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47 総力戦2

更新おくれまみた!!! 評価やブクマ、感想、評価を頂けると更新速度も上がると思うのでそっちの方も宜しくお願いします!


『送れてすまなかった。私だ』


 それはまごうことなき十三代目弐の勇者、アデル・アハト・ベルガーの声だった。下を見るとオルムが手を振っており、エディアが混乱した様子であたふたしている。アイツにもこのことは明かしてなかったからな。ソフィアの羽のこともそうだし色々と驚いているのだろう。更に、何人かのエルフも銃を構えて応援に来てくれたようだった。


『遅いんだよっ! 後、オルム! 俺が居なかったらヤバかったんだからな!』


 俺は地上に居る奴らにそうテレパシーを送った。テレパシーを使うのは実に十年ぶりだが体が覚えてくれていたようで助かった。


『私達が武器を揃えるのに時間が掛かったんだ。許してやってくれ。オルムもすまなかったと言っている』


 テレパシーを使えないオルムの代わりにアデルがそんなことを言ってきた。


『チッ。しゃーねーな。許してやんよ。おい、アデル! お前はあの龍のもう片方の羽をぶち抜け!』


『了解した』


「ガキんちょ! 俺らはあの龍を兎に角ボコすぞ!」


 オルムが駆けつけたことにより『契約者......』と放心しているソフィアに俺は叫ぶ。感動の再会はまだ先だ。


「分かりました。ソフィアは中規模の魔法を展開してぶつけるのでそれまでの時間稼ぎをお願いします。魔法の展開を妨げられると元も子もないので」


 そう言うとソフィアは魔法陣を何重にも展開し始めた。


「よしきた! 覚悟しやがれクソドラゴン!」


『……っ。我は古来よりこの地に住まう火山と森の主。降って湧いたような侵略者のエルフに負ける訳にはいかんのだ!』


 右翼に穴を開けられ、飛ぶこともままならない様子の龍はそう叫んで俺を目掛けて突進してきた。其処にアデルの射撃が命中し、龍の右翼に穴が開く。突進の速度はかなり落ち、最早龍は飛ぶことさえままならない状況だ。更にエルフ達の銃弾までもが追撃とばかりに龍の腹部に命中する。


「俺達はエルフでも何でもねえのに問答無用で殺されたかけたんだ。んなこと知るかよ。別に俺は今からでも休戦しても良いんだぜ? 俺はお前を討伐するためにこの呪われた力を解放した訳じゃねえんだ」


 体から熱をこれでもかと発して、上昇気流と穴の開いた羽根で飛ぶ龍に俺はそう言った。


『呪われた力、か。確かにそうかもしれんな。八つ首の肆よ。封印から解放された時に貴様らを攻撃したことは謝ろう。しかし、我はエルフを絶滅させるまで止まらん。お主らがあの憎きエルフを庇う限り、休戦は無しだ』


 龍はそう言うと、またもや俺に火を纏って体当たりをしてきた。やはり、エルフ達に攻撃を受けている分、力が弱まっている。


「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」


 そして、咆哮を上げると地上から狙いを定めているエルフ達目掛けて火球を放った。ソフィアは魔法を展開しているところで相殺するために魔法を打つことが出来ない。不味い。下にはオルムやエディアもいる。


「俺が行く!」


 魔法の展開を中止しようとしているソフィアに俺はそう言って火球の進行方向に先回りして鎌で火球をぶん殴って消した。そのタイミングでまたエルフ達が一斉に銃を打つ。アイツら強すぎかよ。


「グオオオオオオオオッ!」


 顔に銃弾を何発も命中させられた龍は遂に叫びながら地面へと落ちていった。そして......


「魔法陣展開完了。撃ちます。離れてください」


 ソフィアがそう言ってきたので、俺が避けるとソフィアの魔法陣が重なりあって一つの魔法陣が出来、其処から小さな黒い球が出てきて龍を目掛けて飛んでいった。


「何だありゃ......」


 俺が一体、何が起こるのだろうかとその球を見つめていると龍の体に当たった瞬間物凄い音を立てて炸裂した。球は龍を中心に膨らんでいき、辺りに物凄い風が吹いた。俺はその風に煽られて思わず、倒れそうになる。浮遊しているので倒れはしないのだが。中規模ってレベルじゃない。


『やったか!?』


 おい、アデル。フラグ立てんな。


「ガハッ、アアアアアアアアッ!」


 しかし、そんなアデルのフラグをへし折るほどにソフィアの魔法は強かったらしく球体から解放された龍は体の至るところから吹き出していた炎が消えるどころか体から赤色が失せ、くすんだ灰色の体になったまま落下していった。地上でドスンという音が聞こえる。


「行きましょう」


 ソフィアの言葉に頷いて、龍が落下した位置に俺は降り立った。二時間ぶりくらいの地上だ。ほっとする。


「よくやってくれた」


 地上にはアデルを初めとするエルフ達と


「悪い。何も出来なくて」


 何時ものように自分の無力さを嘆くオルムと沈黙するエディアがいた。他のエルフはソフィアの羽根を見て驚いているようだが、アデルはかなり落ち着いている。


『……フフッ』


 すると、そんな決して和やかとは言い難い物の再会をしている俺達の気持ちを知ってか知らずか燃え尽きた様子の龍がテレパシーを送ってきた。どうやらエディアやオルム、エルフ達にもそのテレパシーは聞こえているらしい。


