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46 総力戦

更新遅れましたあ! すみません!


「炎龍......燃やし神の封印が解けた。皆、森の外に避難してくれ!」


 無事、村に着くことが出来た俺達は村中のエルフに向かってそう叫んだ。その言葉を聞いたエルフ達はざわめき立つ。何かの間違いではないのかという疑いの声や動揺の声があちこちから聞こえてくる。

 今、ソフィアは必死で時間稼ぎをしてくれている。だが、それも何時まで持つかは分からない。ソフィアが負けることは想像しづらいが、封印から解放された龍は四代目の八つ首でも苦戦するほどの実力を持っている。だから、何の力も持たない俺に出来るのは彼女のパートナーとして出来るだけ早く、多くのエルフ達を此処から逃がしてアデルを応援にいかせることだ。


「突然、こんなことを言われても何がなんだか分からないかもしれないが、確かに燃やし神が復活したんだ! 今、ソフィアは皆を逃がすために一人で戦っている! 頼むから今はこの森の外に逃げてくれ!」


 俺が喉を痛める程に叫ぶと、俺の必死さが伝わったらしく彼らは頷きあって避難を開始した。


「し、しかし、その場合、貴方はどうするのですか!?」


 避難せずにその場に残った若いエルフが俺に聞く。


「俺達の仲間、サイズが此処に戻ってくる途中に何処かに消えたんです。彼を探し出すまで俺は逃げることは出来ません。俺はもう一度、村の奥の森に行きます」


「そ、それなら、私を連れていってください! 多少、銃の心得があります。護衛くらいにはなれるでしょう。それに、私達の魔法痕を治してくれたソフィア様の支援もしたいですし」


 彼の言葉には確かな信念が宿っていた。きっと、危ないから大丈夫だと遠慮しても彼は付いてくるだろう。そんな気がした。


「あ、ありがとうございます! 今、エディアがアデルを呼びに行っているのでアデルが来たら一緒に行きましょう!」


 すると、他のエルフ達も次々に声を上げる。


「お、俺も! 俺も連れていってください!」


「私も! 銃の腕には自信があります!」


「何だよ。やっぱり、人間の中にもアンタみてえな良い奴がいるんじゃねえか。俺も連れていけ。俺はこの村の保安部隊の隊長だ」


「子供が居る奴等は、避難を優先しろ! もしものことがあるからな! あ、因みに俺は行くぜ。なんたって、未婚だからな!」


 そんな風に自然とエルフ達は盛り上がっていき、協力する姿勢を俺に見せてくれた。その人数、なんと十七人。頼もしい限りだ。


「オルム君、呼んできたよ」


 すると、エディアがアデルと共に戻ってきた。エディアはサイズが行方不明になってからずっと呼吸が荒い。彼の身が心配で、心配で、仕方がないのだろう。今にも泣き出してしまいそうだ。


「悪い。待たせた。村の者はこれで全部か?」


 そして、アデルが緊張感に溢れた顔でそう言った。


「はい。私達のような燃やし神の討伐隊の志願者以外は全員が避難しました」


 一番最初に討伐隊に加わることを決めた青年がアデルにそう言った。


「分かった。では、人間。燃やし神の元まで案内しろ」


 アデルは口径が20mmは有りそうな巨大な銃を軽々と持ちながら俺に言った。


「ああ、付いてきてくれ......」



「チイッ。何でこんなに硬いんだよコイツ!」


 俺は乱暴に鎌を振って龍に衝撃波を喰らわせる。しかし、巨岩をバターのように真っ二つに出来る筈のその衝撃波を受けたというのに龍の体には傷一つ無かった。


「......すみません。助けて頂いて」


 そう言いながらソフィアは龍が放った火球に水魔法をぶつけて相殺し、龍に向かって無数の黒い塊をぶつけた。闇魔法の類いだろう。


「良いってことよ。それより、俺のこの力には驚かねえのか?」


「最初は確かに驚きましたが、あれこれ考えている暇はないので。それより貴方こそ、この羽根に驚かないのですか?」


「まあ......な。こっちから話を振っておいて悪いが、お互いに詳しいことは後で話そうぜ。奴さんがなんか、妙なことをしていやがる」


 俺がそう言って指差した先には自分の背中に巨大な魔法陣を展開しようとしている龍の姿があった。恐らく、先程から何度も撃ってきている低威力の炎魔法ではない何かを撃とうとしているのだろう。


「最高位の炎魔法を撃とうとしていますね。もし、アレが成功したらこの森は勿論、フェアケタットやこの辺りの山々が灰塵に帰すでしょう」


「ヤベエじゃねえか! ど、ど、どうすんだ!? そんな魔法が来たら流石に俺でも防げねえぞ!?」


「最悪、ソフィアの魔法で防ぐことは可能ですが膨大な魔力を使うのであまり得策ではありません。魔法の解除を試みます」


 そう言うとソフィアは俺に止める隙も与えずに龍へと突っ込んでいった。


「お、おい、ガキんちょ!?」


『愚かな者共め、古の魔法を解くことなど出来んわ』


「それはどうでしょうか」


 ソフィアがそう言うと龍の魔法陣は突然、回転を初めてチカチカと点滅するとたちまち爆発を起こした。俺は慌てて鎌でそれを防ぐ。


「......暴発を起こしてしまいましたか」


「で、でも、ナイスだ。ガキんちょ! 魔法陣は壊れたぞ!」


『馬鹿な……!?」


 龍が魔法陣の暴発で怯んでいるのを見て、俺は龍との距離を一気につめた。そして、鎌を真っ直ぐ振り落とす。鎌を使ったことなんて人生でも数えるくらいしかないのに体が勝手に動いた。

