7 小者
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「契約者。皆、酒を飲んでいるようですが本当に此処はギルドなのですか?ソフィアには酒場にしか見えませんが......」
兵士の休憩所に負けず劣らず強いアルコール臭のする活気づいた冒険者ギルドを見てソフィアはそんなことを俺に尋ねた。
「間違いない。此処が冒険者ギルドだ。クエストから帰ってきた冒険者が休憩したり次の仕事のことなんかを仲間と相談するために酒屋がくっ付けられているんだよ」
何でも、値段が安いので金持ちではない冒険者が手を出し易いのだそうだ。思えば朝から殆ど何も食べていない。先程、酒場で軽く酒のつまみを食べただけだ。冒険者登録が済んだら軽く飯でも食べてみよう。
「クエスト、ですか?」
ソフィアが聞き慣れない単語に首を傾げる。
「クエストって言うのはギルドが冒険者に出す依頼のこと。冒険者はそのクエストを達成することで、報酬が貰えるんだ」
「依頼というのは誰が出すのですか?」
「個人だったり、貴族だったり、ギルドだったり色々だな。俺達だって金は必要だが出そうと思ったら出せると思うぞ?」
「依頼を出す者は依頼が多くの冒険者の目に留まり易くなり、冒険者はギルドを通した安全な依頼を受けることが出来るという訳ですか。中々、利にかなった仕組みですね」
どうやら、悪魔の令嬢はギルドに興味を持ってくれたようだ。魔界にギルドは無いようだが、これが切っ掛けで魔界にギルドが出来たら面白い。
「......ソフィア?」
ふと、俺が横を見ると先程まで俺の話を聞いていたソフィアの姿が消えていた。不審に思い、辺りを見回す俺。すると、此処から少し離れた場所で二人の男に囲まれる彼女の姿があった。
「くくくっ、お嬢ちゃん。此処はこわ~い冒険者がいっぱい居る冒険者ギルドだよ。そんなところに何の用かな~?」
「冒険者登録を、と」
「冒険者? ムリムリ。冒険者ギルドはねえ......キミみたいな雑魚は必要無いんだっ! タハハハッ、お金が欲しいのならコイツに付いていってみな? いっぱい貰えるよ?」
「うるせえ、ジン! 俺が愛するのは幼女だ! コイツ、体はちっちぇけどロリでは無いだろ。それに落ち着きが有りすぎる。幼女ってのはもっと落ち着きが無くて無邪気なもんだ」
......なんか分かりやすく絡まれてる。いや、ギルドでチンピラ冒険者に絡まれるのは最早テンプレと化しているらしいが、コイツらキャラが濃そうだな。
「キールの趣味は相変わらず分かんないなあ......そもそも冒険者登録にはお金が掛かるんだよ? キミみたいなのが、金を」
「なあ、結局俺の仲間に何の用なんだ?」
事が大きくなる前に対処しておこうと思い、俺は男達に話し掛けた。
「この子、キミの連れ?」
「ああ」
俺が頷くと、男たちは腹を抱えて笑い出した。
「プッ......二人揃って見た目どうしたんだよ! ガッハッハ!」
「止めるんだ、キール。クククッ。失礼だろ、クククククッ」
「他に言うことが無いのであればもう行って宜しいでしょうか? これ以上貴方達の話に付き合うのは度しがたい時間の無駄だと思いますので」
ソフィアは鋭い瞳で男達を睨み付け、顔色一つ変えずにそう言い放った。どうやら男達の発言が気に障ったらしい。無表情で何を考えているのかさっぱり分からないソフィアだが、意外にも短気なようだ。
「......今、なんつった?」
意外にも眉間にシワを寄せて怒ったのはジン、と呼ばれる比較的話し方が穏やかな方の冒険者だった。
「聞こえなかったのですか? 冒険者なのに耳が悪いのですね。私達にとって時間は有限です。新人冒険者を嘲笑いたいだけなら失せてください。不愉快です」
「ソ、ソフィア?」
静かに、落ち着いた口調でソフィアは男達に告げる。しかしソフィアが放つオーラはとても鋭いものだった。
「チッ......舐めやがって。おいっ! キミは彼女の仲間なんだよねえっ!? だったら、この僕に生意気な態度をとった責任を取ってよっ!」
ジンは舌打ちをしながら俺を睨み付け、拳を握りしめて俺に殴り掛かってきた。俺の腹を目掛けて飛んできた拳はとても強い力が込められており俺は思わず目を閉じる―――その瞬間、鈍い音がギルド中に響いた。
「事実を言われただけで感情を露にするとは随分、矮小な冒険者ですね。それで? この拳は何でしょうか?」
俺の腹に拳がめり込んでいないことを不思議に思い、恐る恐る目を開けると俺の腹の前にはソフィアの掌によって、意図も容易く受け止められたジンの拳があった。
異世界モノのテンプレ、ギルドの噛ませ犬さんが現れた!