「燃やし神よ、まだ生きていたか」


 俺とソフィアが戦闘体勢を取ると、それを制してアデルが俺達の前に出る。


『貴様が今代の弐か。我を封印した憎き四代目とよく似ておるわ』


「十四代目、弐の勇者。アデル・アハト・ベルガーだ」


『そうか。十四代目か。では、其処の鎌使いは?』


 龍は俺の方に目をギョロリと向けて聞いてきた。


「肆の十三、オーガスティン・アハト・アーベントロート」


 俺は顔をしかめながらそう言った。アイツらにこの名前を聞かれるのが嫌で仕方がない。


『アーベントロート......懐かしい姓だ。昔、初代の肆が平穏を求めて此処に来たことがあった。強欲な弐とは違い、此処は私の縄張りだと言ったら何処かへと行ったが』


「ケッ。初代なんて、ひいが幾つ付くか数えんのも面倒なくらいに遠いじいちゃんじゃねえか。んなもん、知るか。名前を聞いたならくたばるなり、このアデルと和解するなりしろ」


 俺は吐き捨てるように言う。


『それは無理な話だ。我はこれより死ぬのだからな。......貴様らと共に』


 龍の体の赤色が復活した。鱗の隙間にマグマが再び、流れ始める。


「なっ」


 アデルは慌てて銃を龍に突き付けるが


『クククッ。撃ちたければ撃つが良い。弐の十四代目よ。たちまち私の体が弾けて辺り一体を不毛な荒野へと化させるぞ。逃げたエルフ達も攻撃圏内だ。希望があるとするなら其処の必死に防御壁を展開している娘に守ってもらうことだが、はてさて、間に合うかな? 我は今からでも爆発出来るぞ?』


と、龍は笑うだけだった。

 コイツマジでどうしてくれようか。すると、俺とアデルの肩に手が置かれた。オルムのものだ。


「少しくらいは貢献させてくれ」


 オルムはそう言うと丸腰で龍へと近付いて行った。


「おい!」


 アデルが叫ぶ。俺は呆気に取られて何も言えなかった。


『説得でもするつもりか? 無駄だぞ?』


 龍がそう言うとオルムは


「其処をを頼む! お願い! お願い! この通りっ! ね? ね?」


 土下座した。


「「「「「『は?」」」」」』


 全員の声、それも先程まで俯いて沈黙していたエディアと龍の声までもが重なった。


「いやまあ、そのね。貴方様の怒りは重々承知の上なんですよ。俺もね? アデルから色々と四代目の弐の勇者について聞きました。いやあ、エルフからしたら確かに英雄かもしれないっすけど貴方様からしたらただの侵略者っすもんね? 酷いと思いましたわ。ええ」


「おい、貴様! 四代目を侮辱す......」


「うっせえ黙ってろ堅物エルフ! ソフィアと地味にキャラ被ってんだよ自重しろ! 堅物クーデレ枠はソフィアで良いの! 女性受け良さそうなイケメンは要らんの!」


 オルムがキャラ崩壊し始めた。


『お、お前は何なんだ。何の力も感じないが......まさか、隠密に長けた捌の勇者か!?』


「捌はかなり昔に革命に失敗して途絶えたから! んなことも知んねえのかよ情弱! そっか、封印されてたんだもんね! それで負けて自爆とかいう負け犬の遠吠えみたいなことしようとしてんだもんね!? いや別に!? それでアンタの気持ちが収まるなら別に良いけどおおおおおおおおお!? ああ、死にたくないぬあああ!」


 さっきまでの腰の低さはどこにやったんだ。後、土下座しながら煽るなオルム。


『い、いや、あ......ぼ、防御壁を作る時間稼ぎをするつもりだな?』


 あ~あ~龍も引いてるよ。


「そうだよ! だって、死にたくないもん! 人間の最大欲求! 食欲、性欲、睡眠欲! あ、なんか上手いこと繋げられなかったわ畜生クソがああああっ! でも、アンタはそれで良いのか!? 何度も問う! 自爆で良いのか!? 恥ずかしいぞ!? めっさ、恥ずかしいぞ自爆とか! エンシェントドラゴンなんだろ!? 古代龍なんだろ!? もっと賢い選択は出来ねえのか!? ええんか!? 爆発オチでええんか!? ......カハッ」


あ、気絶した。


「契約者、大丈夫ですか?」


 ソフィアの問い掛けにオルムは答えない。


『極度のストレスと感情の昂りで失神したようだな』


 オルム、色々溜めてたんだな。


「あの」


 失神したオルムを横目にアデルが龍へと近付く。


『何だ』


「私の命をくれてやる。この土地も返す。だから、自爆は止めてくれないか」


『我は人の精気や人肉を食らう魔物ではない。貴様の命など要らん。......だが、まあ』


 龍はため息を吐くように炎を吐いて


『其処の小僧のせいで興が冷めた。仕方あるまい、乗ってやろう』


と言ったのだった。

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[一言] これぞ弱者の戦い方 結果良ければ全て良し
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