九尾の狐の子
「これは、災いが起こる前兆に違いない‼︎ーこいつは呪いの子だ‼︎」
この一族の長が言った。
皆、怯えた。
その災いを。
その赤子を。
しかし、その母親だけはその娘を愛した。
人々の目から逃げつづけ、その娘と二人っきりで暮らした。
寂しさや、苦しさ、罪悪感は無く、ただ、幸せだった。暖かかった。
そんな生活が3年も続けられた。
母親は15歳の時、親から売られ、裏社会で生きてきた。
沢山の男を誘惑し、殺した。
この赤子も作ろうと思い、作った訳ではない。
20歳の時、できてしまったのだ。
誰との子かすらわからない。
しかし、愛したのだ。
母親にとってその子供との5年間は25年間の人生の中で一番輝いていた。
ある冬のことだった。
この場所がバレてしまった。
「5年ー5年かかってようやく見つけたぞ…!
呪いの子と、その母親ー。」
ニヤリと男が笑った。
「どうしたの。お母さん?」
子供が近づこうとする。
「ダメ!〇〇!!」
母がこんな怒った顔をしたのを子初めて見た。
ビクッとなり、足を止めた。
せめて〇〇だけでもー。
「強制転移ノ術‼︎」
絶対にー生き延びて!!!
バンっという銃声が鳴り響いたのはその直後だった。
綺麗な赤が床を埋めていく。
うん?これが何の話かって?
そのままんまだよ、呪いの子と、その母親の話。
とても美しく、悲しい話だよね。
別に分からなくてもいいよ。
僕もそろそろ行かなきゃな。
呪いの子がまた目覚めそうだから。