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幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら  作者: すかいふぁーむ
疎遠だった幼馴染が怖い

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まなみの作戦【愛沙視点】

「良かったわね」


 康貴が帰ってからも、まなみは終始嬉しそうにしていた。


「えへへ……うん。でも、ほんとに良いのかなぁ」


 まなみはきっと本当に悔しかったはずだ。たくさん頑張ったのを見てきた私としては、この子がこのまま報われないのは見ていられなかった。

 多分だけど、それは康貴も同じだったんだと思う。


「頑張った分は報われるべきよ」

「でもね、康貴にぃ、私が泣いてたの見てすごい励ましてくれて……それだけでも十分たくさんしてもらっちゃったのに……」

「たくさん……?」


 康貴、家庭教師の時間を使って何をしているのかしら……?


「うん。いつもみたいに頭もポンポンしてくれたし、今日はぎゅってしてくれて」

「ぎゅっ?」

「ん……後ろから、ぎゅって」

「後ろからぎゅっ⁉」


 そんなの……。羨ましすぎる……。

 まなみも恍惚とした表情で余韻に浸ってる。ずるい……。


「だからいいのかなって……」

「そうね……ちょっと康貴は甘いかもしれないけど、今回はいいでしょ。そのくらいまなみは頑張ったわ」

「えへへ。お姉ちゃんに褒めてもらえたー!」


 多少嫉妬はしてしまうが、今回は仕方ないと思おう。

 羨ましいけど。

 羨ましいけどっ!


「で、お姉ちゃんは荷物持ち頼んでたけど、どこに行くの?」

「そうね……適当にふらふらしようかなって」

「適当に……大丈夫?」


 大丈夫? 何を言ってるのかしら。


「あの……お姉ちゃん。今日はだいぶ喋れたとは思うけど、二人きりになったらまた緊張して冷たくなっちゃったり、しない?」

「う……」


 否定しきれない。そうだ。荷物持ち……言葉を濁したけどこれは間違いなくデート……。

 あれ? そう考えると今から緊張してきた。


「今からそれじゃきっと、ろくに何も出来ずに帰ってくることになっちゃうよ……」


 まなみが若干呆れながら言うが、その予想はおそらく正しい。

 でもせっかく出掛けるなら楽しくしたい。どうすれば……。


「目的を決めてさ。しかも次も一緒に遊びに行けたりしたら、どう?」

「それは……いいわね。もちろん」

「ふふ。じゃあ私に一つ、作戦があります!」

「作戦?」


 まなみの作戦は頼りになる。今回の勝負だってまなみのアイデアだ。しっかり聞こう。


 そもそもやっぱり、康貴と二人になってちゃんと喋れる自信はない。

 でもせっかくのデートだ。嫌な思い出にはしたくない……。そうなったらもう、康貴とはそれっきりってことも……ありうるかもしれない。


「お姉ちゃん? 大丈夫?」

「ええ……」


 まなみの作戦……。しっかり聞かなくちゃ。


「お姉ちゃん多分、水着のサイズ合わなくなってるでしょ?」

「へ?」

「あれ? 私が見てる限り前の年のは入らないよね?」

「そうね……」


 なんでバレてるの。


「そりゃだって……毎日見てるから……おっぱい大きくなってるもんね」


 面と向かって言われると恥ずかしい。

 一方まなみは「私も同じ血が流れてるはずなのに……」と自分で胸を揉み始めた。


「それ、間違っても康貴の前でしちゃダメよ」

「わかってるよー!」


 そう言いながらも続けるまなみ。こういうことに関して言えば、まなみの信頼は全く無い。まあ、康貴の前でやってもあっちもあっちでどうなのかわからないけど……。こないだも私の着替えを見て特に反応を示さなかったし……。


「お姉ちゃん? 大丈夫ー?」

「はっ。ええ……大丈夫よ」


 意識を戻す。今はまなみの話に集中しなきゃ。


「で? 水着がどうかしたの?」

「康貴にぃと出掛けるとき、買っておいでよ」

「え……?」


 水着を?


「水着。せっかくなら選んでもらって、試着までしてあげたら康貴にぃもドキドキすること間違いなし!」

「ドキドキ……? してくれるのかな……あいつが」


 着替え見ても無反応だったのに……?


「大丈夫! 絶対する!」

「そう……」


 想像しただけで胸が高鳴る。康貴が私を見てドキドキする……?

 もしそれが本当なら、かんぺきな作戦だ! さすがまなみ! 私の妹だけあるわ。


「水着を買いに行くってなったらさ、多分康貴にぃは聞いてくるの。誰かと一緒に行くのか? って」

「確かに……」


 その光景が浮かぶ。浮かんで想像して、今からドキドキしてきちゃう……。


「そこでお姉ちゃんがこう言うの。予定はないけど、誘われたら行くわね」

「そのくらいなら私もできるわね……」


 まなみが真似た私はそっくりすぎてすんなりイメージが湧いた。


「そしたら康貴にぃが誘ってくれるよ」


 そのイメージは湧かない。


「大丈夫。そこは私に任せて!」

「そう……?」


 まなみが言うなら信じてみようかな……。


「あれ? でもそうなると次水着であいつと会うの?」

「試着を見せるんだから今更でしょ!」

「それはそうだけど……!」


 何なら今日下着まで見せてしまったけれど……。

 思い出すだけで私の方は今でも顔から火が出るほど恥ずかしい。今日来るのを知っていたのに油断していた私のミスだから何も言えなかったけれど……。

 だらしない格好を見て愛想をつかされていないか心配だったが、それは大丈夫だったので恥ずかしさは後回しになっていたのかもしれない。


 まなみが疑問符を浮かべる中、今更恥ずかしさで転げ回りたくなっていた。


「最後のゴールが決まってたらお姉ちゃんも、まあ買い物くらいは大丈夫だよね?」

「そうね……」


 それまではあくまで荷物持ちと割り切ればいい。最後だけなんとか頑張れば、次も遊べる。


「ふふ。楽しそう。お姉ちゃん」


 本当に良い妹を持ったなと、改めて実感する。

 水着を買って康貴からの誘われるのを待つなら、それなら……。


「頑張ってね、お姉ちゃん」

「うん……」


 まなみには何かしっかり、お礼をしてあげなきゃね。


「でね……その仕込みも含めて、デートは私が先になっちゃうけど……」


 申し訳無さそうにまなみが言う。


「何を気にしてるのよ……」

「いいの?」

「いいわよ。しっかり楽しんできなさい」

「わーい!」


 私ばかりが助けられるのもフェアじゃないと、ちょうどそう思っていたくらいだ。


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