独白 side光莉
あなたはいつだってキラキラしていて、私には眩しすぎるくらいだった。
あなたの艶のある声が、あなたのちょっとした仕草が、あなたが微笑む顔が、そしてあなたが私に触れる手が。
あなたの全てが私の心を高鳴らせた。
モデルかと思うようなスッキリ整った顔で、背も高くて、あなたの周りにはいつも華やかな人たちがいて。最初は絶対近寄ってはいけない人だと思ってた。
でも、一緒に仕事をするようになって、誰にでも親切で分け隔てなく、敬意を持って接することができる人だと知った。
パーフェクトなのかと思いきや、意外にも朝が弱くて、コピー機の取り扱いが苦手なんて可愛い一面もあって。
そんな所見せられちゃって、「堺さんがいてくれてホント助かる」なんて恥ずかしそうに言われたら、こんな私でも意識してしまうよ。
あなたの意外な一面を知って、少しずつあなたのプライベートを知って、私の週末の過ごし方を話すようになった頃、あなたは「好きだ」と言ってくれた。
揶揄われてるのかという考えが頭の片隅をよぎったけれど、あなたの表情を見たら、すぐ本気なんだって分かったよ。
ファストファッションのような、良くも悪くもなく、どこかで見たような、でも特に印象に残らない私なんかを、あなたは大切だと言ってくれた。
あなたが大事にしてくれるから、私は生まれて初めて、自分を好きになることができた。
こんな私でも、あなたに必要とされているって、そんな烏滸がましい気持ちすら抱いていた。
それが私の独りよがりだっていうことに、気づくのが遅くなってごめんなさい。あなたはそんな様子、ちっとも見せてくれなかったから。
いつも私を宝物のように大切にしてくれていたから、私、それに甘えてしまっていたの。
最初に違和感を感じた時に、ちゃんと話せばよかった。もっと早くあなたの本当に気づいてあげられればよかった。そしたらすぐにあなたを解放してあげられたのに。
ごめんなさい、昴さん。
あなたのことを想うあまり、あなたのことが見えなくなっていたの。
あなたの元を離れて数ヶ月経って、ようやく少しずつあなたとの日々を思い出すことができてるよ。
辛くて…辛くて…、覚悟はしていたけれど、そんなもの何の役にも立たないくらい辛くて。
もちろん今だって心臓がギュッてなるけど、でもあなたとの思い出を、これ以上無理に仕舞い込んでおくのも、もう限界なの。
これからは、あなたとの記憶と生きていく。
あなたはいつだって、私は私のままでいいって言ってくれていた。それならあなたを好きなままでいていいよね?
苦しくても、あなたとの大切な日々を忘れるフリなんてできないから。
背筋を伸ばして、顔を上げて。
あなたのことを想いながら、前に進んで行かなくちゃ。