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最終章:終わりなき物語
風が吹いている。 アレクサンドロスが馬を走らせたマケドニアの乾いた丘を、 神武が霧を切り拓いた熊野の深い谷を、 持統が都を見渡した飛鳥の野を、 そして今、この文章を読んでいる貴方の、その窓辺をなでる風だ。
その風の囁きの中に、貴方は八咫烏の鳴き声を聞くことができるだろうか。 「恐れるな、進め。其方の物語は、今始まったばかりだ。世界の果ては、君の足下にある。見上げた空の向こう側に、君を待つ夜明けがある」
物語は、バトンを渡すように、次の世代へと受け継がれていく。 次は、貴方の番だ。 貴方が紡ぐ、今日という一日のささやかな物語が、いつか誰かの八咫烏となり、誰かの絶望を照らす光となる。 東西の王たちが繋いだ黄金の糸を、今、貴方の手が握っている。その糸をどう編むかは、貴方の自由だ。
太陽は、明日も必ず昇る。 世界は再び、黄金色の希望に染まり始める。 その光の中に、三本の足を持つ霊鳥の影が、悠然と舞っているのが見えるだろう。 それは、貴方を待っている。
(完)




