表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の魔石を求めて  作者: 圭太朗
王国歴622年5月30日(月)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/507

18-15 使用方法と注意点


「じゃあ、使用方法と注意点は理解してくれましたね?」


 俺は、二人の女性街兵士に製氷の魔法円を手渡し、扱い方の説明と注意点を伝え終えた。


「水出しや湯沸かしと同じ感じなんですね」

「そうね、同じ感じなんだね」


 彼女たちは、水出しや湯沸かしの魔法円と同じ感覚だと理解してくれたようだ。


 この二人の女性街兵士は、水出しや湯沸かしの魔法円を若い街兵士を財布にして購入している。

 水出しや湯沸かしを購入する際には、サノスかロザンナから使用方法や注意事項も説明されているだろう。


 しかし、俺からは危険性として伝えておく必要がある。


「くれぐれも使用する際には、この内円から外れないように、カップを置いてください。また、この内円に体の一部を入れたり、内円を体に接した状態で使用するのは絶対にやめてくださいね」


「「うんうん」」


「一つ間違うと命に関わります。これは水出しでも湯沸かしでも同じです」


「その辺りは、サノスさんからも言われました(笑」

「言われたね~」


 彼女たちは、しっかりとサノスから危険性についても説明されているようだ。


「後は必ず魔石を手にして魔素を流してくださいね」


「「うんうん」」


 俺から魔力切れについても付け足すように説明をして行く。

 この付近は騎士学校で学んでいることだと思うが、念のためだ。


「以上で私からの説明は終わりです」


「「はい! ありがとうございます!」」


 無事に二人の女性街兵士へ『製氷の魔法円』の使い方と注意点の説明を終えることができた。


 二人とも実に素敵な笑顔で俺の新作の魔法円を受け取ってくれた。

 こうした笑顔を見ることができるのは贈った側としても嬉しいものだ。


「これで氷が作れれば、この夏は助かるわね」


「そうだね~ けど、班長に報告する?」


ん?


 思わぬ方向の話を持ち出されたぞ。


 二人が口にする班長とは、俺が襲撃を受けた際に事情聴取を申し出てきた班長のことだろう。


 そうした状況を俺は想定していなかった。


 確かに職務上で商人たちを連行してくれた二人だから、そのお礼を贈られたら、上司である班長には報告する必要があるよな?


 あの事情聴取をしてきた班長に報告されると、後で色々とお礼だ何だと絡んで来そうだ。


う~ん


 正直に言って、そうしたことで時間を取られるのは煩わしい。


 そう思っていると、女性街兵士二人の視線が俺の後ろに向かった。


「こんにちは~」

「お疲れ様です~」


「サノスさん、こんにちは」

「こんにちは、ロザンナさん」


 振り返れば、サノスとロザンナが俺の後ろで女性街兵士に挨拶をしている。

 二人とも店を閉めて追い付いたようだ。


「イチノスさん、店を閉めましたよ」

「師匠、済みました?」


「あぁ、ありがとうな。受け取ってもらったところだよ」


 サノスとロザンナへ返事をしたところで、俺はある案を思い付いた。


 俺は女性街兵士の二人へ向き直り、思い付いた案を告げていく。


「もしも班長に伝え難かったら、私がお二人に個人的に貸し出したことにでもしてください」


「「えっ?!」」


「実はこの魔法円は新作なんです。使い勝手を試すために、サノスとロザンナにも同じ物を貸し出しているんです」


「「はぁ??」」


 二人の女性街兵士は、俺の言葉に理解が追い付かないようだ。


 こうなると、二人の女性街兵士にはハッキリと伝えた方が良さそうだ。


「正直に言いますと、班長に挨拶に来られるのは微妙でして⋯」


「「⋯⋯」」


「まぁ、お二人にお任せしますので(笑」


「ククク わかりますぅ~(笑」

「イチノスさんも ですかぁ~(笑」


「では、ここで失礼します。何かあれば、サノスかロザンナへ伝えてください」


 二人から理解が得られたので、締めの言葉を伝えて場を去ろうとすると、二人が揃って王国式の敬礼を出してきた。


「イチノスさん、ありがとうございます!」


「イチノスさん、いってらっしゃい!」


 それに応えて、俺も敬礼をすると、俺の両脇でサノスとロザンナが俺を真似て王国式の敬礼を返していた。



 サノスとロザンナ、そして俺の3人で、女性街兵士二人に見送られながら雑貨屋へと向かう。


 いつもの冒険者ギルドへ向かう通りへ出ると、未だ我が物顔のテントが歩道に張り出されていた。


 サノスとロザンナは二人で何かを話ながら、俺の後ろを歩いている。


(やっぱり、ジョセフとロナルドはロザンナに会いたくて⋯)


