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唐衣も ひもゆふぐれに なる時は
題しらず
よみびとしらず
唐衣も ひもゆふぐれに なる時は 返す返すぞ 人はこひしき
(恋歌上一 515)
※唐衣:「ひもゆふ」にかかる枕詞。唐衣に付属した「紐」を「日も」にかけている。
一日も夕暮れになる時分になると、しきりにあの人が恋しくなるのです。
下紐が解けることは、愛しい人に逢える前兆と思われていた。
しかし、この歌では、夕暮れになり寒さを感じたのか、紐を結う。
これでは、ますます愛しい人に逢えるわけがない、と自ら自嘲するような歌と解した。




