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29 友

更新遅れてスミマセンッ!


「サイズにエディア......!」


 これも悪魔様のご加護だろうか。俺は予期せぬ出会いに歓喜した。


「お、おう。どした?」


「この中でソフィアが数十人の兵士と戦っているんだ! 加勢してくれないか!?」


「兵士......成る程。彼らはどうしても君達を殺したいようだね。行こうか。サイズ」


 エディアはそう言うと、魔法を詠唱し始めた。


「おう! 恩人であり、友人のお前とガキんちょのためなら幾らでも戦ってやるよ」


 エディアに続いてサイズが剣を抜く。


「これでも一応、厳しい実技試験に合格したギルドマスターと銀製メダルの冒険者だからね。やってやるよ。オルム君も戦ってくれ」


 エディアの瞳が何時もの穏やかなものでもギルドマスターとしての厳しいものでもなく血に餓えた獣のようなものになる。そして......


「駆け巡れ!」


 エディアがそう叫ぶと同時に彼女の手から電撃が発生し、その電撃は酒場の中に入っていった。中から兵士の叫び声が聞こえる。先程ソフィアが使っていた魔法に似ているが今の攻撃はかなりの力が込められた魔法だったらしい。ソフィアは手加減をするのに手こずっていたが、エディアなら相手を殺さず容易に魔法を連発してくれそうだ。


「ほらオルム、エディアが折角入口付近の敵を潰してくれたんだ。俺達は突撃するぞ!」


「あ、ああ、分かった!」


 エディアとサイズが加わってくれたものの、中にはまだアルベルトが居る。アイツは強い。本当に強い。エディア、サイズ、俺が束になったところで勝てるだろうか。そんな一抹の不安を揉み消して、俺は再び酒場の中に突撃した。


「契約者? 逃げてくださいと言った筈......」


 中に入ると、複数の兵士を同時に相手しているソフィアの姿が見えた。


「エディアとサイズを連れてきた! 此処からは四人で戦う!」


「......分かりました。ですが、ソフィアが危ないと判断したら逃げてください」


「ガキんちょ、あんまり俺を舐めんなよ? 流石に黒牙猪は無理だが、その辺のモブ兵士を倒すことなんて簡単だ」


「......信じています」


 そんな会話をしているうちに、第二ラウンドが始まった。突如突撃してきた俺達に困惑していた兵士達だったが、直ぐに俺達を倒すために陣形を敷いてきたのだ。


「エディア、ソフィア! アルベルト......もとい、あそこの大男は危険だ。俺達の仕事は相手の数を減らすこと。相手の数さえ減らせれば大男はソフィアが容易に対処してくれる」


「はっ! つまり雑魚を戦闘不能にしろってことか! 了解した。エディア、援護を頼むぜ!」


 互いに背後を守りあっていた俺達はその掛け声と共に、攻勢を仕掛けた。近くに有った机に飛び乗り、陣形を組む兵士の何人かに狙いを定めるとそのまま飛び降りて下に居た兵士を踏みつける。思いもよらない上からの攻撃に周りの兵士が動揺する瞬間を俺は見逃さず、隙を見せた兵士を蹴りつけた。戦いの真髄は隙を突くことにある、というのはソフィアの教えだ。


「......あ」


 俺とサイズが順調に敵を蹴散らしていると、後方で魔法を使っていたエディアがそんな声を漏らした。


「どうした!? ......っ」


 俺がエディアの方を振り向くと、その隙に兵士に腹を切りつけられてしまった。しかし、ぱっくりと割れた腹はまるで最初から無かったかのように閉じていく。そして、俺を切りつけた兵士は見るも無残な姿にされていた。


「契約者、守りきれずすみません。回復魔法を使ったので戦いに支障は無いと思われます。今回のソフィアの失態に関する処分はまた後で」


 大体、予想は付いていたが俺の腹を治して兵士を半殺しにしたのはソフィアだったか。


「オルム君! すまない、良い案が思い付いたんだ!」


「良い案? どんなのだ?」


「それは......」


 エディアは魔法を撃つ手を止めて、胸ポケットに手を突っ込んだ。そして、エディアが胸ポケットから取り出したのは黒い板のようなものだった。折り畳み式らしいその板をエディアは開いて、大きく掲げた。


「一般兵士の皆、聞くが良い。私は冒険者管理組合......この街の冒険者ギルドの最高責任者、ギルドマスターだ。私の正体を知った上で、まだ戦うか? 大人しく投降すれば、私の力でお前達の罰を減刑することだって出来る」


 どうやら、あの黒い板はエディアがギルドマスターであることを証明する手帳のようなものだったようだ。彼女の言葉に兵士達の腕が止まり、ざわざわと話し声が聞こえてきた。


「うるせえっ! お前ら、あんな奴の甘言に惑わされるな! 攻撃をするぞ! ヒック」


 静まり返った酒場にアルベルトの叫び声が聞こえるが、それに呼応するものはいない。そして


「終わりです」


 兵士達の視線がエディアに集まったことでソフィアを見張るものが、居なくなり魔法で気配を消したソフィアがアルベルトの後ろに立って、彼の首を掴んだ。


「ん、ぐ、ぐぐっ、ごほっ......」


 ソフィアが魔法を使ったのだろう。アルベルトは白目を向いてその場で倒れた。


「ガキんちょ、ナイス! てめえらのボスはあの様だが、まだやるか?」


 サイズは嗜虐的な笑みを浮かべて、残った兵士たちに問う。すると、兵士の中の一人が剣を地面に置いて両手を上げた。周りの兵士達もそれを見て次々にそうする。


「降参を選んでくれたようだね。オルム君、この者達の処分は任せてくれ。僕が責任を持ってしかるべき機関に引き渡す。キミ達も事件の被害者として呼ばれることがあるだろうから、その心づもりでいて欲しい」


「分かった。ありがとうな」


「ギルドマスターとして、キミ達の友人として当然のことをしたまでだ。礼を言われるほどのことじゃない」


 クールに返答するエディアの頭をサイズが叩く。


「礼くらい、素直に受け取っておけって。どういたしまして」


「私からも、ありがとうございました」


「おうおう。ガキんちょは俺の命の恩人であり、ダチだからな。当たり前のことよ」


「ダチ、ですか」


 ソフィアが不思議そうにその言葉を呟く。


「おう、俺もエディアもお前のダチだ。オルムは......少し違うかもしれないが。な? 違うよな?」


 サイズが此方を見る。


「ああ、契約者でありパートナーだからな」


 俺はサイズから目を逸らして、そう答えた。


「交際一歩手前の関係の癖によく言うぜ」


「黙れ」


「契約者とは決してそのような関係ではありませんし、なりません」


「グホォッ!」


 今のは効いた。


「何故、契約者が叫ぶのですか......?」


「あ、あはは。オルム君、頑張って」


 苦笑するエディアの顔に腹が立った。

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