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25 鎌とわしゃわしゃ

追記 めっちゃ頭の悪い誤字してました。報告ありがとうございます。


 『グチャアッ』という耳障りな音が続けざまに森中に響く。俺は剣を強く握りながら必死に振るい、その横ではハエ叩きで虫を潰すように悪魔が鎌を振るっていた。そして二人の武器が狙うのはスライム。この世界で最も種類が多いと言われている魔物だ。


「契約者。ようやく、剣の振るい方がマシになってきましたね」


「お前のスパルタ教育のお蔭でな!」


 ソフィアと同居し、ソフィアに剣を習うようになってから大体1ヶ月が経った。ソフィアは定期的に休みの日を与えてくれるが、それでも彼女の特訓はハードだ。


「でも、腕は上がっているでしょう? こうしてスライムの中でもある程度の強さを誇るレッドスライムを倒せている訳ですから」


「まあな。ソフィアみたいにスライムのコアを破壊せずに力ずくで切り刻んで倒すのはまだ出来ないが」


 しかし、確かに俺の剣の腕は上がっている。それもたった1ヶ月でだ。


「この技を可能としているのはソフィアの大量の魔力とその魔力をエネルギーに変換する技術です。失礼ですが契約者が目標にするには少し無理があるかと。人間の中にもコアを潰さずにスライムを狩れる方はいるようですが、それはスライム狩りのプロだけのようですし」


「じゃあ、仕方ないな。諦めるか。それにしてもその鎌チート過ぎないか?」


 彼女の使用している鎌のチートさを目の当たりにしたのはソフィアと初めて模擬戦をした日だ。ソフィアは剣を使っていたので、当然俺は剣を相手にするときの立ち回りしていた。だが、彼女はその剣を一瞬で鎌に変えて俺の剣を弾き飛ばしてしまった。


「確かに鎌と剣を使い分けられるのは便利ですが......基本的にソフィアは魔法と素手で戦うので使い所が限られるのが難点です。一度契約者に譲ろうかとも考えたのですがこの鎌、500kgほど有るので契約者が使うのは難しいだろうと思って止めました。一応、聞きますが、欲しいですか?」


「絶対要らない」


 何だよ500kgって。俺何人分だよ。


「そうですか。ですが、これからもその剣で戦っていくのは厳しいでしょう。そろそろ新しい剣を購入してみてはいかがですか?」


「そうだな。サイズに良い武器屋を紹介して貰うか」


「はい。ソフィアは後二年程で契約者の元を去りますが、ソフィアによって鍛えられた契約者の力は契約者のものです。ソフィアがいる間に強くなっておいて下さい」


「ソフィアは優しいな」


 俺は心の底からそう思った。


「いえ、契約ですので」


「ソフィアは頼りになるな」


「いえ、契約ですので」


「ソフィアは可愛いな」


「いえ、契約......すみません。今、何と?」


「何でもない。スライム狩りも済んだし、そろそろ帰るぞ」


 俺は剣を鞘に納め、散らばったスライムのコアを皮袋に詰めると早々と帰り道の方へ歩いて行く。


「......分かりました。帰りましょう」


 ソフィアは頭のリボンを弄くりながら、文句ありげにそう言った。



 スライムのコアを換金するために冒険者ギルドへ行く途中、先程からずっとそわそわしていたソフィアが突然口を開いた。


「契約者は同性愛者ではないのですよね?」


 あまりに突拍子もないソフィアのその質問に俺は言葉を無くす。


「......いや、違うけど。何でそんなことを?」


「興味が有っただけです。他意はありません」


 あまりに突飛で唐突な質問に俺は動揺しながら返答した。


「そ、そうか」


「因みに契約者の好きな女性のタイプはどのようなタイプですか?」


「え?」


「ですから、好きな女性のタイプです。お答えください。契約者はソフィアの質問に答えなければいけません。そういう契約ですから」


 ソフィアは何時にも増して、早口で尚且つ事務的にそう述べた。


「いや、でも何で」


「お答えください」


「あ、はい」


 俺はかけてくる圧力に耐えかねてそう言ってしまった。


「好きなタイプ、って言われてもなあ......」


 俺は困ったように頭をかきむしる。何分、長い間兵士寮という男だけの空間で暮らしてきたので色恋の類いにはからっきし縁がない。俺はどんなタイプの女性が好きなのだろうか。そう考えたとき、俺の頭には一人の人物像が浮かび上がった。


