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「何だ......?」


「そのキョトンとした顔をしたいのはこっちの方なんだけど。まず、何? エルフ? エルフってあの魔界の?」


「いや、人間界のエルフだ」


「人間界のエルフって数百年前に姿消したんじゃなったっけ!? ねえ、爺、貴方の知識間違ってんじゃないの!?」


 信じられないとばかりに目を見開き、アデルと名乗った男に圧倒されている爺に私は声を荒らげて聞いた。


「い、いや、そんな筈は......! というか、貴様、アハトと言わんかったか!?」


「ああ、言った。私は弐の勇者の末裔。人の前から姿を消した、人間界のエルフの代表だ」


 何言ってんだコイツ。


「は? 弐の勇者? 八つ首勇者の? は? え、いや、え? 何でこんなところに?」


「実は先日、エルフの隠れ里にとある人間と悪魔の四人組が現れたんだ。代々、エルフは人間を見限り、人の世から切り離された集落で生活をしてきた。しかし、その四人を見ていると人間も捨てたものではない気がしてきてな。この国の中枢、王都に人間というものの視察に来た訳だ」


「へ、へえ、そうなの。てか、もしかして、その四人のうち二人って......」


「ああ、貴殿、フランチェスカ・アインホルンのよく知る二人。オルム・パングマンとソフィア・オロバッサだ」


 待って。何でこのエルフは私の名前や私がアイツらと面識があることを知っているの。


「王都への行き方が分からない我々は同じく王都を目指しているオルム達の後をつけていたんだ。勿論、オルム達の迷惑にならないように気配を消してだが。だから、王都に着くまでの貴殿達のやりとりは全て知っている。エルフは耳が良いからな」


 私が質問をする前にアデルは私の疑問に対してそう答えた。何だか心を読まれた気分だ。


「もしかして、昨日の昼、私がご飯を食べていた時に感じた気配って......!?」


「恐らく我々の気配だ。八つ首勇者の力とエルフの力を駆使して、気配を消していたのだが貴殿にバレそうになって驚いた。ソフィアは気づいていなかったことを考えるに不死族の方が勘が鋭いのかもしれないな」


 いや、本当に情報の処理が追いつかないわ。


「......だったら嬉しいけれど。で? ディーノとの出会いは?」


 私がそう聞くと、ディーノが手を挙げた。


「僕がさっき起きたらしい時間に関する情報を集めてるときにアデルさん達に声を掛けられたんだよ。何でも、勇者の力を使えば僕くらいの魔族なら正体が見破れるらしくて。姫様の仲間なら姫様のところに案内してくれって言われたんだ」


「成る程。それで、事件......暗殺未遂事件だっけ? その情報は集まったの?」


「あー、結論から言うと今回の暗殺未遂事件の対象は三勇帝国の勇者だったよ。何か独裁者の宰相が無理やり呼んだから反体制派の民衆に殺されそうになったみたい。で、実行犯は人混みに紛れて姿を消し、代わりにあの悪魔とその契約者が捕まりました!」


「「は?」」


 私と爺の言葉が重なった。


「何でそこでアイツらが出てくんのよ」


「脈絡が無さすぎるじゃろう」


「何か、暗殺未遂にあった勇者に対して民衆が野次りまくったらしくてさ、キレた勇者が無差別に民衆を殺そうとして、それを止めた悪魔とその契約者が勇者の怒りを買って捕まったみたい」


 自国民ならまだ分かるが、国賓の立場で他国の民衆を無差別に殺そうとしたとか何考えてんのよ。


「というか、アイツらまあまあ良いことしてるわね。民衆を守ったんでしょ?」


 ソフィア・オロバッサ、彼女のしたいことが見えない。本当に。


「一体、何のつもりなのやら......。悪魔の考えることは分かりませんな」


 爺がそんな風に溜息を吐く。


「成話は見えたわ。で、貴方の私達への頼みってのは何? 何となく予想はついてるけど」


 私の言葉にアデルは真剣な表情で口を開いた。


「......オルムとソフィアを助けるのを手伝って貰いたい」


 うん。知ってた。話の流れからしてそうよね。


「アイツが居るんだから、ただの人間や回復しか出来ない参の勇者なんか余裕で倒せると思うんだけど」


「確かに貴殿の言う通り、ソフィアの力が有れば脱獄は容易だろう。しかし、力ずくでの脱獄をすれば指名手配をされ、彼らはこの国に居場所が無くなる。彼らはそれを分かって敢えて捕まったのだろう」


「でも、捕まったらどっちにしろ死刑とかにされるんじゃないの?」


「そこで出てくるのが、近衛騎士団長だ。彼とは昨日、王都のギルドマスターを通じて知り合っていてな。彼は宰相と対立をしている国王派でもあり、オルムやソフィアとも面識があるんだ。先程、彼が私のところに手紙を送ってきた」


 そう言うと、アデルは横のエルフからその手紙を受け取り、私達に見せた。


「これには軍の者しか知らない警備兵の見回りのルートや数に配置、隠し通路が詳細に書かれた王城の地図が入っている。そして、『自分の元にオルム達を連れてきてくれ。そうすれば保護出来る』と書いてあるのだ」


「完全に人任せじゃない。その団長」


「勇者との饗宴に参加する国王の護衛で忙しく、私を頼る他無かったらしい。部下をサポートに回したりはしてくれるらしいが」


「成る程。まあ、そっか。軍のトップだものね。こんな非常事態にそこまでは無理か。てか、貴方、弐の勇者なんでしょ? 貴方達だけじゃ無理なの?」


 弐の勇者、それもエルフであれば王城に忍びこむくらい容易な気がするが。


「無理ではないが、仲間は多いに越したことはない」


「ハッ。何故、みすみす敵を助けなければならぬの......」


「オッケ。分かった、良いわよ」


 鼻を鳴らす爺を無視して、私はニコリと笑ってそう言った。


「姫様!? 何を仰るのですか!? お気は確」


「爺、うるさい」


「うるさい!? 私は至極、真っ当な事を申し上げているだけで.......!」


「本当か!」


 アデルもぎゃあぎゃあ叫ぶ爺を無視して私の手を握る。


「ええ。本当よ。私達にも利益があるしね」


「利益ですと!?」


「ここであの悪魔に借りを作れば、斧を返させる交渉材料になるかもなんだよ?」


 ディーノが爺に諭すように言った。


「な、成る程......。しかし、あの悪魔がそう簡単に交渉になるとは思えませんが」


「良いの! 暇だったから!」


「姫様、結局それが理由なのでは......」


 爺の言葉をまたも無視して私はアデルと硬い握手を交わした。


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― 新着の感想 ―
[一言] >その四人を見ていると人間も捨てたものではない気がしてきてな その四人が特殊な少数に含まれるだけで大多数は捨てておいた方が良い可能性が
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