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幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら  作者: すかいふぁーむ
疎遠だった幼馴染が怖い

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合宿 三日目 前編

「そういやまなみ、宿題は終わったのか?」

「んー、もうちょい! でも今日は頑張った!」


 そう言って宿題を広げて今日の戦果を報告するまなみ。確かにかなり頑張っていた。

 この分だと明日には終わりそうだ。


「よく頑張った!」

「えへへー」


 ねだるように頭を差し出してきたので撫でてやると嬉しそうに笑った。


「それより康貴にぃはどうだったの! デート! 楽しかった?」

「そうだな。楽しかったよ、ありがと」

「えへへー。お姉ちゃんも楽しかったみたいだし、頑張ったかいがありますな」


 ほんとにまなみには感謝しないとだ。結局今日、愛沙も俺も楽しめたのはほとんどまなみのおかげだからな。


「いつもありがとな」


 改めて撫でながらお礼を言うとまなみがうつむいた。


「どうした?」

「うぅ……改まって言われるのは、なんか、ちょっとこう……」


 なるほど照れたのか。


「可愛いなぁ。まなみは」

「うぅー!」

「よしよし。いつも頑張ってるな」

「もうっ! 遊んでるでしょ! 康にぃ!」


 ついに耐えきれなくなったようで手を払いのけるように顔を上げた。

 赤くなっていてちょっと涙目で可愛かった。


「もうっ! そういうのはお姉ちゃんにやってあげて!」

「ええ……愛沙にこんなんやったら俺、次の日五体満足でいられる気がしない……」

「お姉ちゃんを何だと思ってるの……」


 いくら仲良くなったかなと思っていてもこんな距離感で近づこうものならまたあの凍てつく目線を送られる日々に逆戻りではないだろうか。


「今度やってみたらいいよ」

「勘弁してくれ……」


 まなみは俺をどうしたいんだ。仕返しだろうか。


「まぁまぁそれよりっ!」

「どうした?」

「明日で合宿は終わっちゃうし私はしばらく部活のお手伝いにでかけちゃうんだけど」

「そうだな」


 まなみの部屋のカレンダーを見ると、もう夏休み明けまでびっしり助っ人の予定が入っていた。


「お姉ちゃんはそんなに忙しくないみたいです」

「そうなのか?」


 秋津たちとどっか行ったりするのかと思っていた。


「私を除いて今一番家族に近いのは康にぃだよね?」

「それは……そうかな?」


 家族に近い。なんとなくしっくりくる愛沙との関係値な気がする。


「よろしい。じゃあお姉ちゃんに寂しい思いさせちゃだめだよ?」

「どういうことだ」

「ほら、毎日何気ないことでメッセージしたり、通話したり……どうせ康貴にぃ、なんも送る気なかったでしょ!」


 たまに愛沙からメッセージは来るようになったけど、特段用事がないのに送るためのものという認識がない。


「それ、迷惑じゃないか……?」

「世の中の仲のいい男女はみんなそうなんです!」

「そうなのか……? まなみも?」

「私のことはいいのっ!」

「おう……」


 説得力がない。


「とにかく! ちょこちょこ連絡してあげてね!」

「どんなこと連絡すればいいんだ……」

「そうだなー……あ、私の活躍とか?」

「それは愛沙から送ってくるもんじゃないか?」

「あ……」


 結局何をすればいいかよくわからなかったが、とにかく夏休み後半、定期的に連絡するようにとだけ厳命を受けた。

 まぁまなみのやることだ。きっと愛沙もなにか言われているだろうから、あわせてもいいかもしれない。


 あわよくばもう一度くらい、映画に行くのも、もしタイミングがあればなと考えるようになっていた。



 ◇


「おわったー!!!」

「よく頑張ったなぁ」

「えへへー! もっと褒めて!」


 昼過ぎには残りの宿題をしっかり終わらせたまなみがいた。明日から予定のあるまなみは凄まじい集中力を見せていたため、横に立っていても全くやることがなかった。俺は横で愛沙に借りた小説を読んでいたくらいだ。


「でも思ったより早かったな」

「私にとっては今日が夏休み最後だからね! お出かけしよ! 康にぃ!」

「あー、いいな。どっかいくか」

「いいのっ⁉」


 せっかく早い時間に終わったんだ。そのくらいはいいだろう。

 なんならこのなにもしてなかったのにもらったバイト代はここに還元するべきな気持ちすらある。


「わーい! お姉ちゃーん!」


 部屋を飛び出すまなみ。

 三人で出かけることになりそうだった。


 ◇


「……」

「……」

「えへへー」


 バス停に向かう間、なぜか俺と愛沙の間に入って手を取ってきたまなみ。

 一方俺と愛沙はどことなくぎこちない感じになっていた。昨日の反動みたいなものかもしれない。


「で、どこに行くかは決まってるの?」

「んー、お姉ちゃんたち映画行ったばっかりだからなー」


 特別何か行き先は決まってないがとりあえずどこに行くかと駅に出る必要があるし、駅に行けばわりとなんでもあるということで行き当たりばったり感がすごいが駅前に出ることにした。


