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ゆく水に かずかくよりも はかなきは
題知らず
よみびとしらず
ゆく水に かずかくよりも はかなきは おもはぬひとを おもふなりけり
(恋歌一522)
流れ過ぎて行く水の上に数を書くよりはかないことは、私のことなど何も思わない人を、思うことなのです。
かなわぬ恋、忍ぶ恋の名歌と想う。
かなわない事情や理由はわからないが、とにかく、何をしても、無視されてしまう相手なのだと思う。
参考
水の上に 数書く如き 我が命 妹にあはむと うけひつるかも
(万葉集巻11-2433)
水の上に数を書くような、はかない私の命ではありますが、愛しい妻に逢えるようにと、神に祈ったのです。
ただ、万葉集の場合は、「そこをなんとか」と神に祈っているが、古今和歌集の歌は、神に祈ってはいない。
神に祈ることも、憚られるような、そんな恋だったのかもしれない。




