タイトル未定2025/06/27 23:16
2話 レンの過去
シェル「なぁレン、最初に殺した奴の事覚えてるか?」
レン「忘れたくても忘れられませんね
最初に殺したのは実の父親でしたから」
俺の父親は暴力を振るう人だった。
10歳の時。ついにエスカレートした父が母に椅子を振り上げた。
俺は無我夢中で父の背後から花瓶を頭部目掛けて投げて命中。
そのまま父は息を引き取った。
母は俺を庇って警察に逮捕された。
日頃暴力を振われていた事もあり、逮捕期間は短かかった。
出所して数年が経った頃、母は病で亡くなった。
俺はその後随分荒れた。
そんな折、隊長に出会った。
シェル「今でも覚えてるよ、お前と出会った時の事
光を帯びないこの世の全てに殺意を抱いてるような目に
俺はどうしようもなく惹かれたんだ」
レン「隊長も物好きですよねぇ、普通近付きませんよ」
シェル「なぁレン、俺といて楽しいか?」
レン「えぇ、隊長の面倒見るのは大変ですけど」
シェル「おー耳がいてぇ」
レン「ですが、あなたに出会えて良かったですよ」
シェル「!俺もだ」
レン「隊長覚えてます?あの時あなたが言った言葉」
シェル「え、何だっけ?」
レン「俺がお前の居場所になるってくっさい台詞言ったでしょう」
シェル「あー言ったわ」
レン「嬉しかったんですよ」
シェル「へへ、照れるじゃん」
シェルは鼻の下を人差し指で小さく掻いた。
レン"あなたは眩しかった
出会ったあの日からずっと
どんな暗闇も照らしてしまうくらい眩しくて
そんなあなたに俺がどれだけ憧れたか
きっとあなたは知らないでしょうね"
じっとシェルの顔を見るレン。
シェル「何?」
レン「いえ」
シェル「なぁ、レンは何で仲間になってくれたんだ?」
レン「あなたがしつこかったからですよ」
シェル「だってお前」
レン「?」
シェル「ずっと同じ場所にいたから」
レン「!」
シェル「本当に俺が嫌なら場所変えて逃げるだろうなって
それに武器も向けて来なかったしな」
レン「・・・っ」
レンは悔しそうに顔を赤く染めた。
不意打ちを食らったような顔をした。
レン"手を伸ばすのが怖かった
差し出された手を取れば暗いだけの自分が消えて無くなってしまいそうで
なのにまた明日も来るのではといつの間にか願っている自分が苦しくて
そんな自分を救って欲しくて
輝く太陽のような笑顔を向けるあなたのその手を取った"
シェル「俺は両親を殺した罪悪感から逃げたくてチェルを可愛がった
弟と離れた寂しさから早く仲間を作りたくてお前に執着した
俺はお前が言うような綺麗な奴じゃないよ」
レン「いいじゃないですか、今こうして一緒に旅できてるんですから
俺はそんな隊長だからこそ救われた
弟さんも自慢気に言ってましたよ
にーちゃんは俺のスーパーヒーローなんだって」
シェル「・・・」
レン「あ、隊長ひょっとして泣いてます?」
シェル「泣いてないし」
〜レンは優しい?〜
フローナ「レンさんって女の人に優しいんですね」
レン「?俺は優しくないですよ」
シェル「そういや、レンが女の子に優しくしたのなんて見た事ないな」
フローナ「え、でも・・・」
メリサ「そうそう、女の子に話しかけられてもいっつも無愛想だしましてや相手を気にかける事なんてないさね」
フローナ「そ、そうなんですか?私にはそうは見えないですけど」
シェル「あー、レンはな、心を許した相手には懐くんだよ」
レン「懐くって犬じゃないんですから・・・」
シェル「警戒心の強い犬みたいなもんじゃん」
レン「それを言うならあなたの方が犬でしょう」
シェル「えーそうか?」
フローナ「そうねぇ、シェルはゴールデンレトリバー、レンさんはドーベルマンって感じ」
メリサ「わ、それめちゃ分かる!」
レン「フローナさんにとって俺も犬みたいな感覚なんですか・・・」
シェル「まぁ、俺はフローナが飼い主ならアリだな」
