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勇者の魔石を求めて  作者: 圭太朗
王国歴622年5月15日(日)
33/459

3-3 3つの『魔鉱石(まこうせき)』


 俺はその後、サノスが考える今日の予定を聞き出した。


 昼までは店番をしながら『魔法円』の模写を続けて、キリが良いところで昼食を買いに行く予定だという。

 それならば、俺から特に課題を出す必要も無さそうだと判断した。


「じゃあ、昼まではそれで頼む。俺は集中したいことがあるので、2階の書斎にいるから」

「わかりましたぁ~」


 そう言ってサノスは席を立つと棚から箱を取り出し机の上に置いた。

 箱の蓋を開けると作業中の『魔法円』が見えたので、直ぐに作業に入るのだろう。

 俺はハーブティーを飲み干し、作業場を離れて2階へと上がって行く。


 書斎のドアに手を掛け、『魔法鍵まほうかぎ』にそっと手を添えて『魔素』を流す。


ガチン


 と音がして『魔法鍵まほうかぎ』が解けたのがわかった。


 書斎に入りドアを閉め、書斎机の椅子に座り小箱を手にする。

 青年騎手アイザックとワイアットが届けてくれた、フェリスからの小箱を改めて机の中央に置き直す。


 小箱の蓋を開けて中身を確認すると、ギラリギラリと俺を睨み付ける『魔石光ませきこう』を放つ『それ』が3つ見えた。


 『それ』=『魔鉱石まこうせき』だ。


 ギラリギラリと俺を睨み付ける『魔鉱石まこうせき』の脇には二つ折にしたメモ用紙のような物が置かれていた。

 二つ折にされたそれを手に取る。

 そこには、見慣れたフェリスの字で文章が書かれていた。


ーーー

愛するイチノスへ


 以前に伝えたとおりに『魔鉱石まこうせき』を送ります。

 1つは『エルフの魔石』にしてください。

 『エルフの魔石』にすることが出来たならば、早目にコンラッド宛に届けてください。

 1つはマイクに贈る『勇者の魔石』を作るのに使ってください。

 残る1つは、報酬としてお渡しします。


  あなたの母 フェリスより

ーーー


 二つ折の紙はフェリスからの手紙だった。


 『エルフの魔石』の件は、以前にフェリスから届いた手紙にも書かれていた。


 異母姉、ランドルとその正妻ダイアナとの間に生まれた異母姉から、フェリスが望まれていたものだ。


 俺には異母姉が二人いる。

 フェリスが側室としてランドルに嫁ぐ以前に、正妻ダイアナとの間には二人の姉が生まれている。


 長女のイバンカは公爵家の子息に嫁いで男の子を産み、嫁としての役目を果たしたと聞く。

 次女のメラニアも別の公爵家の子息に嫁いだが、未だ子宝には恵まれていない。


 フェリスは子宝に恵まれていない次女メラニアの姉から『エルフの魔石』を頼まれたらしく、以前に俺に打診してきたのだ。


 『勇者の魔石』は一昨日にフェリスが来た際に出た話で、異母弟のマイクへの婚約祝い用だな。


 そして残る一つが俺への報酬か⋯


 待て待て。

 確かフェリスは『勇者の魔石』を2つと言っていた。

 1つはマイクの婚約祝いで贈り、もう1つはウィリアム叔父さんと結ばれる自分用だと言っていた。


これって⋯


1.次女な異母姉メラニアへは『エルフの魔石』

2.異母弟マイクの婚約祝いには『勇者の魔石』

3.フェリスとウィリアム叔父さんの婚約祝いで『勇者の魔石』


 いや、待てよ。


 本当にフェリスへの『勇者の魔石』なのか?

 フェリスが欲しがったというが、その実は俺からウィリアム叔父さんへの婚約祝いで贈れというのが趣旨か?


 はぁ~


 いずれにせよ俺への報酬なんて、何も残らないじゃないか!

 これって俺にタダ働きしろってことか?


 俺は改めてフェリスからの手紙を読み直した。

 そして『魔鉱石まこうせき』の数を数えて、3個しかないのを再確認して、何故かどっと疲れを感じてしまった。



 少し『魔鉱石まこうせき』について語ろう。

 まあ、俺の独り言⋯ 俺の頭の中の言葉と考えてくれ。


 『魔鉱石まこうせき』とは、魔物から得られる一般的な『魔石』とは少し違う。


 一般的な『魔石』は魔物の体内から得られるものだが、『魔鉱石まこうせき』はエルフの秘伝を駆使して得られるものだ。


 魔物から得られる『魔石』は、その魔物の名を付けて呼ばれ、例えばサノスが身に着けている『魔石』は、オークと呼ばれる豚に似た魔物から得られた物であることから『オークの魔石』と呼ばれる。


 『魔石』は『魔素』が結晶化したものといわれている。


 魔物はその体内で『魔素』を吸着しやすい性質の素材を生成するようで、その素材に魔物体内の『魔素』が蓄積されて『魔石』が出来上がるらしい。

 魔物は『魔石』に蓄積した『魔素』を使って獣よりも強靱な性質を獲得している。

 魔物の中には『魔石』に蓄えられた『魔素』を使い『魔力』により『魔法』を発動する個体も存在する。

 こうした個体は強靭な性質に加えて狂暴な性質も備えることが多く、そうした魔物は度々、人間を襲うことがある。


 だが逆に人間も、そうした魔物を討伐とうばつとか狩りと称して襲っている。

 時には数十人の冒険者や兵団でそうした魔物を倒すのだ。


 討伐されたり狩られた魔物の皮や牙は、魔物が持っていた『魔法』を再現する誘導体となる傾向が高く、武器や防具の素材となる。

 そして魔物から得られる『魔石』は人間も使えるので、オークから得られた物は元の魔物の名が付されて『オークの魔石』と称して使用されるのだ。

 ヴァスコやアベル、サノスの実家などでは、家庭用の『魔法円』を使う際に『魔素』の供給体として『オークの魔石』が使われている。


 また昨日来店し、今日も来店予定の東国あずまこくから来た二人の男。

 彼等が壊れたと言っていた『水出しの魔道具』でも『魔素』の供給体として魔物から得られた『魔石』が使われている。

 当然ながら俺の店で扱っている携帯型の『水出しの魔法円』でも『魔素』の供給体として『魔石』は使用可能だ。


 この魔物から得られる『魔石』は使い捨てではなく、俺のような『魔素』を扱える魔道師や魔法使いであれば、『魔素』を充填することで復活もする。

 この『魔素』の充填は俺のような魔道師の生業の1つでもある。


 少々、話が脱線してきたようだ。


 魔物から得られる『魔石』と『魔鉱石まこうせき』の違いに話を戻そう。


登場人物

 サノス

舞台

 イチノスの店舗兼自宅

  1階

   作業場

  2階

   書斎

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