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14 暗鬱の森

ブ、ク、マが増えた!!!!! ありがとうごさいますっ! これからもよろしくお願いします!


「ん~クエスト? そうだなあ......手っ取り早く稼げるのはやっぱり高難易度クエストなんだけど兄ちゃんも姉ちゃんもメダルは鉄でしょ? 鉄メダルの冒険者が受けられる高難易度クエストもないわけじゃないんだけど、やっぱちょい危ないから妥当なのは薬草集めのクエストか普通の討伐クエストかな~?」


 翌日、俺達は冒険者ギルドでクエスト掲示板でクエストを探していたのだが、当然初心者の俺達がクエストの良し悪しなど分かる筈もない。なので俺達は通りかかった冒険者にアドハイスをしてもらっていた。


「成る程な......やっぱり、鉄が受けられるクエストは少ないのか」


「つっても冒険者の殆どは鉄メダルな訳だし、そんなに不便ではないよ。実際に俺も鉄メダルだけど、この通りだし」


 親切な冒険者はそう言うと、白い歯を見せて笑って見せた。


「ありがとう。パートナーが優秀だから、難易度高めの奴を探してみるよ」


「おいおい、パートナーってそっちのちっちゃい姉ちゃんでしょ? その体じゃ、オーク程度が無難......ちょい待ち」


「どうかしたか?」


「黒い服の13歳くらいの少女と覇気が無いみすぼらしい姿の男。......兄ちゃん達ってもしかして、昨日ジンとキールを倒した新人冒険者?」


 誰が覇気が無くてみすぼらしい男だ。


「あの、契約者?」


 質問に答えず黙っている俺を不審がってソフィアが俺にそう言ってきた。


「ああ、すまん。その二人組の噂を流した奴をしばきたいと思っただけだ」


 確かに俺はイキイキとはしていない。確かに俺は長年同じ服を着ているため服はボロボロになっている。しかし、覇気が無くみすぼらしいは流石に言い過ぎではないだろうか。


「あ、兄ちゃん結構傷付いてる。ってことは、マジもんっ!?」


「......ソフィア・オロバッサです。確かにそのお二方を倒したのは事実ですが先に攻撃を仕掛けてきたのはあちらです。お間違えの無いように」


「俺はオルム・パングマンだ。色々あって鉄製冒険者からスタートになった」


 俺達が自己紹介をすると、冒険者は黙って手を叩いた。


「へぇ~仮にも鉄製メダルの冒険者なのにクエストのことを知らないなんておかしいと思ったけどそういうことだったのか。ジンとキールを簡単に倒せるくらいの人なら多分、どんな鉄級のクエストでも受けれるから安心して良いよ。最近の高難易度クエストならそうだなあ~。これとか?」


 冒険者が指差したクエストは『暗鬱の森の調査』というものだった。この地名には見覚えがある。

 

「契約者、暗鬱の森と言うのは?」


「この辺りでは有名なヤバい森のこと。強力な魔物が大量に住み着いてて年に一回くらいの頻度でその魔物が森の外に溢れるから、それを多くの冒険者で討伐するんだ。討伐の後は珍しい魔物の肉が市場に出回るからこの街の人は皆、楽しみにしてる」

 

 それは一種の祭りのようなもので、暗鬱の森から溢れた魔物の討伐の後は何時もより街が活気付くのだ。


「そうそう。んで、今回はその暗鬱の森の定期的に行われてる調査ってワケ。出てくる魔物を狩りながら森におかしなところが無いか探索するんだ」


 俺の言葉に冒険者が続く。


「......その暗鬱の森は強力な魔物が多く生息しているとのことですがそのような森の調査を鉄メダルの冒険者にさせて良いのですか?」


 クエストの内容を解説する冒険者にソフィアがそんな質問をした。俺は冒険者のことは詳しくないが、このことについての答えは有名なため知っていた。恐らく、この街の住民の殆どが知っていることだろう。


「あーうん。ちっちゃい姉ちゃん、この街に来たばかりみたいだしそうなるよね~。暗鬱の森ってさあ、奥に行くにつれて木の色が変わるのよ。入り口の方の色から順に白、茶色、焦げ茶色、黒ってね。それに合わせて出てくる魔物の強さも弱い普通、強い、鬼強いって変わるんだ。ま、完璧に住み分けてる訳じゃないけど」