レン「あんたそれ本気で言ってんですか・・・」
シェル「だってさー、そしたら頭撫でてもらったり散歩連れてってもらったり、ご飯の用意もしてくれるんだぜ?めちゃいいじゃん!」
フローナ「え?シェルって撫でなでされたかったの?」
フローナ"それなんか可愛い"
コキア「でも、それじゃいつもの隊長と変わらないような」
シェル「え」
メリサ「確かに・・・頭撫でなではともかく、僕ら散歩は毎日一緒にしてるようなもんだし、レン君にご飯の用意もしてもらってるしねぇ」
シェル「はっ・・・って事はひょっとして俺の飼い主はレン・・!?」
レン「勝手に俺を飼い主にしないで下さい」
メリサ「何か自己完結したみたいだね」
フローナ「うーん(笑)」
〜寄せ鍋〜
お昼。
シェル「そばにいていいか?」
フローナ「でも・・・」
シェル「泣いても怒ってもいいからそばにいさせて欲しい」
フローナ「うん」
・・・。
フローナ「シェル、ごめんね、迷惑かけて」
シェル「こんなの迷惑のうちに入んないよ」
シェルはフローナの頭をポンポンする。
フローナ「ありがと」
シェル「手繋ぐか?」
フローナ「え?」
シェル「弟が泣いてる時によく手繋いたんだ
そしたらすぐ泣き止んでてさ
嫌だったら・・・」
フローナはそっとシェルの袖を掴んだ。シェルは微笑むとその手を優しく握った。
数分後、フローナがうとうとし始めた為、そのまま寝かせる事にした。
メリサ「隊長、入るよ」
シェル「ああ」
メリサ「フローナちゃん眠れたみたいだね」
シェル「うん」
メリサ「・・・ずっと手繋いでたのかい?」
シェル「まあな、弟にしかやった事なかったから効果あるか分かんなかったけど
しばらくしたら落ち着いたみたいでさ
うとうとしてたからそのまま寝かせようと思ってな」
メリサ「そうかい、それなら後は隊長に任せるよ」
シェル「うん」
・・・。
フローナ「ん・・・あれ、私寝ちゃってた?」
目こしこし。
シェル「起きたか」
フローナ「シェル、えーと・・・手もしかしてずっと繋いでてくれたの?」
シェル「うん」
フローナ"そっか、シェル振り解かずにいてくれたんだ・・・"
フローナ「あの、ありがとね?」
シェル「いえいえ、さっきよりは顔色良くなったな
良かった」
フローナ"シェルはほんと優しいなぁ・・・"
夜。
メリサ「よし!僕はこれからフローナちゃんの不調を無くす薬を開発するよ!」
シェル「珍しくやる気だなメリサ」
レン「それなら俺は微力ながら元気になれる食事を調べて作ります」
フローナ「メリサさん、レンさん・・・」
コキア「なら僕は抱き締めてあげます」
フローナ「え?///」
コキア「抱き締めると精神が安定すると言うデータがあるんです」
シェル「な!コキアずるいぞ!俺だって手繋ぐだけで我慢したのに!あ・・・」
コキア「手、繋いだんですか?」
レン「ほぉ?それは聞き捨てなりませんね」
シェル「いや、フローナが落ち込んでたから励まそうと、ちょっとだけな??」
レン「急にもごもご言うじゃないですか」
メリサ「いーや、ガッチリ繋いでたね、しかもず〜っと!」
シェル「メリサ!レン、落ち着けって、な?」
レン「問答無用!」
レンは刀を鞘から抜くとシェル目掛けて振り下ろす。
シェル「ひえぇ!助けてぇ!」
当然シェルは逃げる。
フローナ「ふふ」
コキア「・・・」
コキアは二人は追いかけっこをしている隙にフローナに近付くとぎゅっと抱き締めた。
フローナ「え、ちょっと、コキア君!?///」
シェル「あー!どさくさに紛れて何フローナに抱き付いてんだ!」
レン「そうですよ!抜け駆け禁止ですよ!」
フローナ「まぁまぁ!コキア君まだ子どもなんだから」
シェル「俺の一個下なだけじゃい!」
レン「そうですよ!13歳はもう立派な男です!」
コキア「二人もフローナさんとハグしたいんですか?」
シェル「え、そりゃまぁ・・・」(照れ)