(みたいですけど、私よりもアグネスが目当てだと⋯)


 どうやらジョセフとロナルド絡みの話のようだ(笑


 古代遺跡の調査隊へ同行した際に、アルフレッドとブライアンがそんな話をしていたな。


 まあ、見習い冒険者で未成年同士の淡い想いは、俺が口出しする話では無いな。


 そうしたことを考えながら歩いている俺は、あることに気が付いた。


 以前にロザンナがローズマリー先生へ魔石を届ける際に、冒険者ギルドとは反対側へ向かったよな?


「ロザンナ、家へ帰るのと反対向きだと思うが大丈夫か?」


「えぇ、まだ明るいから大丈夫です。それに暗くなりそうなら、街兵士さんに送ってもらえと祖父に言われてます」


 ロザンナの返事から、イルデパンは多大に孫娘への配慮をしているのを感じる。


 だが、当のロザンナの言い切る様子には、その思いを汲み取りつつも少しだけ含みを感じる。

 その含みは、俺が触れ無い方が良さそうな含みに思えた。


「師匠、私は心配してくれないんですか?(笑」


 ロザンナとの会話に、サノスが不満そうな言葉で冗談混じりに割り込んできた。


 そう言えばサノスの家=ワイアットとオリビアさんの家を、俺は詳しくは知らないな。


 アルフレッドやブライアンの話からすると、大衆食堂に近い気がするが⋯


「サノス、心配した方が良いか?(笑」


「少しは(笑」


「ククク」「フフフ」「⋯⋯」


 そんな会話を3人でしていると、雑貨屋が見えてきた。



「イチノスさん、いらっしゃ~い」


 雑貨屋の女将さんが明るい声で出迎えてくれた。


「あら、今日はサノスさんやロザンナさんも一緒なの?」


「「女将さん、こんにちは」」


「こんにちは。それで今日は何が欲しいのかな?」


「桶が欲しいんです。このぐらいの大きさの桶ってありますか?」


 さっそく身振りを交えて、ロザンナが桶の注文を始めると、女将さんが俺の顔を見てきた。

 これは支払いが誰かを気にしている顔だな。


「女将さん、ロザンナが欲しいのは店で使う桶なんだ。今日注文したら、明日にでも配達してくれるかな?」


「いいわよ。お店で使うなら、お支払いはイチノスさんよね?」


 そう言った女将さんの顔に喜びが見て取れる。


「それでお願いできますか?」


 そんな会話をしていると、ロザンナが店内の桶が置いてある場所を見つけたらしく、自ら移動して桶を手に取り始めた。


ん?


 サノスはどこへ行ったんだ?


 店内を見回すと、小さめの布袋が下げられている棚でサノスが何かを手にしている。


 あいつは何を探してるんだ?


 すると、俺のサノスを追う視線に気付いたのか、女将さんがサノスの行動を説明する言葉を口にしてきた。


「サノスさんは布袋ね。イチノスさん、サノスさんのはどうするの?」


「いや、あれは店のじゃなくて、自分のを探してる気がするんだが⋯」


「フフフ、イチノスさん当たりよ。この間から、サノスさんは何かを入れる袋を欲しがってるの。どうやら父の日の贈り物みたい」


あぁ⋯ なるほどね⋯


 父の日でワイアットに贈る何かを考えているんだな。

 そうなると、サノスに付き合っていると時間が取られそうな気がしてきたぞ。


 改めて、ロザンナへ目をやれば、二つの桶を交互に手にして、じっくりと見ている。


 どうやら、ロザンナも時間が掛かりそうな感じだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