 

 冒険者はそこまで言うと、苦い顔をした。


「それで、木が白いところは鉄製冒険者でも結構簡単に探索出来るんだ。勿論、鉄製は白のところ以外探索したら駄目って訳じゃない。行けると思ったら、自己責任だけど奥まで行っても良いんだ。俺は調子に乗って奥まで行き過ぎて大怪我したけど」


「成る程。教えて頂き、ありがとうございます。当然、奥まで調査すればするほど報酬は高くなるのですよね?」


「まーね。後、魔物を倒したら心臓を抜き取って持っとくと良いよ。持って帰れば魔物を狩ってきた証明になるから。心臓の無い魔物は特徴的な部位を持って帰れば倒したことにしてくれると思うよー」


 冒険者は軽い口調でそう言うと『じゃあ、俺もクエストが有るから。アディオス!』と言い残して仲間の元へ合流していった。


「親切な冒険者だったな」


「ええ。それで契約者、暗鬱の森の調査に行くのですか?」


「.......どうしようか」


 確かに暗鬱の森の調査は高い報酬が期待出来るだろう。何故なら調査系のクエストをギルドに依頼するのは基本的に国や領主だからだ。しかし、はっきり言って俺は別に今すぐ金が欲しい訳ではない。危険な目に合うくらいなら安全な採取クエストやオーク狩りの方が良い気がする。


「契約者は家が欲しいのですよね?」


「......まあな」


「鉄メダルの冒険者が受けられるクエストでこれが一番高難易度なのだとすれば当然、報酬も期待出来るでしょう。また、最奥部まで調査すれば鉄級から銀級へのランクアップも望めます。ソフィアとしてはこのクエスト、受けるべきかと」


「ちょ、ちょっと待て。ソフィア? 今、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたぞ? 暗鬱の森の何処まで調査するって?」


 俺が顔に冷や汗を書きながら聞くと、ソフィアは首を傾げた。


「最奥部、と言いましたが。何か問題でも?」


「あのな.......暗鬱の森の最奥部は未だにきちんと調査されてないんだ。興味本位で木が黒くなってるエリアに足を踏み入れた銀級冒険者の情報によると最奥部の入り口付近ですら見たことのない魔物が(ひしめ)めいてたらしいし。それこそ、黒牙猪みたいなのがスライム感覚でぼこぼこと現れるぞ?」


 そもそも最奥部の入り口付近までたどり着けた冒険者さえその銀級冒険者以外にいないらしい。それは決してこの街の冒険者が弱い訳ではない。暗鬱の森の魔物が強すぎるのだ。


「黒牙猪くらいの魔物であれば一撃で倒してみせます。どうでしょうか?」


「いやまあ、昨日のソフィアを見てる限り、確かにそれくらいやってくれそうなんだけど......」


 俺は腕を組むと、どうしたものかと悩んだ。そんな俺の様子を見ていたソフィアが何処か憂いを秘めた目で此方に視線を送ってきた。


「それほどまでにソフィアの戦闘能力が信頼出来ませんか? 何があっても契約者だけは守り抜くつもりなのですが......」


「いやいや勿論、信頼はしてるんだけどな? でも万が一、ソフィアが俺を庇って怪我でもしたらと思うと中々、決心がつかなくて」


 ソフィアは何があっても契約を果たすために俺を庇おうとするだろう。そんなことがあれば、俺は申し訳なさすぎて何をしていいか分からない。


「ソフィアを、心配してくれているのですか?」


「当たり前だろ。パートナーなんだから。それに、ソフィアの肌って俺と違って綺麗だから傷とか付いたら目立つだろうし」


 俺がそんな当然の考えをソフィアに告げると、何故かソフィアは不思議そうな表情で俺を見つめてきた。


「......そうですか」


「うん。だから」


 やめておこう、そう俺が言おうとするとソフィアは口を開いた。


「魔族であるソフィアをあまり過小評価しないで下さい。契約者を守りながらソフィア自身も傷付かずに暗黙の森の最奥部まで到達してみせます。それにいざとなれば回復魔法もあります。ソフィアを信じては頂けませんか?」


 ソフィアの表情は何時もと変わらない無表情なモノだった。瞳に熱意が表れていたりもしない。しかし、その言葉を聞いた俺は無性にソフィアが「頼もしく感じた。


「......分かった。行くか」


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