表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の金烏、星辰の覇道 ― アレクサンドロスと神武、女神が繋いだ東西の伝説 ―  作者: 如月妙美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/15

第九章:勝利と統一

 八咫烏の導きにより、神武の軍勢はついに熊野の難所を抜け、吉野の清流を経て、大和の心臓部である宇陀へと辿り着いた。

 そこに待ち受けていた敵対勢力の豪族たちは、神武の姿を見て、戦意を喪失した。  なぜなら、神武の頭上には常に、巨大な太陽の光を背負った黄金の烏が舞い、彼の放つ威圧感は、もはや人間のそれではなく、神そのものの輝きを湛えていたからである。彼の言葉一つ一つが、大気を震わせ、人々の心に逆らえぬ権威として響いた。山々は彼の言葉に共鳴し、川の流れさえも彼に道を譲るかのようだった。

「この御方に弓を引くことは、天を射ることと同じだ。地を呪うことと同じだ。逆らえば、魂が焼き尽くされる。私たちは人ではなく、神の代理人に仕えるべきなのだ」  豪族たちは、次々と武器を捨て、神武の前に跪いた。それは武力による屈服ではなく、圧倒的な「聖性」への帰依であった。恐怖を超えた敬愛が、彼らを結びつけた。

 ついに長髄彦との最終決戦。空は急に暗転し、真夏というのに雹が降り注いだ。世界が凍りつくような冷気が戦場を包む。不吉な予感が敵陣を支配した。  その暗闇の中で、神武の弓の端に、目が眩むほど輝く黄金のとびが止まった。  その光は雷鳴のように敵陣を撃ち抜き、敵兵は目も開けられぬまま、自らの影に怯えて潰走した。  それは、八咫烏が運んできた、太陽の究極の力であった。破壊するための力ではなく、偽りの王を退け、真の統治者を示すための光。この光を見た長髄彦も、ついに己の敗北を悟り、天の裁きを受け入れた。

 辛酉の年、正月。  神武は大和の橿原かしはらの地に、壮麗なる宮殿を築き、初代天皇として即位した。 「八紘をおおいていえと為さん。この大地を一つの家族のように平和に治めよう。憎しみではなく、法の光で世界を包もう。武力は争いのためのものではなく、平和を維持するための盾である」

 即位の儀。  祭壇の上で神武が深く拝礼したとき、遥か高い蒼天に、一羽の烏が巨大な円を描いて飛んでいた。  神武はそれを仰ぎ見て、静かに微笑んだ。  その微笑みは、かつてバビロンで空を見上げたアレクサンドロスのものと、全く同じ質感を帯びていた。それは、果てしない旅を終え、ようやく自らの使命という椅子に座った者の安堵と、さらなる未来への覚悟が混ざり合ったものであった。彼は、自分が始めたこの物語が、幾千年の時を超えて語り継がれることを予感していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