5.呼ばれた理由
その部屋は壁際に棚が所狭しと置かれそ棚の中には本やファイルが乱雑に詰め込まれていた。窓には分厚いカーテンがついており朝の陽射しを完全に防いでいるため、室内は薄暗かった。
室内の真ん中には30人は座れそうな重厚で大きな木目の美しいラウンドテーブルに座り心地の良さそうな椅子が今は20脚程並べられており6人の男女が結瑠の向かい側に座っていた。
「ただいま。連れてきたよ。」
「ああ、お帰り。ご苦労だったな、ツー。」
「あ、今はワン状態か。なら・・・フフ、これ位どうってことないわよ。」
嫣然に微笑む茉莉奈に軽くうなずくと、男は肘を机に乗せて両手を組んで口の前に持ってきている姿勢のまま結瑠に顔を向けた。雰囲気から機嫌が良さそうだと分かる。あのポーズは前からやりたかったと聞いていた。
「よく来たな、結瑠。寮の案内の前にお前に言っておくことがある。」
「いきなり学校に来いとか何事かと思いましたよ。ぶっちゃけ来る意味もありませんでしたし。何故俺をここに?」
「うむ。お前は俺たちがしごき上げた自慢の弟子だ。が、お前には足りないものがある。それをお前自身が自覚して伸ばせるようにするにはこの学園でとあることをさせるのがいいと思ってな。全会一致で決まった。」
「はぁ・・・。それで俺にさせることってのは?」
「うむ。この学園は様々な学科があるが大別して2種類に分けられる。超能力を重視するかしないかだ。しなければ学力でクラス分けされるが、重視する場合は学力よりも超能力の強さによってクラスが変わる。Sクラスが最高でABCDEと落ちていき最低がFクラスだ。ここまではいいか?」
パンフの記載によると、クラスは一般学科と超能力科で同じだけのクラスがあり、Sクラスは20人、A~Eクラスは30人、そしてFクラス5人だ。さらにクラスの設備でも差をつけEクラスまでの危機感と学習意欲を振るい立たせているらしい。
「大丈夫です。俺の力量なら超能力科のSクラスでしょうか?」
「うむ。お前ならSクラスでも余裕だろう。」
周りの6人もうんうん首を振っている。軽く安堵した結瑠に目の前の男は追撃を入れる。
「だからこそ、それではいかんと思ってな。お前には命令を下す。超能力科で1学期と3学期にそれぞれクラスの代表によるクラス対抗トーナメントを開催している。お前は6人目のFクラス生として彼らを育て上げどっちかでSクラスに勝利しろ。どっちかで勝てなかったらお前は退学だ。」
男の言葉に頭を抱える結瑠だった。