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幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら  作者: すかいふぁーむ
疎遠だった幼馴染が怖い
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幼馴染の妹の家庭教師

「第一回! 康にぃの勉強大会〜! いえーい!」

「勉強するのはお前だからな?」


 わかっているのだろうか。

 目の前にいるやたらテンションの高い生き物を見つめて心のなかで問いかける。本当にこいつ、愛沙の妹なんだろうか。

 いやまあ俺にとっても妹みたいに接してきたし、まなみもまなみで俺のことは兄のように慕っている……と思う。

 むしろ普通の兄妹より仲がいい、というか……スキンシップが激しい気もする。その癖がこの年齢になっても抜けていないことはさっき実証されていた。


「久しぶりだねぇ! ほんと! お姉ちゃんは学校で会えるからいいけど、私は寂しかったんだよ?」


 上目遣いでみつめるまなみも、流石に愛沙の妹だけあって美少女だ。同級生相手ならイチコロだと思う。

 俺はもうなんか、慣れたというかまなみをそういう目では見られなくなっているので助かっているが、ここまで成長されてしまうとそろそろ危うい気もしてくる。愛沙の鬼の形相を思えば絶対に手を出そうなどとは思わないわけだが。


「せっかく一緒の学校入ったのにさぁ、全然お姉ちゃんも康貴にぃも会えないし、勉強はついていけないし……」


 しょぼんとうなだれるまなみの頭を撫でる。


「まぁ、そもそも入れたのが奇跡だったからなぁ」


 姉に似て顔立ちはいいものの、勉強は姉に似ずだめだった。

 その分運動は愛沙より得意で、歳上の男である俺と張り合える運動神経の持ち主だったりもする。外で遊ぶ時は必然的に愛沙よりまなみといる時間が長くなったのも、まなみが俺に懐いてくるきっかけになったかもしれない。


 勉強も平均よりはできていたんだが、全員がある程度できるところに進学したわけだ。苦しくもなるだろう。


「まぁでも、康にぃが来てくれたからダイジョブ!」

「姉に習うって考えはなかったのか」

「もちろん最初はお姉ちゃんに頼んだんだよ?」

「え? そうなのか」


 だったらそれで解決しそうなものなのに。

 愛沙は学年でもトップクラスの成績。対して俺は中の上といったところだ。絶対愛沙のほうが適任だと思う。


「お姉ちゃんはねぇ、身内にすごく厳しいから……」


 遠い目をするまなみ。

 まあなんとなくわかるし、身内同士だとやりづらさがあるんだろうな。


「お姉ちゃんもお姉ちゃんでなんか、私相手だとムキになっちゃうって言ってた。それでお母さんが康貴にぃの名前を出してくれて、お姉ちゃんもそれならって言って決まったんだよ?」

「ん?」


 愛沙が良いって言ったのか?


「それより康貴にぃ! ちゃんとお姉ちゃんの相手してあげてる?」


 俺の疑問は落ち着きのないまなみによって解消されることなく流されていった。


「愛沙の相手……?」

「なーんかさ、せっかく同じクラスになったっていうのに全然康貴にぃの話してくれないし」


 ああ……。まなみの中ではいつまでも俺たちは仲のいい幼馴染なのか。


「最近はあんまり話してないからな」

「だめだよ! そのせいでお姉ちゃん、いつも機嫌悪いんだから!」


 それは別の理由だと思うけどな……。変な男に絡まれて愚痴ってるのはクラスでもちょこちょこ見ている。

 それこそ俺から声でもかけようものなら、クラス中に身の程知らずのバカが勘違いして声をかけてきたと噂されてしまうに違いない。


「とにかく! 康貴にぃはお姉ちゃんの相手をする義務があります! 結婚まで約束してたんだし!」

「懐かしいなぁ」


 よくある幼馴染の例にもれず、そんなこともしていた。ただまぁ、今の状況を考えればそんなもの意識しているのはまなみだけだろう。


「ま、そろそろやろう」


 これ以上掘り下げるとまなみに真実を伝えてショックを与える可能性もある。

 いずれ伝わることではあると思うけど、先延ばしにできるならそうしておきたかった。


「もー。あんまり真剣に聞いてないなー? とにかく! もっとお姉ちゃんを構ってあげて!」

「はいよ。まなみが勉強頑張ったらな」

「あ! 言ったなー? 私はやればできるんだからね!」

「知ってるよ」


 俺たちの後を追いかけるために必死に勉強してきたことも、それがどれだけ大変だったかもな。


「むふー。じゃあよろしい」

「なんでお前が偉そうなんだ」

「えへへ」


 軽くこづいてやると楽しそうに笑う。昔からこんな感じだな、まなみは。


「やるぞ。まずは数学だな?」

「よろしくおねがいしまーす!」


 アルバイトということでお金までもらっているわけだから、気合を入れてやろう。

 頑張り屋のこの子がしっかり報われてくれるように。


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