、基本的には個人の意思が尊重される。だが、未だかつて、それを断った者も断る勇気がある者もいなかったので、植木はめんどくさく『命令』の一言でまとめていた。

 基本、植木は新人を馬鹿にしている。新人だけではない。誰に対しても馬鹿にした態度をとっている。気づいていないようだが、植木こそみんなに馬鹿にされていた。隆起以外には、隆起は誰も馬鹿にしない。する必要がないからだ。

「はい?」

 隆起はその『命令』がなんなのか、植木の口から出るまで待った。植木はもったいぶってなかなか言い出さない。隆起の困惑した顔を見ようとしているのだ。隆起はいつまでもまじめな顔で聞いている。逆にそれが植木のプライドを傷つけた。暴力こそ使わないが(そんなことで使われても困るが)口調が荒々しくなっていた。隆起は真剣に聞いている。

「お前には、特殊警察課になれとの命令が出ている。今から速やかに特殊警察課に出向き、そうそうと挨拶して来い」

 植木はビシッと、特殊警察課のほうを指差した。指差した方向にはトイレしかない。隆起はどういう意図があるんだろう?と思いつつも、とにかく大きな声で返事をした。

「はい!!!」

 すぐに向かおうと思ったが、一つ気になることがあったので植木に質問してみた。指差す方角のことも当然気になったが、そのことは聞かないでおくことにした。なんか、その質問をしたら怒られそうな感じがあったからだ。

「植木上官。・・・あの、特殊警察課って、何をするんですか?」

 植木はもうすでに、自分の中で自分の役割を終えている。隆起に『命令』を伝えればそれでいいのだ。それ以上の会話はめんどくさいだけ。植木がさほど、誰からも信頼されてないのはそこだ。一応、肩書だけあげて、適当に使われているのが植木だ。植木は答える。

「とにかく行けば分かることだ。早く行ってきてくれ」

 植木の仕事は主に伝言板。なので、役職の割には給料がずば抜けて低い。でも、そんなことは植木本人は知らない。植木には、給料を相談、ましてや比べるような友人などいない。それに、植木は当然ながら結婚もしていないし、両親とともに暮らしているので家賃もかからない。いくらでも理由をつければ、適当に給料も安くできた。出来たから、やめさせることもなく、まだ警察官なのだ。

 隆起が二度目の大きな返事、「はい!!!」と答えると、指差した方向とは逆の方向へ走っていった。すぐに見えなくなると、植木もそそくさと、自分の持ち場に戻っていく。指差した方向には、特に意味はなかったらしい。植木の持ち場は主に、受付か駐車場の管理(草むしり等)。毎日休まずに、まじめにこなすのが唯一褒められる点だ。

 隆起はすぐに、特殊警察課に着いた。話のみで聞いたことこそあったが、実状は知らなかった。ほとんど誰も知らないが。そこは、一見するとただの会議室のような場所で、同じ警察官であっても特に誰も気にせず、中を敢えて覗く者はいない(気にはするものの、覗いてはいけない雰囲気が漂っている)。少し間をおいて、コンコン。と、ノックをしてみた。何も返事が返ってこないので、勝手に入ってみた。

「失礼します」

 ノブを回し、木の扉を開ける。そこは、部屋の真ん中に椅子が3つだけ並んだ殺風景な部屋かと思いきや、扉の真ん前に横長の机があり、そこに3人の男が座っていた。3人が3人とも、ひどく冷厳な面持ちをしている。そのうちの1人が言った。

「佐藤隆起君だね?そこの椅子に座りなさい」

 隆起は言われるがままに取り敢えず椅子に座った。どこに座ろうか迷ったが、ほかにも来そうだから端っこに座った。座るとすぐ、3人が3人ともにっこりと笑った。そのあまりの変わりように、隆起は一瞬怯えた。なんか嫌な雰囲気だ。そう思った。その予感はある意味、正しく、ある意味間違っていた。

