19/311
白波の あとなき方に 行く舟も
藤原勝臣
白波の あとなき方に 行く舟も 風ぞたよりの しるべなりける
(恋歌-472)
白波は立つけれど、跡はすぐに消えてしまうので、そんな恋路を行く舟は、風だけが頼りとなる案内になるのです。
なかなか意中の相手に想いを告げられない男。
きっかけは、ありそうで、でも、すぐに消えてしまう。
白波を起こす風だけ(それもあてにはならないが)が頼り(便りの意味もある)を渡すしるべ(手がかり)になるのだけれど。
深窓の女性には、侍女を介して手紙を送る。
しかし、その侍女があてにならないようだ。
おそらく侍女の段階で言を左右にするのだろう。
かくして、恋の成就は、侍女の気分(風)しだいになる。