「......こんな質問をしてしまってすみません。別に特に無いのであれば答える必要はありませんよ。ソフィアは少し、どうかしていたようです」


「真面目」


「は?」


 ソフィアは突然、俺の放った単語に首を傾げた。


「俺のタイプだよ。真面目で頼りになるけどかなり口下手で、何時もはクールだけど実はとても優しい......たまに人間臭さが垣間見える可愛い人が好きだな」


「契約者は理想が高いですね」


「ああ。だいぶ高い自覚は有る」


 俺はそう言うと、ソフィアを見ながら苦笑する。流石のソフィアでも今のには気付いてくれただろう。


「そんな方、中々居ないと思いますが見つけられるように頑張って下さい」


「おう。って、え?」


「どうかしましたか?」


「中々居ないって......」


 まさか、ソフィア。


「それはそうでしょう。契約者の理想に当てはまる方などあまり居ないと思いますよ。少なくともソフィアは見たことが有りません」


「えっと、それって遠回しに拒絶してる?」


 俺は恐る恐ると聞く。


「......? すみません。何のことか分かりかねます。ですが、基本的にソフィアが契約者を拒絶することはありませんよ?」


 やっぱり、ソフィアは全く気付いていないらしい。こ、この堅物......鈍いぞ! 予想通りで安心したというか、残念だったというか微妙な気持ちになった。


「そ、そうか。因みにソフィアの好きなタイプは?」


「ソフィアには恋愛感情というものが理解出来ません。よって、好きなタイプというものも有りません」


 ソフィアらしいな......。いや、でもソフィアが恋愛感情を理解出来なくて想い人が居ないというのは逆にチャンスなのでは?


「恋愛感情が理解出来ないってことは嫌悪感情も理解出来ないのか?」


「はい。当然、自らに害をなす存在は嫌いますが感情的に対象を憎むというのはソフィアには理解出来ません」


 でもソフィア、ジンとキールの時と言いアルベルトの時と言い挑発されて少し怒っていたような気がしたのだが。


「つまり、自分に直接的な害をなさない相手を嫌うことはしないと?」


「はい」


「言質は取ったぞ。じゃあ、お言葉に甘えて......」


 俺は邪な笑みを浮かべるとソフィアの不意をついて彼女の長い髪を手で触った。


「あ、あの、契約者?」


「あ~サラサラしてる。気持ちいい」


 俺は自分の手をソフィアの髪の奥まで突っ込み、わしゃわしゃとサラサラの髪を撫で回した。とても肌触りが良い。


「確かに髪を触ることくらいでは契約者のことを嫌ったりはしませんが......その、触り心地は悪くないですか?」


 どうやら、ソフィアも其処まで嫌がってはいないらしい。ソフィアには嫌われたくないので嫌がるようなら止めておこうと思ったのだが、この様子ならもう少し触らせてくれそうだ。


「最高。ふわふわでサラサラ」


「そんなことをして楽しいのですか?」


 ソフィアの髪を堪能する俺にソフィアは冷たい視線を送ってくる。実を言うと彼女のこの視線も嫌いではない。


「めっちゃ楽しいぞ。俺の悲願が達成された瞬間だ」


「そんなに契約者はソフィアの髪を触りたかったのですか?」


「ああ。今までずっとソフィアの髪、触り心地良さそうだなあ。って思ってた」


 と言っても、流石に突然『髪を触らしてくれ』なんて言うわけにもいかないので今までの俺は黙っていたのだが。今日、俺は吹っ切れた。これからはもっと積極的にアタックしていこうと思う。

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