 全く。ソフィアが浮遊魔法を使えることを覚えていて良かったとつくづく思う。こんな空をビュンビュン飛び回る龍、地上からじゃ戦えねえ。エディアの裸は拝めなかったが、あの風呂の覗きも無駄じゃなかった。


「グオオオオオオオオオオオオオオッ」


 流石にこれは致命傷だったようで龍はもがき苦しみながら幾つもの爆発を体の周りで起こして俺に攻撃をした。


「いって!?」


 その爆発によって俺の右肩は抉れ、出血が止まらなくなった。成る程。コイツはただの魔物じゃねえわ。


「グウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 そう吠えると龍は魔法での攻撃を止め、牙に炎を纏わせて俺に突進してきた。どうやら俺を噛み砕くつもりらしい。


「ガキんちょ、背後からやっちまえ!」


「了解」


 俺は突進してきた龍を引き付けて、その攻撃を鎌で受けた。背後を突かれることを理解した上での突進だったらしく、龍は全力で鎌を壊そうとして来る。

 ソフィアも龍の背中に魔力弾を叩き込むが、俺が巻き込まれる可能性があるのであまり大きな

魔法は打てないらしく、龍は何とか耐えている。


「こちとら皆を守るために、未来を捨てて力を解放してんだよ! テメエみたいなジジイのドラゴンなんかに負けてやらねえ……!」


 しかし、この空中というフィールドではその場しのぎの浮遊魔法を使い、生まれて初めての空中戦をしている俺と巨大な羽を持ち、千歳の時を生きてきたドラゴンとではどう考えても俺が不利だった。

 ドラゴンの牙がジリジリと俺を押し始める。空中で位置を固定するのも此処まで押されると限界だ。


「ゴオオオオオオオオアアアアアアアアアアッ!」


 俺の鎌が龍によって弾かれた。その瞬間、俺の胸を龍の炎が焼き始める。


「っ......大丈夫ですか?」


 そんな俺と龍の間にソフィアが割って入り、俺を庇った。即座にソフィアは防御壁を張ろうとしたが、即座にその魔法陣を牙で砕かれてしまった。そして、ソフィアはその勢いのまま龍の牙で胸を引き裂かれてしまった。血が噴水のように彼女の胸から飛び出る。


「ゴアアアアアアアアアアアア」


「……いきがるな」


 ソフィアは鋭い目付きで龍を睨み付け、そのまま膝蹴りを食らわせた。龍はそれによって遠くへと飛ばされる。形勢が有利になって油断していたらしい。


「大丈夫かはこっちの台詞だ!」


「ソフィアは問題ありません。怪我も、もう治りましたから。貴方の怪我も治療しますね」


 ソフィアがそう言うと、龍に抉られた右肩も龍に火傷を負わされた上半身も全てが完治した。成る程。化け物だ。


「ありがとよ! ガキんちょ、アイツをぶっ飛ばせるスゲエ技とかねえのか!? 溜め技だったら、俺がどうにかまた引き付けるし!」


「幾つか有ります」


「マジか! 早く言えよ!」


 ダメ元で聞いたというのになんという僥倖。俺は顔をパアっと明るくさせて言う。


「ですが、それを使うとほぼ間違いなくこの辺り一体の生命が消え去ります」


「はあっ!?」


「ソフィアが本気になれば幾らでもあの程度の龍、葬れます。ただ、周りへの影響を考えて手加減をするのが難しいのです」


 そう言えばこの前、アルベルトを筆頭とする兵士達と戦ったときもソフィアは殺さない、という手加減に手こずっていた気がする。


「チッ。なら、無理か。それなら、あの羽を潰して地上に落としてくれねえか? 地上なら本領を発揮出来る」


 龍との押し合いに負けたのも、此処が空中だったからだ。あれが地上だったら確かに勝っていた。しかし、俺の言葉にソフィアはかぶりを振る。


「羽の部分は何としても潰されたくないらしく、とてつもなく硬くて魔法をはね除ける力を持っています。それこそ先程言ったような大規模魔法や、超強力な物理攻撃をぶつけない限りは無理かと。貴方の鎌でも難しいと思います」


「チッ。勝ち筋ねえじゃねえかよっ!」


 ソフィアに蹴られて吹き飛んだ龍が放ってくる見飽きた炎の弾を避けながら俺が叫んだときだった。


『羽根だな?』


 龍のものとは違う別のテレパシーが頭に届き、ドゴンッという巨大な音が響き渡る。驚いて目を瞑ってしまった俺が恐る恐る目を開けると、其処には......


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」


 其処には右翼に巨大な穴を開けられ悲鳴をあげる龍の姿があった。


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