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勇者の魔石を求めて  作者: 圭太朗
王国歴622年5月15日(日)

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3-17 予想外の繋がり


 最初にベンジャミン・ストークス=冒険者ギルドのギルドマスター=ギルマスは、自身の素性を話をしてくれた。


 ランドルの正妻であるダイアナの従姉いとこが、ギルマスの母であると聞かされた時にはかなり驚いた。

 直接の血縁ではないが、ギルマスと遠戚であることに驚かされた。


 続けて前にコンラッドから聞かされていたように、ギルマスがストークス子爵家の三男だということが確認できた。


「なら、ギルマスは将来は子爵を継がれるのですか?」

「いやいや、止めてくれよ。兄が二人もいて甥っ子が4人もいるんだ。私の出番はないよ」


「それでも継承権は⋯」

「それそれ、困ったことに父と二人の兄から放棄が認めら無いんだよ。イチノス殿やウィリアム様が潔くて本当に羨ましいよ」


「はぁ、そうなんですか⋯」


 俺の生まれたケユール侯爵家のような継承者問題ではなく、別の意味での継承者問題をギルマスが抱えていそうな気がした。


「まあ、子爵継承は妻や子供が嫌がるから、私の出番は永遠に無いね(笑」


 ギルマスの口調に家族を愛する想いが垣間見えてくる。

 独身を愛する俺としては理解できない想いだ。


 続いて語られたのは、ヘルヤさんの兄とギルマスの冒険者時代の話だった。

 ギルマスが若い頃、共同パーティーで古代遺跡の探索に挑んだことがあるそうだ。

 冒険者は気の合う仲間や、互いに利点のある仲間で集団行動する傾向がある。

 そうした冒険者の集団をパーティーと呼ぶのだが、共同パーティーとは2つや3つのパーティーが組んで10名弱の集団で行動することを言う。

 古代遺跡に挑む際には、拠点を見張るパーティー、探索するパーティーと立場を調整しながら探索を行うという。

 ギルマスがヘルヤさんの兄と知り合ったのは、そんな共同パーティーでの出会いだそうだ。


「彼女の実家は高名な鍛冶屋で『魔素』を使った強化鎧を纏っていたのが強烈な印象だったんだ」

「『魔素』を使った『強化鎧』ですか?」


「ああ、イチノス殿は『魔剣』はわかるだろ? あれの鎧版だよ。鎧に『魔素』を流すことで強化魔法をかけるんだ」


 その話はフェリスランドルから聞いたことがある。

 俺は防具である鎧に一切の興味はなかったが、強化魔法には興味があったので覚えていたのだ。


「ギルマスとヘルヤさんの兄との出会いはわかりました。ランドルとの関係は⋯」

「亡くなったランドル様は魔王討伐戦の際に、その強化鎧をホルデヘルク氏から贈られているんだ」


 そこまで聞いて俺は自分の無知を思い知ると共に、かなり恥ずかしい感情に襲われた。

 俺は自分が鎧に興味が無いからと、ランドルにドワーフからそんな物が贈られているなんて一切知らなかった。

 ましてやそれが、あのヘルヤさんの鍛冶屋ホルデヘルクから贈られているだなんて思いもよらない。


 そうしたランドルとヘルヤさんの鍛冶屋との繋がりを知っていれば、もっとヘルヤさんへの対応を考えれたかも知れない。

 いや、これは言い訳でしかない。


「イチノス殿にはすまないが、魔王討伐戦でランドル様が亡くなられたのも、ホルデヘルク氏が亡くなられたのも、私にとってはとても悔やまれるのだ」

「ギルマス、言わんとしていることは伝わりました。ヘルヤ・ホルデヘルクさんとの仲介を宜しくお願いします」


 俺はギルマスにヘルヤさんへの仲介を頼みつつ頭を下げた。


「イチノス殿、ありがとう。これで私もホルデヘルク氏へ僅だが借りが返せる」


 ギルマスの口にする借りとは、ギルマスの冒険者時代のホルデヘルク氏との貸し借りだろう。

 俺はその事には何も触れない。

 むしろランドルに強化鎧を贈ってくれたホルデヘルク氏の気持ちを大切にしたいのだ。


「ギルマス、ついてはコンラッド宛に伝令を出したいのですが?」

「コンラッド殿へ伝令? あぁ伝令依頼ですね」


 そう言うとギルマスが応接脇の机の引き出しから手紙の伝令で使われる冒険者ギルドの印の入った用紙を渡してきた。


「じゃあ、私もヘルヤさんへ伝令を⋯」

「いや、ギルマス。ちょっと待ってください。コンラッドからの返答を得てからにして貰えますか?」


「わかりました。イチノス殿にも何らかの確認なり用意が必要ですよね。私が早計でした(笑」

「ギルマスからヘルヤさんに伝えるなら、私に準備が必要な事を添えて貰えれば⋯」


「おっしゃるとおりです。イチノス殿が私の紹介を受けたことを伝え、ヘルヤさんの用件にはイチノス殿で準備が必要と伝えます。これなら私もヘルヤさんの用件に、これ以上踏み込む必要もないですね」


 ギルマスの言葉に少しだけ気持ちが揺らいだ。

 ギルマスはヘルヤさんの願いが、兄の形見が『魔鉱石まこうせき』であることを知っているのだろうか?

 それともそこまで踏み込まずに『兄の形見の魔石』程度で止まっているのだろうか?


 どうもギルマス=ベンジャミン・ストークスの人柄が、読み切れない気がする。



 その後、ギルマスと共に手紙を書き上げ、伝令依頼として若い女性職員に手続をして貰った。


 俺がコンラッドへ書いた手紙は、こんな感じだ。


コンラッドへ

届いた『魔石』の一つをホルデヘルク氏の願いに使いたい。

問題が無いかを確認して欲しい。

イチノス


 空の『魔鉱石まこうせき』への『魔素』の充填には、同じ様に『魔鉱石まこうせき』が必要になる。

 魔物から得られる『魔石』では、『魔素』の量が十分ではないからだ。


 これで冒険者ギルドを訪れた用件も済んだので、いざ応接を立ち去ろうとして東国あずまこくからの二人の件を思い出した。

 それとなくギルマスに問いかけてみる。


「そう言えば東国あずまこくからのお客様の件で⋯」

「あぁ、昼前の選考で一緒だったんだが⋯ 結局、決まらずにギルドで一旦、預かったんだ。お二人共にお疲れで宿に戻っていただいたので、イチノス殿の店に行けなくなったんだ。商売の邪魔をして申し訳ない」


 思い出した。

 待遇の良さそうな大規模な選考があると、昨晩、大衆食堂で受付の婆さんから聞かされた。

 その選考に、東国あずまこくから来た二人が関わっていたんだ。


「実は、その選考で会議室で長い会議が続いているんだよ」


 なんとまあ、会議室での会議の内容までギルマスが口にして来た。


登場人物

 ギルマス(ベンジャミン・ストークス)

舞台

 冒険者ギルド

  2階

   応接室

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