レン「んん!」(咳払い)
メリサ「じゃあもうまとめて皆んなでハグしちゃおうよ♪」
フローナ「え?わぁ!」
メリサはフローナに抱き付いてるコキアごと抱き締める。
シェル「俺も俺もー!!」
レン「いえ、俺は・・・」
シェル「つべこべ言ってないでお前も来いって!」
シェルはレンの腕をグイグイと引っ張った。
レン「え、ちょっと!」
最終的に一番体がデカいシェルが全員を抱き締める形となった。
フローナ「あったかーい!」
メリサ「だね♪」
コキア「・・・」
レン「やれやれ・・・今日の夕飯は寄せ鍋ですね」
〜自分の為に人を殺めても〜
レン「隊長は冷酷な人ですよ」
フローナ「え、冷酷ですか・・・?そんな風には見えないけどな・・・」
レン「例えば我々が誘拐されたとして
隊長の足止めをする為に敵が子どもを人質に取ったとしますよね」
フローナは頷く。
レン「そうなった場合、隊長は1ミリも迷うことなく子どもごと相手を切り捨てて先に進むでしょう、
仲間を守ろうとした時の隊長は絶対に揺らぎません、
そういう男なんですよ」
フローナ「そういう場面に出会したことあるんですか?
フローナのその言葉にレンは困ったように微笑んだ。
レン「フローナさんもいつか背負うことになるかもしれません、隊長はそれを恐れているんです、
ですからその時はどうか隊長を受け入れてあげて下さい、隊長が一番気にしていることでしょうから、仲間に命を背負わせてしまうことを」
フローナ「私・・・正直その場にならないと分からないです」
レン「ええ、それは仕方のないことです、我々もそうでしたから」
フローナ「でも」
レン「?」
フローナ「少なくともシェル一人に背負って欲しくないです、シェルには笑っていて欲しいから」
レン「その言葉、隊長が聞いたらきっと喜びますよ」
〜フローナとレンの精神不調〜
メリサ「あれ、フローナちゃんまだ起きてこないね、僕起こしに行ってくるよ」
シェル「いや、俺が行くよ」
コンコン。
シェル「フローナ、開けるよ」
フローナはベッドの淵に座ったまま青い顔をしていた。
シェル「フローナ、何かあったか?」
フローナは首を左右に振る。途切れ途切れに言う。
フローナ「急に不安と恐怖感がきて・・ごめ、ね・・・時々あることだから大丈夫」
フローナ"こんな私じゃ皆んなに見放されても仕方ないよ・・・"
そんなフローナをシェルが抱き締める。
シェル「大丈夫だ、俺らが付いてる、俺に言いにくい時はメリサやレンやコキアに言ってくれていいからな」
フローナ「うん・・・ありがと」
それから二週間後。
レンが突然、息が苦しいと廊下でしゃがみ込んでしまった。
フローナ「レンさん、大丈夫ですか?今メリサさんを」
シェル「フローナ、大丈夫、俺がやるから」
その時、シェルが後ろから声を掛けてくれた。
フローナ「え?」
シェルがレンを抱き締めていると続いてメリサがやって来た。
メリサ「フローナちゃん、ちょっといいかい?」
フローナ「は、はい」
メリサはフローナをキッチンに連れて行く。
フローナ「フラッシュバック?」
メリサ「うん、レン君の場合、過去のことを思い出して過呼吸になっちゃう時があるんだ」
フローナ「あんなにしっかりしたレンさんでさえ・・・」
メリサ「何かを抱えてるのはフローナちゃんだけじゃないってことさ、
大丈夫だよ、フローナちゃんやレン君には僕らがついてるんだから」
フローナ「ありがとうございます・・私、こんな弱いまままだと皆んなが離れていっちゃうんじゃないかって不安だったんです」
メリサ「んー、じゃあさフローナちゃん」
フローナ「はい、何ですか?」
メリサ「フローナちゃんは隊長はよく暴走するけど嫌になったかい?」
フローナ「え、いえ、全く」
メリサ「それと同じじゃないかな」
フローナ「全然違う気がしますけど・・・」
メリサ「それは仲間として一緒にいるからだろう?