「ここは何をするところなのですか?」

 隆起の質問に、3人の笑顔が壊れ、ため息に変わる。特殊警察課のことは、基本的には誰も知らない。ここの課に来れる人間は限られているし、初めの選考に落されれば、ほぼ、今後声をかけられることはなかった。なので、警察の試験を受けても、警察のホームページなどでも各メディアなどでもその存在を公表していない。隆起が知らなくても当然のことなのだ。

 3人がため息をついた訳は、植木に対してだ。植木はそう言ったシークレットに関して、口が堅かった。だからそういう伝言なども、ほか役に立たない植木に任せるのだ(ほかにも度々、そのような内密なことを植木に頼んで伝えさせている)。ただ、気が付いてきたことは、植木は口が堅いのではなく、単に言うのがめんどくさいだけなのだ。

「だからあいつは・・・」

 と、3人のうち、誰かがそう言った。もしかしたら、それを言った者が初めに言っただけで、タイミングが違えば全員でハモっていたのかもしれない。

「それでは、まずそこから説明しよう」

 説明し始めたのは、3人のうち、真ん中に座っている高田伸晃(たかだのぶてる)。植木に対して苦言を言ったのも高田だ。高田は、目の前の机に置いてある書類を、意味もなく両端をトンットンッ揃え、「ぅんっ」と軽く喉を調整してから説明し始めた。

 特殊警察課とは・・・マイセルフと呼ばれる機械を使い、普通の警察官が鎮圧できない事件の時に呼ばれ、それを収めるのが役目。なので、それ以外の業務は主に訓練である。基本的には射撃・体術・語学・体力作りに励んでいる(語学はあまり使わないが如何せん暇なのでネイティブのように話せるまでに教える。余談だが、隆起の先輩たちは多くて10か国ほどしゃべれるようになった。もちろんネイティブで)。

 特殊警察課に配属されると、各人、初めにマイセルフという機械を支給される。そのマイセルフを使いこなせるようになることが、初めの任務というか職務というか・・・になる。

 マイセルフとは、特殊警察課に配属された者々が自分の、自分に合った相棒を育てるためのマシーン。機械。ロボット。呼び名はなんでもいいが、とにかくここではマイセルフと呼ばれている(勝手に呼びやすい名前でみんな読んでいる。マイセルフは名称)。自身の思考、考え、行動、心理、精神、いろいろな要素を覚えさせ、共感させ、自分が動いたときに一番してほしいことをオートでさせるためのものだ。

 フォルムは、ほとんど人間と変わらない。背丈は初めに選べる。ほとんどのものが自分に似せる(その方が感情移入しやすいのが一番の理由だ)。たまに、デカかったり小さかったりする者もいるが、それも有りだ。本人に背丈がある場合などは、マイセルフは小さいほうができないことを補えたりするからだ。要は、どこに重点を置くかでその背丈が決まる。体型は基本中肉。そこは言わずもがな。まあ、動きやすいからな。

 顔だけは、ロボットぽい。それでもみないろいろな顔を選ぶ(一応何パターンかから選べる)。人っぽくするのもいるが、あまりに似させるのはボツになる。人間とマイセルフをすぐに区別させるためだ(ロボコップみたいに、ある種の不気味さを帯びてしまうからという理由もあるが定かではない)。

 そのマイセルフを真の相棒にするために、まずは1年。そいつと付きっ切りになり、モノにしなければならない。それが初めのミッションだ。

「ここまでで、何か質問はあるか?」

 高田が隆起に尋ねた。一応言っておくが、ここには高田のほかにあと二人の隆起の上司となる(なった)男がいる。名前すら出さない(考えていない)その2人は、未だに言葉を発していないし、隆起がこの部屋から退出するまで、一言も発しない。だが、気にしないでほしい。

 隆起はその二人のことは気にしないことにして、取り敢えず、初めから気になっていることを質問した。

「その、マイセルフってなんですか?」

 高田は、いま説明したばっかだろうが!と言いたげな顔をしていたが、すぐにニコッと微笑み、答える。隆起も、本当は違うことを聞きたかったのだが、さっき気にしないと心で誓ってしまったため、したかった質問ができなかったのだ。だから、高田の顔がめちゃくちゃ怖かったが、それこそ我慢するほかなかった。第一、高田の名前すら、まだ知らない。

