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おほぞらは こひしき人の かたみかは
題知らず
さかゐのひとさね
※さかゐのひとさね:酒井人真。生年不詳 ~ 延喜17年(917年)4月没。平安時代前期の官人・歌人。官位は外 従五位下・土佐守。所収一首。
おほぞらは こひしき人の かたみかは 物思ふごとに ながめらるらむ
(恋歌四743)
大空は 恋しいけれど逢えない人の形見なのでしょうか。
物思いをするたびに、眺めてしまうのですから。
『源氏物語』幻帖では、光源氏と夕霧が語らう場面で、
光源氏が思わず亡き愛しい妻、紫上を思い出すようにして、空を眺める場面に使われている。
※ 心には、ただ空を眺めたまふ御けしきの、尽きせず心苦しければ、「かくのみ思し紛れずは、御行ひにも心澄ましたまはむこと難くや」と、見たてまつりたまふ。
(夕霧は)空をおながめになる院(光源氏)の寂しいお顔を見ていいたのですが、このように故人を悲しんでばかりでは、出家をされても透徹した信仰におはいりになることはむずかしくはないかと思っていおります。




