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43 啼き声

本編とは関係ありませんが、ご報告です! クレイジードイツ人とヘンタイ日本人の異文化交流系(?)ラブコメ『転校してきた美少女ドイツ人が狂ってて困ってます……って、部室でソーセージ茹でんじゃねえっ!?』の連載を始めました! ネタ全振りのはちゃめちゃラブコメとなっております是非ともご一読下さい!https://ncode.syosetu.com/n3537gw/


「森の調査に向かう前に魔法を掛けさせて貰います」


 ソフィアは炎龍の封印を終着点とする森の奥地へ続く道の前でそう言って俺達に手をかざした。特に体に変化はない。


「何をしたんだ? ガキんちょ」


「魔法痕の発生を防ぐために皆さんの魔力への親和性を低めました。その弊害で魔法を使うのが難しくなるので、ギルドマスターが戦えなくなりますがソフィアが責任を持って守るので安心して下さい」


「僕は良いんだが、ソフィア君も魔法は使うだろう? キミは大丈夫なのかい? 魔法を使えなくなるということは回復魔法も使えなくなる訳だし」


 エディアの言葉にソフィアはかぶりを振る。


「この村に漂っている炎龍の魔力を分析して、この程度の魔力であればソフィアの体に害はないという結論に至りました。なのでソフィアは魔法を掛けずに行きます」


「そ、そうか。なら良いんだ。それじゃあ、行こうか」


「お待ち下さい」


 歩を進めようとするエディアをソフィアが止めた。


「その、ギルドマスターは何時も槍を持ち歩いておられますがそれを武器として使うことは出来ないのですか?」


 ソフィアの言葉に俺は首を傾げた。見たところ、エディアの体に槍らしきものは見当たらない。


「あー、オルム。普通に探しても見当たらないと思うぞ」


「ソフィア君には何でもお見通しだね。ほら、オルム君。これのことだよ」


 そう言うと、エディアは彼女がよく使っている杖を俺に見せ、その杖の先端部分をスポンと引き抜くように取り外した。すると、そこから出てきたのは小さいながらも確かにしっかりと槍の形をした刀身。

 しかし、そこまで杖自体が長くないので槍というより見た目的には工具のキリの大きい版のようだ。


「また何でそんな時代劇みたいな仕込み刀を持ってるんだ?」


「これはね、僕の大切な槍なんだ。だから、肌身離さず持っている。実際に使うことは出来ないんだけどね。……そうだな。また今度、二人にも話すよ」


 エディアの言葉に俺とソフィアは疑問符を浮かべながらも頷いた。彼女もまた訳ありのようだ。



 二度目の森の調査は順調に進んでいった。しかし、村から30分程歩いたところで突然俺の体に異変が生じた。


「なんか、凄く寒気がする......」


「大丈夫か?」


 サイズが心配するように聞いてきた。


「体に異常はないようですが。引き返しますか?」


「いや、其処までじゃないから大丈夫。ただ、何と無く嫌な気分がするんだよな」


「それは恐らく、炎龍の封印が近いからではないでしょうか」


「でも、俺は別に何ともないぜ?」


 サイズが首を傾げながら言う。


「僕も」


 そして、エディアがそれに続いた。


「もしかしたら、契約者は本能的に危険な物を察知する能力が高いのかもしれませんね。人間でも稀にそういった方が存在すると本で読みました。珍しい才能ですね」


「俺の才能は危機察知能力の高さか......」


 俺は溜め息を吐いて肩を落とす。何の才能もないと思っていた自分に一つでも才能があったのは嬉しいが、珍しい才能としてはあまりにパッとしない気がする。

 折角なら魔法の才能とか、そこら辺が欲しかった。


「オルムらしい才能だな」


「否定出来ないのがまた辛い」


「まあ、炎龍が復活するようなことはないだろうし大丈夫だろう」


 エディアが笑って言った。


「エディア、テメエ何フラグ立ててんだよ」


「い、いや、でも流石に僕達が来たタイミングで復活するなんてどれだけ運が悪いんだってなるだろう? ほ、ほら、封印が見えてきたよ!」


 エディアが指差す方向には確かに封印らしきものがあった。墓石のような形の石だ。

 魔力を感じることの出来ない俺の目にも見える禍々しい紫色の魔力を放出している。


「うっ.......何だか、凄く気持ち悪い」


 俺の体はガクガクと震え、背中に冷たい汗が流れていた。


「マ、マジで大丈夫かオルム」


「精神を安定させられるようにソフィアと精神の状態を同じにする感覚魔法を使いますね」


 そう言ってソフィアが俺の背中に触れて魔法を使うと、俺の震えと汗は止まった。それだけではない。自然と背筋が伸びて、息も整ったのだ。どうやら何時もソフィアの精神状態はこんなに引き締まっているらしい。


「大丈夫かい?」


「ああ。ありがとう。ソフィアのお陰でどうにかな―――」


 その時、俺の言葉を遮るように世界が白に染まった。俺は思わず目を瞑る。


「グゥオオオオオオオオオオオッ!」


 鼓膜が吹き飛びそうな程に低く、大きな音が聞こえる。


「......フラグ回収早いなおい」


 サイズが一言。


「怪我はありませんか?」


 その言葉に目を開けると、目の前には俺達三人を庇うようにしてソフィアが背中を向けて立っていた。


「ウグアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


「燃やし......神」


 そう呟いたのが誰かは分からない。サイズか、エディアか、ソフィアか、若しくは無意識に俺が呟いたのかもしれない。だが、そんな些細なことはどうでも良い。

 肝心なのは目の前に10メートルを優に越える高さを持った、巨龍が現れたことだ。それは体の皮膚をマグマのようにドロドロと溶かし、異常な熱を放っている。


 それは狂ったように俺達に向かって爪を振るい、口から吐く火を浴びせてくる。が、ソフィアが防御魔法で作った巨大な魔法の盾に全て弾かれていた。

 すると、今度は巨大な翼で空を飛んで移動を始めた。


「村に行く気か......。ソフィア。冷静に相手の力量を見極めて答えてくれ。お前はアイツに勝てるか?」


「何時ものように軽々とまではいきませんが、可能です」


 ソフィアは厳しい表情で迷いなく答えた。


「じゃあ、俺を今すぐ村に移動させることは出来るか?」


「多少、手荒な方法になりますがそれで良ければ」


「分かった。ソフィアはあの龍の足止めをしておいてくれ。出来るなら倒しても良いが、それよりもエルフの村に被害が出ないようにするのが最優先だ。俺は今から村に行ってエルフを避難させ、アデルに応援を頼んでくる。それまで持ちこたえてくれ」


「ですが、それでは契約者が......!」


 ソフィアは声を荒らげた。


「危ない、って心配してくれるならあの龍をきちんと足止めしておいてくれ。エディアとサイズも一緒に行くぞ」


「わ、分かった。だが、あの八つ首が苦戦しながら戦った末に封印したという龍をソフィア君一人に任せても良いのか......」


「ソフィアが大丈夫って言うなら、大丈夫だ。他に手段もない」


 俺はパートナーとしてソフィアの力を信用している。俺やエディアが参戦したところで何も変わらない。俺達に出来るのはエルフの避難を急ぎ、アデルを呼ぶことだけだ。


「ソフィアは大丈夫です」


「わ、分かった。ソフィア君がそう言うなら......それじゃあ、ソフィア君。送ってくれるかな。村に」


「分かりました。では」


「ああ、頼むぜ......ガキんちょ」


 そう言うサイズの表情は曇っていた。炎龍が復活してしまったこととは、また何か別の理由で悩んでいるように見えたのだが......。

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