終章:物語の力と未来への希望
図書館の片隅で、一人の若者が古い書物を閉じた。 窓の外には、現代の摩天楼が夕焼けに溶け、群青色の空が広がり始めている。ネオンの光が地上を飾り、太古の星々の光を隠しているが、空の深淵は変わらずそこにある。地上は騒がしいが、天空は静寂に包まれている。
「結局、これらは全部、昔の人が作った壮大な作り話なのかな。アレクサンドロスと神武天皇が繋がっているなんて、科学的にはあり得ないだろうし……」 隣の席で静かに資料を整理していた、年老いた司書が、若者の独り言に優しく、だが確かな響きを持って答えた。
「作り話かどうか、それはさほど重要ではないよ。その物語を読み終えたとき、君の心に、どんな風が吹き抜けたか。君の背中を、誰かがそっと押したような気がしたか。今日という日を、もう少しだけ勇気を持って歩けそうな気がしたか。それが物語の『真実』なのだよ。アレクサンドロスが信じた道が、君の心の中に新しい道を作ったのなら、それは事実よりも重い『現実』なのだ。神話は、君を未来へ運ぶ翼なのだから」
若者は窓の外を見た。 夕焼けの残光の中、一羽の大きな鳥が、悠然と羽ばたいていくのが見えた。カラスのようにも見えたが、その動きはあまりに気高く、太陽へと吸い込まれていくようだった。 その鳥の足が何本あったか、距離のせいで定かではない。 だが、その鳥が迷いなく、明日の太陽が昇るべき東の方角へと飛んでいくのを見て、若者の胸には、確かな熱い何かが宿った。
物語は終わらない。 君が新しい一歩を踏み出すとき、八咫烏は再び、その黄金の翼を広げるのだから。 砂漠の熱風も、熊野の霧も、君を止めることはできない。君の旅を導く光は、すでに君自身の瞳の中に灯っている。




