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86 暴露


「治療は大方、終わりました。痛みが引くのはかなり先でしょうが、兎に角、命の危機は免れたかと」


「アデルはアルバンの傍に居てやりたいとのことです」


 オルムとソフィアはクロードと私にそう伝えた。アルバンのことを伝えると、彼らは直ぐに戻ってきてくれたのだ。


「......貴方がたのご友人をあの様な目に遭わせたのは私です。この戦いが終われば、如何様にしてでも償います」


 私がそう言って頭を下げると、オルムは首を振った。


「アデルも気にしないでくれと言ってましたから、気に病まないで下さい。それより他にアルバンと同じくらいの重傷を負った方は?」


「交戦に当たっている方の怪我は全て報告して頂いていますが、今のところ、重傷と言える重傷の報告はありません。昨日まで仲間だった相手に攻撃することを両者共に躊躇っているのでしょう。......尤も、あの参の勇者は別ですが」


「アデル曰く『参の勇者でも、そう簡単に治癒することの出来ない一撃を顔面に叩き込んだ。直ぐには復帰出来ないだろう』とのことなので、暫くは安心だと思います」


 あの参相手に即治療することの出来ないダメージを与えるとは、流石、弐の勇者である。


「そうですか。本当に、ありがとうございます。お二人には引き続き各地の診療所を回って治療を施して頂けると幸いです」


「分かりました」


 そう返事をするオルムにコクリと頷くソフィア。彼らが部屋から出て行こうとした時


「ちょ、待って下さい! 二人とも! 何で妹様もスルーしてるんですか!? この二人のことを説明して下さい!」


クロードがそんな風に叫んだ。

 彼が指差す先には手足に魔法の枷を付けられ、口も魔法で物理的に封じられ、ゴロリと転がされているフランチェスカとルドルフの姿があった。


「いや、面倒臭そうだしスルーで良いじゃないですか」


 私はクロードから顔を逸らしながらそう答える。どう考えてもこの二人がこんなことをされている理由なんてロクなものじゃない。


「面倒臭いとかそういう話じゃなくて! ボク、ビックリしましたよ! 何で仲間割れしてるんですか!? この二人、アデル殿が協力を要請した方ですよね!?」


「それらは元より仲間ではありません」


「それら扱いしてあげないで下さいよ......」


「クロード、あまり此方が干渉して良い案件ではありません。スルーしましょう」


 クロードは眉を顰め、首を傾げる。


「......妹様は何かを知っているのですか?」


「まあ、貴方よりは。あの子が色々と教えてくれるので」


 そう言って私はポケットからユリウスとやり取りしていた物とはまた違う、水晶を取り出して見せた。


「待って下さい」


 落ち着いた声で、しかし、焦った様子でソフィアが私にそう言ってきた。


「あの子、というのは『黒パーカー』のことで宜しいのですか?」


「ええ。驚きました? クロードよりも私の方が彼女とは付き合いも長ければ仲も良い。連絡手段くらい持ってるんです」


 明らかにオルムとソフィアの表情が変わったのが分かった。驚愕し、焦りつつも私を敵か味方か見定めているような、そんな目をしている。


「つまり、妹様は黒パーカーさんの正体を知っていると?」


「勿論ですよ。あ、ついでにソフィアさん達の正体も、ね」


 ソフィアの目に一瞬、殺意が宿った。あ、駄目だこれ。私、口封じで殺されるかも。


「ソフィア殿達の正体、ですか......?」


「ええ。まあ、別に私達にとっては直接的に関係の無いことですし、知らなくても良いことですよ」


 私が笑いながらクロードにそう言ってソフィアの出方を見ていると、突如


『どこまで知っている?』


という言葉が頭に響いた。

 どうやらテレパシーの様なものを魔法で送ってきたらしい。生きた心地がしない。死、そのものに心臓を掴まれたような、そんな感覚に陥った。


『深くは私も存じ上げておりません。とだけは言っておきます。あ、何か怖いのでこれ以上は黙秘しますね』


 と、念じ返すとソフィアは厳しい表情で息を吐いた。どうやら、念じた言葉が伝わったらしい。


「クララさん」


 不意にオルムが話しかけてきた。


「え、あ、はい? 何ですか?」


「他の誰かに言いました? そのこと」


「いや、言ってない! 言ってない! 言ってないですよ! 怖いですし。それに、クロードにも言っていないということはあの子も他の人には言っていないと思います」


「そうか。それは良かったです。安心しました」


「ねえ待って。私だけ話に付いていけないんですけど!? お二人って金製メダルの冒険者って肩書き以外にまだ、何か別の肩書きがあるんですか!?」


 話に取り残されていることに抗議の声を上げるクロード。すると、突然、フランチェスカが『んー、んー』と魔法で封じられた口をモゴモゴしながら暴れ始めた。

 そして、私達の視線が彼女に移った瞬間、彼女は唇から出血をしながらも口を開くことに成功した。


「近衛騎士団長! ソイツ、ソフィア・オロバッサは悪魔よ! 言葉通りの意味で! 魔族!」


 体を拘束されて転がされた腹いせか、フランチェスカはやっと開いた口でそう言った。

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