 高田がパチンと指を鳴らした。するとどこからともなく、3人の男が現れた。何かを抱えて。もうすでにそれがマイセルフ(プロトタイプ)だということは想像できたが、後ろに回した首を、その男たちに合わせて元に戻す隆起は、ただただ黙っていた。てか、高田(名前は知らないが)以外の2人、いらなくない?と、本気でこの瞬間に感じたが、胸にそっと仕舞い込む。

 マイセルフ(想像)を持ってきた男たちもすぐにいなくなり、どうでもいいが、この課に配属されて何年かしたら、僕もそのマイセルフ(プロトタイプ仮)を運ばされる役をやらされるんじゃないか?と、別の不安に襲われた。あのパチンと指を鳴らした仕草にものすごく嫌悪感を覚えたが、万が一でも「あー、確実だよ」とは滑らせないように気を付けた。そんなことを考えてもいない顔を作り、隆起はただ黙って言葉を待った。

「一目見れば理解もしやすいだろう。これがマイセルフだ。ただし、プロトタイプ、アベレージモデルだけどな」

 高田は、ニヤッと笑う。アベレージモデルか。あくまでも予想を外させたいらしい。その根底にあるのは、優越感。隆起も合わせて苦笑い。高田はさらに得意げににやける。

「君は、自分に合ったマイセルフをオーダーメイドし、1年間ともに暮らし、君の完璧なパートナーにこいつを仕上げてもらう。育て方は君の自由だ。ただし、ここにはその1年間来ないでもらいたい。3か月ごとに報告には来てもらうが、君の独自の教育でそのマイセルフを育てるのだ。そのために無駄な先入観を持たないのが原則だ。育てるために、ここの訓練施設を利用することや、必要な経費は使ってもいい。その際に、領収書はきちんと取っておけよ。たまに経費で落ちないものもあるから、それは自腹を切ってもらう」

 大体理解できた。隆起は段々と面白くなってきたことを実感していた。しかし、こんな技術がもう実践化されているなんて驚きだ。でも、それならそいつらに任せればいいのでは?僕たちが前線で戦う意味がないだろう。

「ちなみにだが、このマイセルフにはモラルなどは教えられない。凶悪犯の情報はある程度入れることはできるが、警察の情報にない、例えば初犯の犯罪者を自分で見極めて人間のようなモラルで逮捕することはできない。射殺か、逃がしてしまう(人質のフリなどをされた場合)かどちらかだ。似ているだけで、人質を撃ってしまうこともある」

 だから君たちが必要なのだよ。と、言いたげな得意げな顔をする高田。隣の2人もクスクス笑っている。隆起はなるほどと。嫌味っぽい物言いには全く反応せず、納得することができてよかった。

「ここでの、説明はほとんど終わったが、何か質問はあるか?」

 神妙な面持ちでいる隆起。高田たちが質問はないのか?と、隆起の顔を覗こうとするも、俯き気味の隆起の表情を見ることはできなかった。じゃあ、もういいか。と席から立ち上がろうとしたとき、スゥーと、何かが顔の位置まで上がったことに気が付き、動きを止めた。その上がったものは、もちろん隆起の腕だ。挙手だ。1人しかいないこの場で挙手をしている。

「なにかね、隆起君?」

 今、立ち上がろうとしたため若干乱れた書類を、意味もなくまた直した。結局何に使ったのか?それも聞きたかったがすぐに本来の質問を思い出し、やめた。

「1年間・・・そのマイセルフとかいうのを育てるのは分かりましたが、その間の給料は?出なくちゃ生活もできませんよ」

 本当は2人分出るのか聞きたかったが、口を噤んだ。高田は隆起の質問に笑いながら答える。

「ああ、出るとも。ただし、1人分だけどね」

 隆起は聞こえないぐらいの舌打ちをした。すべてはお見通しなのね。

 で、今日がその3か月目だ。・・・さて、どう報告すればいいのだろう?


パソコンで書いてますので読みにくかったらすみません

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