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自転車の前かごを百合の花でいっぱいにして会いに行くよ

作者: 各務 史
掲載日:2025/12/09

なろうラジオ大賞7への投稿作品です。

投稿するのは真冬だったりしますが、夏を舞台にした物語です。

蝉の声を耳の中で再生しながらどうぞ。^^

 すぅーー。うん、相変わらずいい匂い、深い緑の匂い。

駅に降り立って、俺は深く息を吸い込んだ。

 駅前なのに蝉が大合唱、陽射しも都会より強い。

帰ってきた、と思った。

眩しすぎる光にふと、あの夏の一日がよぎった。


 その日は朝からよく晴れて蝉が頭の痺れるくらい鳴いていた。

自慢のMTBに釣り道具を積み込んで湖へ向かう。

スピードが乗る。風が気持ちいい。

そんなご機嫌な俺の横を1台の自転車が追い抜いていった。

ムッ! 俺は抜き返そうとギアを上げた途端

ガッシャーン!ザザー!俺は盛大な音を立ててコケた。

 「大丈夫?」

夏の風みたいに透明な声がして顔を上げると、俺に手を伸ばしている子が見えた。

麦わら帽子にタンクトップと短パン。そいつは鏡かと思うくらい俺と同じ格好だった。

ただし、濃い金髪で緑色の目だったけど。

「平気。」

何とか起き上がる。

「あ、血。」

そう言うとそいつはハンカチを取り出し断る隙も与えず俺の足に結んでニッと笑った。

白くてほっそりした指は手際がよくてドギマギする。


 前かごに溢れんばかりの白百合、そして細いタイヤの自転車はお洒落で

そいつに似合ってるように思えた。

「湖、釣り、行くの?」

俺は肯いた。

「湖、お墓ある?」

そう言えば、湖の近くにあったなと思い出す。

「あるよ、一緒に行く?」

そう言うと、そいつはぱっと明るい顔になった。

「越してきた。一番目、友だち。」

「あぁっと、ごめん。俺明日引っ越すんだ。」

がっかりするそいつからくらっとするような甘い花の香り。

「でも!友だち!クリス。」

そいつが自分の胸をさしてそう言った。

「え、あ、賢人。」

そいつの勢いに押されて俺たちはたぶん友だちになった。


 「あれ?もしかして、賢人?久しぶりだな!」

背後から突然声を掛けられて、過去の時間から一気に今に引き戻された。

昼飯に誘われて小さな店に向かった。

開店準備をしているのはほっそりした金髪美人。

「あ、クリス、もうやってる?」

「丁度今からよ。」

彼女は聞いたことのある透明な声で答えると、ニッと笑った。

あの夏のクリスだと気付いて心臓が跳ね上がる。女の子だったのか!

彼女は覚えているだろうか。たった一日の友だちのこと。

自転車のかごを白百合で一杯にしてハンカチを返したら、思い出す?

考えただけでドキドキする。準備をする彼女の髪から甘い花の香り。

ああ、どうやら俺、一目惚れ、いやそんな言葉無いけど、

クリスに二目惚れしたみたいだ…。


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― 新着の感想 ―
つ、続きが...気になります 運命、ですかね
一日だけの友達との再会は二目惚れ。 運命感じちゃいます。
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