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57 一撃

「契約者、直ぐに終わらせるので其処で見ていてください」


 ソフィアが彼女の斬撃を受け止めながらそう言うと、俺の視界は明るくなった。暗視魔法をソフィアが掛けてくれたようだ。

 その視界でソフィアに容赦のない斬撃を浴びせかけている者を見ると、ソフィアと同年代くらいの少女であることが分かった。

 だが、その髪色は赤髪に青色のメッシュが入った派手な色で目は紫と白のオッドアイ。ソフィアとは印象が全く違った。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねエッ!」


 ガキンッ、ガキンッと彼女はソフィアの構えた剣に何度も斧を降り下ろす。気のせいかもしれないが、ソフィアが少し押され気味な気がする。本当に彼女は何者なのだろうか。


「……貴方に何か恨まれるようなことをしましたか?」


「何か恨まれるようなことことをしたか~? してないなら私はこんなところに居なイッ! アンタガッ! アンタが皆を殺したんでしょうがアッ! 償え償え償え償エエエエエエ!」


 その叫び声に呼応するかのように彼女の斧は光り輝き、それがソフィアの剣に当たった瞬間、大きな音を立ててソフィアの体を吹っ飛ばした。


「ソフィア!?」


 俺はその様子を見て思わず叫んだ。


「少々、油断しましたが問題ありません」


 吹っ飛ばされたソフィアは空中で態勢を立て直し、そう言うと大量の魔法弾を彼女に向けて放った。

 しかし、彼女はその弾を一向に避けようとしない。


「フッ、フフフ、フフフフッ! バーカッ! お前の魔法は全てこの斧の力に変えてやるわっ!」


 彼女の言葉通り、ソフィアの放った魔法弾は彼女の前で突然減速して彼女の斧の中にゆっくりと入っていった。


「......ならば、これならどうですか」


 ソフィアは先程の魔法弾とは比べ物にならない程に大きなどす黒いビームのようなものを魔法陣を展開して、彼女に向けて放つ。

 これなら斧で吸い込むのは無理かもしれない。俺はそう思ったし、きっとソフィアもそう思っての攻撃だったのだろう。しかし、彼女は涼しい顔をしてそのビームをも斧で吸収してしまった。


「クククッ! 無駄よ! 大人しく殺されロッ! ねえっ、熱いのが良イッ!? それとも、冷たいのか良イッ!? どっちもやれば良いかアッ!」


 彼女が斧を掲げると、ソフィアの上に赤い魔法陣が現れて其処から大量の炎が振り注ぐ。

 ソフィアは冷静に防御壁を魔法で作り出すが、それすらも一瞬で崩壊して彼女の斧に吸い込まれた。どうやら、彼女はソフィアの魔法を吸い込むことでそれを動力として魔法を斧から放っているらしい。

 ソフィアは防御壁が機能しないことを悟ると、直ぐに避けようとするが炎は彼女をしつこく追尾してくる。


「......くっ」


 そして、逃げることを許さないとばかりに彼女はソフィアの足元に水色の魔法陣を作り上げて周囲一体を氷付けにし、彼女の下半身を完全に凍らせてしまった。


「フフフッ、フフフフッ、無様ね首切り魔王! 身動き一つ取れないでしょう!? 私がこれで止めを刺して上げるワッ!」


 そう言って、彼女がソフィアに近付き斧を振りかぶった瞬間......


「頼む、止めてくれっ!」


 俺はソフィアと彼女の間に入り、彼女に懇願した。彼女は俺の顔スレスレの部分で斧を止めて目を見開ける。


「ちょっ……!? 危ないじゃない人間! 私が殺りたいのはアンタじゃなくてコイツなの! 其処を退いて! というか、アンタ誰よ!?」


 どうやら、俺ごとソフィアを真っ二つにするほど野蛮ではなかったらしい。


「オルム・パングマン! ソフィアの契約者だ! 頼む! ソフィアを殺さないでくれ。代わりに俺が死ぬから!」


「契約者……!? 馬鹿げたことを言わないで下さい」


「そうよ。貴方の命なんて要らないわ。私はソイツを殺したいの。それに悪魔と契約なんてするものじゃないわよ? ソイツら全員、漏れ無くクズだから。なのに、こんなクズを庇うなんてアンタ、大丈夫? もしかして、ソイツに操られているんじゃないかしら。だったら、安心して。今からそれを殺してアンタを解放してあげるわ」


 可愛い声でソフィアをクズと罵り、嗜虐的な笑みを浮かべる少女に俺は不思議と恐ろしさを感じていなかった。


「油断大敵です。ソフィアの言えたことではありませんが」


「ぐっ……!?」


 俺の契約者兼パートナーがそんなにあっさり、やられる訳がないからである。

 ソフィアは油断していた彼女の腹に剣を突き刺し、軽々と氷を砕いて回し蹴りを食らわせた。彼女は斧を地面に落として、バタリと地面に倒れる。


「契約者が彼女に隙を作ってくれて助かりました。先程の命乞い、演技ですよね?」


「半分、本気。半分、演技だな。ソフィアがアイツの隙を狙ってたのは何と無く分かってたけど、もしかしたら、本当に負けてるのかもしれないと思ってさ。どっちの場合でも対応できる命乞いをした」


 我ながらクズみたいな戦法だな。


「フフッ、フフフッ、やってくれたわね人間! 許さなイ。ぶち殺してやルッ!」


 彼女は狂ったように笑いながら落としてしまった斧を取ろうと手を伸ばす。


「コレが貴方の力の全てですか」


 だが、ソフィアは斧に目を向けてそう言うと彼女が斧を取るのを阻止するために彼女の手を先程、自分がやられたように氷付けにした。あの斧は彼女の手になければ魔法を吸い込むことが出来ないらしい。そして、ソフィアはその斧を掴もうとする。


「バーカッ! 無駄よ。その斧は私にしか持つことが出来ないの! お前に持てる筈が......」


 素の力もかなり有るらしく、手の氷を彼女は力ずくで破壊し、斧を取ろうとするソフィアを挑発するかのようにそう叫んだ。しかし


「持てましたが」


 苦労する様子の一つも見せずにソフィアは彼女専用武器らしいその斧を軽々と持ち上げて見せ付けて見せた。マジかこの娘。


「......そんなっ!? あり得ないっ! 嘘嘘嘘!」


「少々、黙ってください」


 おもちゃを取り上げられた赤子のようにソフィアに斧を奪われ、泣き叫ぶ彼女にソフィアはそう言うと斧の持ち手の部分で彼女を殴り倒し、気絶させてしまった。


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