154/311
夕されば 人なき床を 打ちはらひ
題知らず
よみびとしらず
夕されば 人なき床を 打ちはらひ なげじかむためと なれるわがみか
(恋歌五815)
夕方になると、(どうせ)あの人が来ない床の塵をきれいに打ち払い、(そんなことをしながら)ただ嘆きに嘆く、わびしい私なのです。
想い人は、どうせ来ないと思っていても、床を整え、準備は怠らない。
しかし、やはり、待てど暮らせど、来ない。
そして、ただ嘆くだけの、わびしい人になる。
捨てられた女の寂しさの中、床の準備だけは怠らない。
だから、侘しさは募るばかりとなる。




