花火大会 後編② 【前半康貴視点】愛沙の結論【後半愛沙視点】
「やっぱりそれなりに人はいるな」
「そうね……」
学校に来る道はやはりというべきか、ほとんどみんな男女のペアになっていてすでに気まずい雰囲気になっていた。
「知り合いは……ありがたいことにいなそうだよな」
「そうね。よく名前がでるメンバーはみんな……」
暁人は遊び人。隼人はモテるがどうも相手を作る気がないのかなんなのかフリーだ。真も隼人ほどではなくても人気を集めているが、こちらも相手はいない様子だった。
「女子もか?」
「うん……」
なんだかんだで忙しいメンバーだからな。愛沙の話によると、それどころじゃないらしい。
そんな微妙にぎこちない会話を続けて、ようやく学校までたどり着いた。
「……いくか」
「うん……」
もはや手くらい繋いでいないと変に目立つほど周囲はいわゆるリア充だらけだった。幸い愛沙もそれを感じ取ったのか、差し出した手をすぐに取ってくれた。
いつもの学校でも、夜に浴衣で来ると全然違って見える。
「やっぱりカップルしかいないのね」
屋上に上り、改めて周りを見渡す。愛沙の言葉通り周りはカップルだらけで、むしろくっついてない俺たちの方が目立つくらいだった。
「あっ! 見て!」
「おー。ちょうどか」
──ドン
一発目の花火が打ち上がり、周囲から歓声が上がったところだった。
「綺麗……」
そう言って空を見上げる愛沙に思わず見惚れた自分がいた。
愛沙の方が綺麗だと、バカみたいな恥ずかしい台詞が頭に浮かんでしまい、かき消すために必死に頭を振って愛沙に不思議がられてしまった。
二人で会話もなく夜空に煌く花火に見入る。たまに盗み見るように愛沙をちらちら見てしまったが、そのくらい今日の愛沙は魅力的だった。
◇愛沙視点
見慣れた学校の景色と、改めて浴衣姿の康貴を見て思う。
私はやっぱり康貴が好き。
康貴と一緒に登校して、康貴と一緒に休み時間を過ごしたいし、康貴と一緒にお昼ご飯を食べたい。康貴が喜んでくれるなら、毎日お弁当も作りたい。
──ドン
花火は絶えることなく打ち上がり続けている。
「綺麗だな」
康貴がなぜかこちらを向いて言うから、ちょっと変に意識させられて顔が熱い。
「ずっとこうしてたい……」
花火はもう終盤戦。大きくて派手な花火がひしめき合うように打ち上げられている。
まなみも一緒になってはしゃいで、三人で出かけたり、二人で……その……デート、したり。そうやっていつまでだって一緒にいたい。
そう思った時、自然と口をついて言葉が紡がれていた。
「………………好き」
──ドン! ドドン!
花火に紛れこませて呟いた言葉は、当然康貴に届くことなくかき消される。
でもこれでいい。
「愛沙? なんか言ったか?」
良かった。ちゃんと聞こえていない。
「ふふ。何も」
「そうか……」
戸惑った顔で花火の余韻が残る夜空に目を移す康貴。
ここで想いを打ち明けたら、多分だけど、康貴は私を受け入れてくれるだろう。うん。そのくらいの自信はある。そういう雰囲気だとは、思う。多分。きっと。
あれ? 大丈夫かな? 私だけ?
いやいや、じゃなきゃこんなところ、一緒に来なかったと思う。
だけど──
「今のままだとダメ……」
康貴に聞こえないように小さく呟く。
まず第一に、このまま付き合って長続きする未来が見えない。
今はいい。雰囲気にも後押しされてる。これだけ周りがカップルだらけなら、私たちじゃなくても嫌でも意識はする。だから、今はうまくいく。
でも、多分、その先……例えば明日から、私たちはぎこちないメッセージを送り合ってしまうと思う。そこからなんとなくまた距離が離れて、気づいたら……。
「それだけは、いやだ……」
仮に私が、もし、その先一緒になれないんだとしても、康貴とまた話もできない関係には、なりたくなかった。
「告白は、康貴を完全にその気にさせてから……!」
この夏休み、ずっとレールを敷いてくれたのはまなみだ。私ががんばれたのは今日、ここに誘っただけ。それですら精一杯だったんだ。
はっきり言って、まなみの力なしで二人でコミュニケーションを取るのは、まだ無理だと思う。恨むのはこの十数年、こんなに近くにいたのに話もせずに避けてきた自分だ。
「付き合ってぎこちなくないだけの関係値を、まなみなしでつくる……!」
だから、いまはこれで満足。なんか本当の意味で、吹っ切れた気がした。
康貴は何を考えてるのかわからない表情で空を見上げている。
はっきり口にしたせいだろうか。夜空を見上げる康貴の横顔は、なぜか今までで一番かっこよくて、自分の今の気持ちを、いやでも改めて意識させられてしまっていた。
次話! 二章完結!
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