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31 崩れ去るスローライフ


 電気を発生させる魔道具にホームベーカリーのプラグを差し込み小麦粉生クリーム、イースト菌、その他諸々をセットする。


「後は全部、この機械がやってくれるぞ」


「そうですか」


「焼き上がるまでかなり時間が有るからな。紅茶でも飲みながら待ってようぜ」


「はい。ソフィアが淹れますね」


「ああ。何故かソフィアが淹れた紅茶は美味しいんだよな。何時も淹れさせて悪い」


 淹れる手順は同じ筈なのだが、ソフィアが淹れた紅茶の方が俺が淹れた紅茶よりも香りが良い気がする。


「......いえ、契約者の身の回りの世話をすることも契約の一部なので。それに契約者の淹れた紅茶は不味いです」


「『あ、何時ものパターンだな』って油断してたらさらっとディスられた!? そりゃ、ソフィアが淹れた紅茶の方が美味しいけどさ。不味いとまで言う!? 」


「事実ですので」


「グホオ......」


 そんな会話をしながら、俺達が優雅に紅茶を飲んでいると突然玄関から大きな音が聞こえてきた。誰かが扉を叩いているらしい。


「物盗りでしょうか?」


「かもしれないな。壊す勢いで扉を叩いてるし」


 俺は壁に立て掛けていた剣を取って抜き、ゆっくりと玄関に向かっていった。


「契約者、ソフィアの後ろに隠れて下さい」


「了解。何時も悪いな」


 ソフィアに守って貰ってばかりで時々申し訳なく思うことがあるのだが、俺が変にでしゃばると、かえってソフィアに迷惑を掛ける可能性があるので仕方がない。


「何者ですか。名乗りなさい。此処は契約者とソフィアの家です」


 ドスの効いた声で扉の向こうに居る人間を脅すソフィア。それにしても『契約者とソフィアの家』、か。ソフィアの口からその言葉を聞くと、何と無く嬉しい。


「お、その声はガキんちょか?」


「サイズ。この家はオルム君とソフィア君の家だ。ソフィア君以外の女性が居たら問題だろう」


「「は?」」


 俺とソフィアの声が重なる。


「ほら、サイズが扉を荒っぽく叩くから完全に泥棒だと思われてたじゃないか。僕らの声が聞こえてかなり戸惑ってるよ?」


「だってインターフォン無いし」


「分かりにくいけど其処に有る」


「だったら最初から言えっ!」


「いや、だって僕が教えようとしてもサイズが......」


「はあ? 俺のせいにするのかよ」


「いや、そう言う訳じゃないけど」


「いや、すまん。確かに俺が悪かった」


「あ、別にサイズが悪いわけでは......」


「お前らどっちもうるせえっ!」


 サイズとエディアのやり取りに痺れを切らした俺は勢いよく扉を開けてそう叫んだ。


「茶番なら他でやってください」


「あ、すまん(ごめん)」


 冷たい瞳を向けながら怒るソフィアにサイズとエディアは『しまった......』という表情をしながら謝った。


「こんな朝から何の用だよ。俺達は今から初のホームベーカリーで焼いた食パンを美味しい紅茶と共に頂く予定だったんだが?」


「はいはい、直ぐに帰りますよ。ほら、エディア」


「あ、ああ。実はキミ達に他のギルドから依頼があってね」


「依頼?」


 他のギルドから直接指名されるほど、俺達は有名ではない筈なのだが。


「この前あったギルドマスターの会議で、暗鬱の森の最奥部を調査した凄腕冒険者がウチのギルドには居るって自慢したら興味持たれちゃったらしくて自分のギルドが任されている区域にも似たような未開の森が有るから調査してくれないか、って依頼されてしまったんだ」


「何てことをしてくれたんだ」


 ソフィアの正体が俺以外の人間にバレることを防ぐため、俺達は出来るだけひっそりと活動しなければいけない。別の街のギルドマスターにまで名前が知れ渡ってしまうと言うのは結構問題だ。


「依頼を受けるかどうかは君達次第だけど僕としては受けて欲しいな」


「何故?」


「僕、そろそろ長期休暇が有るんだよね。サーラに無理言って確保して貰ったんだけど。それで、今回の依頼をしてきたギルドは有名な温泉街にあるんだ。......君達が行くなら、付いていきたいな」


「その場合はサイズさんもセットで付いてくるぞ」


 要らん。


「契約者、どうしますか?」


「ソフィアに任せる」


「ソフィアはとしては......温泉、というものが気になるので行きたいです。どのような物かは知っているのですが、見たことがないので」


「だとよ。オルム」


 サイズがニヤニヤしながら、そう言った。まあ、ソフィアが行きたいなら良いか。森の調査なんて直ぐに終わるだろうし。


「分かった。詳しい日程が決まったら言ってくれ」


「ああ。ありがとう。じゃあね」


「またな~!」


 エディアとサイズは笑顔で手を振って俺の家を後にした。全く朝から疲れる。早く食パンを食おう。

この世界の技術力は大体昭和後期くらいだと思ってくだされば大丈夫です。ホームベーカリーはあるのに飛行機はなかったりしますが.......まあ、それはほら、歩んできた歴史が現実とは違うし? 魔法とかもあるし? ......ね?

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― 新着の感想 ―
[一言] 美少女が居るなら温泉回は外せない、うん
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