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勇者の魔石を求めて  作者: 圭太朗
王国歴622年5月29日(日)

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17-8 商工会ギルドの改革


 結果的に商工会ギルドでは、イルデパンの立ち会いの元で、俺の意向を一方的にアキナヒへ話すに終わった。


 商工会ギルドのギルドマスターであるアキナヒと、何らかの話し合いが出きるかと思っていたが、やはり突然の訪問ではそれも無理だったのだろう。


 応接室を後にして、階下へ降りる階段へ向かいながら、商工会ギルドの2階の造りを眺める。


 やはり冒険者ギルドに似ているな(笑


 建物の造りが似ていても、その中の組織の役割は違う。

 逆に考えれば、役割に会わせて組織が作られているのだろうとは思う。


 それにしても、あのアキナヒは何故にあんな風に頭を下げ続けたのだろう。


 そうしたことを思いながら、階段脇の踊り場へ目が行った。

 そこも冒険者ギルドと似た造りで扉が設けられている。


 ここも冒険者ギルドと同じ様に、2階から外に出れる階段が有るのだろうか?


 ふと、そんな興味が湧いてしまった。


 試しに階段脇の踊り場に設けられた扉を押し開いてみた。


 すると外階段の踊り場があり、そこへ出てみると階下に馬車停りが見えた。


 どうやらここも、冒険者ギルドと同じ造りになっているようだ。


 この外階段の踊り場には、実に心地好い風が吹いてくる。


 夏前のこの時期は空気も乾いた感じで過ごしやすい。


 こうした心地好い風が得られる時期は、心地好い事をして過ごしたいな。


 商人達の動向などを気にするよりは、自分のやりたいことをして過ごしたい気持ちになる。


 また、そうしたことが出来そうな気持ちになる、そんな心地好い風だ。


 清々しい風に吹かれながら、コンラッドが俺にしてくれた商工会ギルドの話を思い出す。


 コンラッドから聞いた話では、今の形の商工会ギルドに生まれ変わったのは、ウィリアム叔父さんの成果だと聞いたことはある。

 そして改革を成すためにウィリアム叔父さんは、アキナヒをギルドマスターに据えたとも聞いている。


 以前の商工会ギルドは、大きな商会が幅を利かせ、私利私欲にまみれた圧力を商工会ギルドにかけていたと聞く。


 大きな商会は領主や国へ納める税金まで誤魔化すための圧力を、商工会ギルドへ掛けるほど腐敗し始めていたらしい。


 そんな商工会ギルドも今は改革されて生まれ変わったと聞く。


 その改革は、ウィリアム叔父さんがアキナヒを商工会ギルドのギルドマスターへ登用したこと、そして南町に造られた風呂屋を利用したことだ。


 ウィリアム叔父さんの領主としての力もあるだろうが、商工会ギルドの改革を任されたアキナヒこそが、改革の功労者ではなかろうか?


 そこまでの手腕を発揮したアキナヒが、一部の商人の行動ごときで俺へ頭を下げ続けたというのが釈然としない。


 改革が成されて生まれ変わった商工会ギルドだが、そこに属する会員の商家や商人達の持つ利益追求の考えまで、消し去ることは出来ない。


 何故なら、利益追求は商人の商人足る基本理念の一つだからだ。


 利益追求の意識が肥大して、暴走して、庶民の生活や商工会ギルドへ圧力を掛けるような、そんな迷惑な私利私欲に発展しなければ良いのだ。


 それでも俺からすると、今回の件で感じるのは、何処か完全には改革が達成されていない感じがする。


 理想とする商工会ギルドの姿にとどいていないこと、そうした組織へ変えきれていないことが、アキナヒのような対応を生んでいる気もする。


 どうすれば理想的な商工会ギルドが作れるか?


う~ん


 俺が考えることじゃないな(笑

 さて、冒険者ギルドへ行こう。


 そう思って振り返ると、イルデパンが外階段の踊り場に立ってこちらを見ていた。


「ここに居たんですね」


 イルデパンが笑顔で俺に声を掛けてくる。


「いやいや、イルデパンさんこそ、どうしたんですか?」


 あの後も、イルデパンがアキナヒと話すと言っていたのを思い出す。


「アキナヒさんとの話は終わったんですか?」


「ご心配なく(笑」


 どうやらイルデパンなりに終わったようだ。

 イルデパンとアキナヒの私的な話し合いだ。

 俺が口を挟むことじゃ無いなと思うと、イルデパンが妙なことを言い出した。


「イチノスさんは、アキナヒに何か思うことがあるのですか?」


ん?


 イルデパンは何が言いたいんだ?


「いや、特にはありませんよ。あの場で話たとおりに商人達が店へ訪れるのを制限したいだけです」


「ククク 制限ですか?」


 イルデパンの問い掛けの意図が読み取れない。

 それでもここは俺の意向は重ねて示すべきだろう。


「来月からは『相談役』の任があります。意味不明な質問を持った商人達が押し寄せるのは避けたいのです」


「それはイチノスさん、ご自身の為ですか?」


はい?


 イルデパンはそこを問いたいのか?


「どうでしょう? ロザンナやサノスの為かもしれませんよ(笑」


 冗談混じりに返すと、イルデパンが息をためて呟くように口を開いた。


「イチノスさんは、商人の方々は考慮しないのですか?」


 イルデパンは何が言いたいんだ?

 商人の方々を考慮?


「商人の方々を考慮ですか?」


「えぇ、彼ら商人達もリアルデイルの街に必要な住人です」


 もしかして、イルデパンは街兵士の副長としての意見、おおやけな立場からの意見を述べているのか?


「イルデパンさんのおおやけの立場からすればそうですね」


「私だけではないですね。イチノスさんも来月からはおおやけの立場がつきまといますよ」


「ククク そうですね」


 なかなか、良いところを突いてくるな。

 イルデパンは、俺に『相談役』というおおやけな立場での意見を求めたいのか?


「イチノスさん、もう少し私の話を聞いてもらえますか?」


「えぇ、どうぞ」


 イルデパンが話を続けようとする。

 その続く話から、イルデパンが俺へ伝えたいことを理解できれば良いが⋯


「この街の商人達の一部には、昔の商工会ギルドの悪習から抜け出し切れない者もいるのです」


 イルデパンが口にする『悪習』は、改革以前の商工会ギルドの事を言ってるのだろう。


 商人達が持っている利益追求が私利私欲へと進んで暴走し、庶民や商工会ギルドへ圧力を掛けてしまた過去の事を言ってるのだろう。


「そうした悪習から抜けきれずに足掻いている者もいるのです」


 イルデパンの『足掻いている者』とは、俺の店を訪問したり大衆食堂へ張り込む商人達の事だろう。


 利益追求に動かされて、私利私欲が暴走気味だが、具体的に庶民へ迷惑までは掛けていないと言えるからな。


「けれども、大多数の商人達は悪習から抜けて、より健全な道を歩んでいます」


 まあ、この街の全ての商人に問題があるとは俺も思っていないが⋯


「アキナヒは商工会ギルドのギルドマスターとして、未だに悪習から抜け切れない商人がいることをなげいているのです」


 アキナヒがなげいている?


 ますます、イルデパンが俺に何を伝えたいかが、わからなくなってきた。


商工会ギルドの改革は


〉1-12 商工会ギルドと風呂屋


 を参照ください。


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