19 異変の正体
ソフィアの容姿をぺーきんぐ様に書いて頂きました!
「体内の毒の性質を戻し、体全体に回復魔法を掛けました。如何ですか?」
「......凄い。体が軽くて気分も悪くない。ありがとう!」
ソフィアの持ち掛けた契約に、同意したバジリスクはすっかり回復した様子で笑っている。
「いえ、契約ですので」
「でもバジリスクの私を治療出来るって......ソフィア、ただの悪魔じゃないよね? 一体、何者?」
バジリスクの疑問は俺も前から感じていた。幾らソフィアが魔族で悪魔でも少々、強過ぎではないだろうか。
「俺も気になるな」
「......黙秘します」
「え?」
「それより、バジリスク。契約は守って下さいね?」
ソフィアはかなり強引に話を切ると、バジリスクの方を向いてそう言った。
「え、あ、うん。何で強い魔物達が入り口近くにまで移動してるんだって話だよね。と言っても多分もう、その異変は解決されたよ?」
「解決?」
俺が相槌を打つと、バジリスクは巨大な顔を頷かせて『うん』と言う。一々、動きが恐ろしいので困る。
「まず、そもそも何でこの森の魔物達は綺麗に住み分けをしているんだって話をするね。それは私が大きな原因なの」
「と言うと?」
「この森の魔物達は皆、私の放つ強い魔力を求めているの。魔力は魔物のエネルギーの源だからね。で、当然だけど私に近付けば得られる魔力は多くなる。もう分かったんじゃない?」
「魔物達は必然的により多くの魔力を入手出来るバジリスクの住んでいる奥地へと向かう。......だが、そうすると集まった魔物達で争いになる。そんな風に争った結果強い魔物がより多くの魔力を得られる奥地に住み、強い魔物に追い払われた弱い魔物は得られる魔力の少ない入り口付近に住むことになった。そういうことか?」
「お、正解。流石、悪魔の契約者。頭良いんだね。木の色は魔物達が勝手に境界線の目印に使ってたみたい」
ソフィアとの契約に学力は関係無かったし、俺は学校も行っていないのだが。まあ、わざわざ言うこともないか。
「成る程......つまり、バジリスク。貴方が体調を崩していたせいで魔力が弱まり森の奥地にいる必要の無くなった魔物達が溢れだしていたと?」
「そうそう。でも、ソフィアのお陰で魔力は戻ったから森もまた元に戻ると思うよ。本当に感謝してる。ありがとね」
「......いえ、契約ですので」
「何回それ言うんだよ」
『契約ですので』を乱用し過ぎるあまり、俺の目にはソフィアがただのツンデレにしか見えなくなってきた。
「契約者、それではそろそろ帰りましょう。帰宅時間を考えると今から帰っても宿に着くのは恐らく夜でしょうし」
「ん、分かった。それじゃあなバジリスク」
「あ、待って!」
俺が帰宅するために来た道の方を向くと、後ろからバジリスクの大きな声が聞こえた。
「私の名前はミラ。弐の勇者に付けてもらった名前なの。また遊びに来てね! 二人とも、もう私の友達だから!」
そんなフレンドリーなバジリスク、ミラに見送られて俺達の暗鬱の森調査は幕を閉じた。波瀾万丈、とは今日のような日を表す言葉なのだろう。本当に波瀾万丈な1日だった。
「あ、そうだ。バジリスクとバイコーンに一つ頼み事が......」
☆
暗鬱の森の調査を終えて、クエスト達成をギルドの受付に報告した俺達は何故か、慌てた様子の受付の男性に机と椅子しかない個室に案内された。
「......ヤバイな」
「そうですね」
本来調査系のクエストは調査報告書と呼ばれる紙に調査の結果を記入して提出すればそれで終わりの筈なのだ。ギルド側から報告書について質問があったとしても通常呼び出されるのは数日後だろう。提出して直ぐに個室に案内とはどう考えても異常だ。
「ギルドマスター、此方です」
「うん。言わなくても知ってる」
「言った方が秘書っぽいじゃないですか」
「あれ、サーラってそんなキャラだった?」
「ギルドマスターが仕事を抜け出してばかりなので私は酷く疲弊してるんです。だからそろそろ壊れても良いですよね?」
「頼むから止めてくれ......。僕も当分は外出は控えるし」
個室の扉の外からは、そんな聞き覚えのある二人組の声が聞こえてきた。ギルドマスターのエディア・エイベルにその秘書のサーラ・ミレイユだ。
「やあ、昨日ぶりだね。二人とも。待たせてすまない」
微笑を浮かべながらエディアはそう言うと席に座った。サーラも礼をしてそれに続く。銀髪で短髪のエディアに金髪で長髪のサーラ。二人の容姿はとても対称的だ。
「いえ、そんなことは無いですよ。俺達も別に急いで無いですし。な?」
「はい。これからの予定は特に有りません」
「そうか。ありがとう。......それにしてもオルム君にソフィア君。出来ることなら僕にはタメ口で話してくれないかな? 僕の周りで敬語を使うのはサーラくらいのモノだからサーラ以外の者からの敬語には慣れていないんだ。ギルドの従業員ともあまり関わらないしね。それに僕自身、敬われる程の者ではない」
ギルドマスターで、俺より歳上なのだから、俺からすればエディアに敬語を使うのは当たり前なのだが。
「そんなことは無いと思いますけど。まあ、分かった。俺は良いよ」
別に俺だってどうしてもエディアに敬語を使いたい訳ではない。エディアが慣れていないから止めてくれ、というのなら却下することも無いだろう。しかし、問題はソフィアだ。ソフィアのタメ口など聞いたことがない。
「常に敬語を使うように教育されてきたため、ギルドマスターと同様にソフィアもタメ口を使うことに『慣れていない』のです。すみません」
ソフィアはタナエル家という悪魔の長の家臣の一族、オロバッサ家の者だ。人間で例えるなら、貴族の令嬢のようなもの。綺麗な言葉使いをするように教育されたのだろう。
「そういうことなら僕も無理強いはしない。ギルドマスターなんて職に就いときながら何を言うのか、って思われるかもしれないけど僕は元々人に命令をしたり指示したりするのは好きじゃないんだ.....と、話が脱線してしまったね。そろそろ本題に入ろうか」
「本題って、暗鬱の森の調査のことか?」
「ああ、それも有るね。君達に提出して貰った調査報告書と君達が討伐の証明として提出してくれた魔物の心臓。目を疑うようなものばかりだったよ。是非とも詳しく教えて欲しい。それに僕も今回のクエストの報酬は幾ら出そうか決めかねているんだ。その辺の話もしよう」
「それも有る、ということは別の話も有るのでしょうか?」
ソフィアの質問にエディアはニコッ、と不適な笑みを浮かべて頷いた。人を不安にさせる不思議な笑いだ。
「面倒臭い建前は省いて結論から言おう。君達のメダルを銀製にしたい」
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