「康貴はどこかいきたいところはないの?」


 愛沙がこちらを見ずに声をかけてくる。


「ん? んー、今日はまなみのご褒美みたいなもんだから、まなみの行きたいところがいいけど」

「そうね」


 そう思って俺も愛沙も動きやすい着替えまで持ってきていた。まなみの行きたい場所は基本的に身体を動かす場所だ。


「ちょっと電車乗っても大丈夫?」

「ああ、別にいいぞ」


 ただまなみから出てきたのは意外な場所だった。


「あのね、水族館いきたい!」


 一瞬で頭に浮かんだのは暗がりですごい勢いで迷子になるまなみとそれを探す俺と愛沙の図だった。

 まなみは前科があるからな……。


「いいわね、久しぶりだし。迷子にならないでね?」

「お姉ちゃん! もう私だって大きくなってるよ! そうだよね⁉ 康にぃ⁉」

「ごめん。俺も真っ先にそれを思い出した」

「もー!」


 ぽこぽこ腕に抗議の意を示すまなみ。今日はちゃんと加減ができていた。


「いまは携帯もあるからすぐ連絡とれるでしょ!」

「そうね。流石にもうまなみも一人で夢中になって消えたりしないわよね……」

「そうだな。さすがにペンギンの散歩について行っていなくなったりしないよな」

「もー!!!」


 二回目の抗議はわりと力が込められていた。


 ◇


「まじか……」

「思ったより早かったわね……」


 到着、発券、入場、そこから5分ともたず、まなみは俺達の前から姿を消した。


「まぁ……あの子が本気になったら私達じゃ追いつけないわよね……」

「それはそうなんだけど」


 最悪の場合はイルカショーのタイミングで合流、という話はしておいたのでそれは良かった。

 館内は電波が繋がりづらく、頼みの携帯も役に立たずだ。


「どうするかな……」

「康貴は、私と二人じゃいや?」

「ん? そんなわけないだろ」

「そっか」


 むしろ二人でもなんでも歓迎ではあるが、今回はちょっと覚悟と準備が足りていないだけだ。


「じゃあ、せっかくならイルカショーまでは……」

「そうだな」


 どの道それしかない。せっかく入ったのだから楽しんだほうがいい。イルカショー会場でいつまでも待つ必要はないだろう。


「まなみは一人でも楽しめる子だから……」

「たしかに」


 一人で小さい子に交じってはしゃぐまなみの姿は容易に想像できた。


「いこっか」

「ああ」


 自然と、本当に違和感なく愛沙が手をこちらへ伸ばしてきた。


「……私達まではぐれたら、ね?」


 斜め下を見ながら、それでも手だけはこちらに伸ばしたまま愛沙が言う。


「そう……だな」


 手を取って二人、館内をあるき始める。

 薄暗い室内をまずはどこかで見たことがあるようなないようなといった熱帯魚たちのコーナーをゆっくり歩いていく。

 すでにまなみを探すことは諦めていた。


「康貴、これ昔……」

「あー、懐かしい」


 エンゼルフィッシュ。

 親にねだって一度だけ飼っていた熱帯魚。覚えているのは水換えが大変だったことと、自分が産んだ卵をバクバク食ってた衝撃くらいだが、あの頃は愛沙もよくうちにきていたから玄関のこいつを可愛がっていた。


「また飼う……?」

「いやぁ、あれは世話が大変すぎる……」

「きれいなんだけどね」

「そうだな」


 改めて考えると水族館のこの量を世話している手間、ものすごいだろうな……。

 そのまま進んでいくとなぜか草木が生い茂る見るからにジャングル感のあるコーナーが現れる。


「康貴、こういうの、好きでしょ?」


 バレている。いや男ならなんとなく、こういうのってテンション上がるもんじゃないんだろうか?

 淡水コーナーにはでかい魚がうじゃうじゃ混泳していてそれだけでテンションがあがるというのに、探せば木の上にイグアナまでいるというのだからついつい探してしまう。


「まなみもこういうところにいそうね」

「なんかそのへんの木の上にいても違和感がなさそう」

「流石にそれは……ないとも言い切れないのが怖いわね」


 いやでもイグアナを探しているまなみも、ジャングルに紛れるまなみも不思議とすんなりイメージできてしまうのが怖いところだった。


 そんな他愛ない話をしながら、なんだかんだ二人でも話せるようになったことを確認しながら水族館を楽しんだ。

略称は「おさかて」


WEB版はサブタイを含めて「おさこわ」と読んでいましたがサブタイトルが巻ごとに変わるので書籍版は「おさかて」になります

よろしくおねがいしますー!

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― 新着の感想 ―
[良い点] まなみPの辣腕が半端ない 二人は気付いてないだろうな
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