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勇者の魔石を求めて  作者: 圭太朗
王国歴622年5月16日(月)

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4-4 見たこともない程に磨かれていました


「では、ヘルヤ氏の依頼は受けるが、元になる『魔鉱石まこうせき』はフェリスから届いた物を使って良いか?」

「はい、それですがフェリス様から使って良いとの伝言と、ここに届け物を承りました」


「届け物? それか?」

「はい。ご確認ください」


 コンラッドが手にしていた小箱を俺の前に出してきた。

 俺はそれを引き寄せ、小箱の上に描かれた『魔法円』に『魔素』を流す。

 『魔法円』の中央に『フェリスからイチノスへ』の文字が浮かび上がってきた。


 カチン


 音がして小箱の蓋に掛けられた『魔法鍵』の解ける音がする。

 静かに小箱の蓋を開けると、その中身が放つ『魔石光ませきこう』に俺は目が眩んでしまった。


「全部で15個の『魔鉱石まこうせき』です。ご確認をお願いします」

「15個?!」


 俺は目を細めて小箱の中の『魔鉱石まこうせき』を数える。

 横に5列、縦に3段で並べられた『魔鉱石まこうせき』は確かに15個だ。


 一度にこれだけの数の『魔鉱石まこうせき』を見たのは始めてだった。

 その数に驚きつつも、一つ一つの形状にさらに驚かされた。


 全ての『魔鉱石まこうせき』が見事なまでに磨き上げられている上に形状が整えられているのだ。

 3段あるうち上段の5個が球形。

 中断の5個が中央に穴の開いたリング状。

 下段の5個が六角形をしており、1ヶ所の角に小さな穴が開けられている。


 今まで俺が見てきた触ってきた『魔鉱石まこうせき』は、全てが武骨な球形に近づけた物だった。

 魔法学校時代と研究所時代に、帰省の都度に触れた『魔鉱石まこうせき』は、形の大小はあったが全てがそうした形状だ。

 フェリスから届けられ2階の書斎に置いている物も、ワリサダが身に着けていた物も、ヘルヤさんが持ち込んだ物も武骨な球形に近づけた物だった。

 俺はここまで綺麗に形が整えられ、磨き上げられた物は見たことがなかった。

 もしかしたら俺の顔も写るんじゃないかと思える程に、15個の全てが磨き上げられている物だった。


「これは凄いな。ここまで磨かれたものは初めて見た」


 もう、その言葉しか俺は出せなかった。


「ウィリアム様のご尽力によるものです」

「ウィリアム叔父さんの?」


「はい。ホルデヘルク氏を介してドワーフの持つ研磨技術が供与されました。それを使って磨き上げられた物です」

「またホルデヘルク氏か⋯ これは彼女の依頼は断れないな(笑」


 そこでコンラッドが目を細めたあの顔を見せて囁いてきた。


「受けるも断るもイチノス様のご判断だとフェリス様は申しておりました」

「はいはい。断りません」


 コンラッドが顔を元に戻し、脱線しかけた話を引き戻して来る。


「私からの用件は残り二つです」

「二つ?」


「一つはイチノス様の伝令にありました件です(ニッコリ」


 おっと、コンラッドの持ってきた『魔鉱石まこうせき』に魅入られてしまい今日の本題を忘れるところだった。


「コンラッド、少し待ってくれるか? 2階に置いてあるので持ってくる」


 俺が席を立とうと椅子を動かすと、コンラッドが机の上に置かれた『魔鉱石まこうせき』の入った箱に目をやった。


「イチノス様。それであれば、こちらもお持ちください」

「ああ、ありがとう」


 俺は席を立ち上がり、コンラッドの持ってきた小箱を持って2階への階段を急ぎ足で上がって行った。


 書斎のドアの『魔法円』に魔素を流し魔法鍵を解く。

 ドアを開けて書斎に入り、書斎机にコンラッドの持ってきた『魔鉱石まこうせき』の詰まった小箱を置く。

 急ぎ、フェリス宛の小箱を手に取り書斎を出るが、忘れずにドアに描いた『魔法円』に『魔素』を流す。


ガチン


 音がして『魔法鍵』が掛かったのがわかるが、念のために2回程、取っ手を持ってドアを押し引きするが、ガタガタと音はするがドアは開かない。


 俺は、フェリス宛の小箱を手に階段を降りて、コンラッドの元に向かった。


 1階の作業場に戻ると、コンラッドがティーポットを『湯出しの魔法円』に乗せて魔素を流していた。


「コンラッド、すまんな」


 そう告げてフェリス宛の小箱を机の上に置き自席に座る。


「お気になさらず。イチノス様が魅入られれておりましたので、もう少々、お時間が掛かると思っておりました(笑」

「ハハハ、そう言うな」


「私などはフェリス様が鍵をかけられる前、その素晴らしさから、蓋をされるのを惜しんでしまいました」

「コンラッドが?(笑」


「私でも美しいものには魅入られます」

「そうか、そうかコンラッドが今着けてるのは、これと同じものか?」


 俺はそう述べて、フェリス宛の小箱の蓋を開けて中の『エルフの魔石』をコンラッドに見せた。

 コンラッドはそれに目をやりつつも、無言で俺のティーカップと自身のティーカップに、濃さが均等になるようにお茶を淹れてくる。


「どうぞ」

「ありがとう」


 コンラッドに出された緑茶やぶきたを口に含めば程よい湯加減だ。


「イチノス様、この『魔法円』は出来が良いですね。出す湯の温度が自在な感じがします」

「弟子のサノスが描いたのだが、彼女でも湯加減までは調整できないぞ?」


「それは惜しいですね。本日で2度目ですが実に湯加減を聞いてくれます」

「ハハハ、サノスに伝えておくよ」


 そう告げるとコンラッドがフェリス宛の小箱を引き寄せ、中に納められた『エルフの魔石』に目をやり、先程の俺の問いかけに答えてきた。


「イチノス様、私のはこれと同じ大きさですね」

「魔素切れはしてないか? オークの魔石1個分なら直ぐに充填できるぞ?」


「ありがとうございます。切れた折りに願いに来ますのでよろしくお願いします」

「わかった。じゃあ、これに鍵をかけるぞ」


 俺はフェリス宛の小箱を自分の方に引き寄せ蓋をする。

 続けて蓋に描かれた『魔法円』に魔素を流すと『カチン』と音がして蓋が少し沈んだ。


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