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秋風の 吹きにし日より 久方の
よみびとしらず
秋風の 吹きにし日より 久方の あまのかはらに 立たぬ日はなし
(秋歌上173)
※ひさかたの:「天」にかかる枕詞。
秋風が吹き始めたその日から、天の川の河原に、立たない日はありません。
彦星の到着を、今か今かと待ち焦がれる織姫の立場で詠んだ歌。
新暦の感覚で、「七夕」をとらえてはならない。
旧暦においては、七月から九月が秋の季節。
秋の涼やかな風を感じたら、七夕が近いと思う。
現在のように(新暦のように)、梅雨空や蒸し暑さはない。
当時(平安王朝)の貴族は、秋の涼しく澄んだ空をのんびりと眺めながら、こんな雅な歌を詠んだのである。