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思ひいでて こひしき時は はつかりの
人をしのひにあひしりてあひかたくありけれは、その家のあたりをまかりありきけるをりに、かりのなくをききてよみてつかはしける
大伴くろぬし
※大伴くろぬし:大伴黒主。生没年不明。平安時代の歌人。六歌仙の一人。
勅撰集には入集十一首。近江国や同国志賀と縁が深かった。飛鳥時代の天智天皇の子・大友皇子の子孫との伝承もある。
思ひいでて こひしき時は はつかりの なきてわたると 人しるらめや
(恋歌四735)
とある女性と懇意となりましたが、その後、なかなか逢えなくなりました。そのような事情の中、その人のお屋敷の周りを歩いていた時、雁が鳴いておりましたので、歌を詠んで贈りました。
あなたのことを思い出して恋しくなった時には、(初雁が鳴きながら飛び去って行くかのように)この私も泣きながら歩き去っていくことを、あなたは知っているのですか。(逢ってはくれない、冷たいあなたですので、知ることもないでしょう)
六歌仙の一人ではあるが、仮名序には「そのさまいやし」と批判されている。
何故、そこまで批判されたのかは、未詳。




