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勇者の魔石を求めて  作者: 圭太朗
王国歴622年5月17日(火)
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5-2 お湯を沸かすのに成功しました


「じゃあ俺は2階にいるから、何かあったら知らせてくれ」

「はい。私は『魔法円』を仕上げます」


「仕上がっても魔素は流すなよ(笑」

「はい。師匠を待ちます」


 いくぶん素直なサノスを残して俺は2階の書斎へ向かった。


 施錠を外して書斎に入り、まずは首から下げた『エルフの魔石』を外した。


 これは身に着けた『エルフの魔石』から魔素が流れたり流れ込もうとするのを防ぐためだ。


 今の俺は、同時に複数の『魔鉱石まこうせき』を使っての魔素充填を成すことは出来ない。

 一つの『魔鉱石まこうせき』から、もう一つの空になった『魔鉱石まこうせき』への魔素充填が精一杯だ。


 間違って身に着けた『エルフの魔石』から魔素が流れたり、これに魔素が向かったら、正直に言って魔素を制御仕切れず魔素充填に失敗する可能性があるのだ。


 『エルフの魔石』を外したら、書斎机の上を少し整理する。

 ヘルヤさんの兄の形見のペンダントが入った小箱だけにし、その小箱に母から届いた『魔鉱石まこうせき』を一つ入れる。


 椅子に座り直し、右手にヘルヤさんの兄の形見のペンダントを握り、左手に母から届いた『魔鉱石まこうせき』を握る。


 続けて自分の体を魔素が通るくだのように意識して行く。


 自分の体がくだになった意識が出来たならば、左手の『魔鉱石まこうせき』に意識を移して行く。

 左手に握った『魔鉱石まこうせき』の魔素に、右手のペンダントに向かうように願って行く。


 俺の体内魔素が動き出し、左手に握った『魔鉱石まこうせき』からの『魔素』を感じたところで、再び自分の体が魔素が通る管のように意識を戻して行く。



「ふぅ~」


 左右の手に握った『魔鉱石まこうせき』と『エルフの魔石』を小箱にそっと入れ、思わず息を吐き出し椅子に座り直した。


 いつも自分が着けている『エルフの魔石』を首にかけ直し、しっかりと自分自身に回復魔法を掛けて行く。


 少し気持ちを落ち着けてから、改めて小箱からペンダントを取り出し、ペンダントトップの『エルフの魔石』を観察する。

 鮮やかで眩しいほどの銀色な『魔石光ませきこう』を放っていることに、魔素充填に成功したことを実感した。


 ヘルヤさんの兄の形見を小箱に戻し、魔素充填に使った『魔鉱石まこうせき』を取り出す。


 いつもなら睨むような『魔石光ませきこう』は影を潜め、意識を集中して魔素を見ようとするが、何も魔素を感じない。

 念のために魔素を取り出そうと念じてみるが『魔鉱石まこうせき』からは魔素を感じなかった。


 俺は書斎机の脇に置かれた装置に掛かる布を外す。


 布の下には、俺が作った『改良型魔石光スペクトラル計測器』=改良型計測器が置かれている。


 改良型計測器に魔素充填を終えた『エルフの魔石』をセットし、各色毎のメーターと水量計を見つめながら『エルフの魔石』から『魔法円』へと少しだけ魔素を流す。


 水量計に水が湧くのを確認して、各色毎のメーターに目をやれば、針が頻繁に動き出している。

 針の動きが落ち着いたところでメモ用紙を取り出して針の示す数値を書き出して行く。


 『魔石指南書』を開き『エルフの魔石』のページに書かれた数値と比較をして行き、各数値が外れていないことを確認した。


 一息入れて、数値を書き記したメモに追加で以下の様に記入した。


5月xx日

 ヘルヤ・ホルデヘルクの依頼により魔素充填を行った。


 棚から空の小箱を取り出し、メモと魔素充填に使った『魔鉱石まこうせき』を入れ、ヘルヤさんの兄の形見のペンダントも入れたら蓋を閉める。

 蓋に描いた『魔法円』に魔素を流すと『カチン』と音がして蓋が少し沈んだ。



 水量計に貯まった水を片手に階下に降りると、サノスが台所で洗い物をしていた。


「『魔法円』の修正は済んだのか?」

「はい。私としては自信があります(グッ」


 サノスが明るい表情を見せてくる。


「よし、2階を片付けたら、早速、試してみよう」

「はい。よろしくお願いします」


 水量計に貯まった水を捨てて2階に戻った俺は、水量計を改良型計測器に戻して布を被せる。


 サノスの『魔法円』を確認するために階下に戻る際に、忘れずに書斎ドアの魔法鍵に魔素を流して施錠した。


 階下の作業場に行くとサノスが机の中央に『魔法円』を置いて待ち構えていた。


「師匠、よろしくお願いします」

「うむ。じゃあまずは俺が魔素を流すからサノスは片手鍋に水を汲んできてくれるか」


「はい!」


 明るい声で返事をしたサノスが台所へ向かったので、俺は机の上の『魔法円』に軽く魔素を流した。


 指先から魔素が引っ張られる感じがし『魔法円』の『神への感謝』が反応したのを感じた。


 これなら大丈夫だろう。


 そう感じたところでサノスが片手鍋に水を入れて持ってきた。


「じゃあ、試してみようか」

「はい、お願いします」


 『魔法円』に半分ほど水の入った片手鍋が置かれたところで、魔素注入口に指を置き胸元の『エルフの魔石』に手を添える。


「水を沸かしたい」


 そう心に願うと『魔法円』の『神への感謝』が反応し淡く全体が光り出す。

 その光りが見えた途端に『エルフの魔石』から魔素注入口に置いた指に魔素が流れるのがわかる。


 『魔法円』に置かれた片手鍋から湯気が上がり始めた。

 なかなか反応がよい『魔法円』だと思っていると、片手鍋の水に泡が沸き出した。


「師匠!」

「サノス、合格だ」


「うっしゃー!」


 サノスが右手を突き上げ歓喜の声を作業場に響かせる。


 サノス、嬉しいのはわかるがうるさいぞ(笑


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