他人だったら面倒だし放っておくよ」
フローナ「まぁ、確かに・・・」
メリサ「何百回も同じ場面見てるのに全然嫌じゃなくて
放っておけないって思うのって仲間の特権じゃないかなって僕は思うよ」
フローナ「そうですね、私も全然嫌だって思ったことないです」
メリサ「だろ?それで、レン君のことなんだけど、
なーぜか隊長が抱き締めると発作が治るんだよね」
フローナ「不思議ですね、私の時もそうでした」
メリサ「おや、フローナちゃんもなのかい」
フローナ「シェルには不思議な力があるのかな」
メリサ「あれはアニマルセラピーだよ」
フローナ「ぶっ、ちょっメリサさんそれ的確過ぎます」
メリサ「あ、今の上手かった?」
メリサはケラケラ笑っている。
それにつられてフローナも笑う。
シェル「だーれがアニマルセラピーだメリサ」
後ろからすかさずツッコミが入る。
メリサ「やだよ、聞いてたのかい?」
フローナ「シェル、レンさんは・・・」
シェル「心配すんな、今眠ってるよ」
メリサ「そうかい、ならひとまず安心だね」
フローナ「悩んでるの私だけじゃなかったんだな・・・」
シェル「ん?あー、精神的なやつか」
フローナ「うん」
シェル「まぁ、何にも抱えてない奴なんかいないだろ」
フローナ「そっか、そうだよね・・・」
メリサ「ってことは隊長も何か悩んでるのかい?悩んでるの見たことないけどさ」
フローナ「でも確かにシェルが悩んでるとこ見たことないね、怒ってるとこもないし」
メリサ「隊長は基本的に喜怒哀楽の喜と楽しかないんだよ」
フローナ「それも凄いですね」
シェル「あのねぇ・・俺だって悩む時くらいあるっての」
メリサ&フローナ「「例えば?」」
シェル「え?うーん、悩み、悩みかー・・うーん」
メリサ「悩みがないことに悩まないどくれよ」
その時、コキアが眠そうな目を擦りながらキッチンに入って来た。
コキア「ふぁ・・・」
フローナ「あ、コキア君おはよう」
コキア「おはようございます」
メリサ「あ、そうだ、今レン君眠ってるんだった、
えーと、コキア君、桃と牛乳でいいんだったよね?」
コキア「はい、あ、フルーツ牛乳にしてもらえると」
コキアはフルーツと牛乳しか食べない。
特に桃の季節になるとそればかりだ。
メリサ「はいよ」
フローナ「あ、私やります」
メリサ「ありがと、一緒に作ろうか」
フローナ「はい!」
二人が作業に取り掛かると
コキアがシェルの裾をくいくいっと掴んだ。
シェル「ん?どしたコキア」
コキア「何かあったんですか?」
シェル「あぁ、さっきレンが発作起きてな、けど今眠ってるから起きたら治ってると思う」
コキア「なるほど」
10分後。
メリサ「はいよ、コキア君」
フローナ「どーぞ」
コキア「ありがとうございます・・・ごくごく」
その時、レンがキッチンに入ってきた。
顔色はだいぶ良くなっている。
フローナ「あ、レンさん!」
シェル「よー起きたか、気分どうだ?」
レン「大丈夫です、ご迷惑をおかけしました」
メリサ「全然だよ」
フローナ「レンさん元気になって良かった」
シェル「んじゃ、俺焼き魚食いたいー!」
メリサ「ちょいちょい、レン君病み上がりなんだから今日は適当にパンでも買って」
レン「俺ならヘーキです、というか何もしてないと落ち着かないです」
メリサ「そうかい?ならいいんだけど、無理はしないでおくれよ」
レン「ええ、ありがとうございます」