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流れては 妹背の山の 中におつる
題知らず
よみびとしらず
流れては 妹背の山の 中におつる よしのの河の よしや世の中
(恋歌五628)
※妹背の山:妹山と脊山。脊山は紀ノ川右岸(和歌山県伊都郡かつらぎ町)。
妹山は、左岸。(伊都郡かつらぎ町)。
(私のどうにもならない恋の思いは)流れ流れて、行きつく先は妹背の山の中に激しく滝のように落とされる吉野の河と同じ、だから、吉し、とします、これが世の中というものなのですから。
完全な別れを自悟り、悔しい思いを残しながらも、失恋など世間の常と自分を慰める歌。
この歌をもって、古今和歌集の恋の歌は終わる。
やはり撰者は紀貫之が主要メンバーだったので。故郷紀ノ國の風景が詠みこまれた歌を選んだ、と思う。




