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「……要らない」


 まさかの言葉に、俺は困った。


 警戒心の強いやつなのは、知っているけど、部屋の登録を許されて、俺の作ったポーションも魔法携帯食も口にしてるし、俺の入れたコーヒーも普通に飲む。それなのに、食事の差し入れを拒否されるとは、思わなかった。

 ルドウィンは、いいのに?!

 と思うし、そんなに信用されていなかった事実が、かなりショックだ。



 ブライアムは、俺が買ってきたサンドイッチ類をかなり、訝しげに見ている。

 確かに食事と呼べるものを、持ってきたのは初めてだけど、そんな反応しなくても良くない??と思う。せっかくの初の試み。健康を心配したと言うのに、何たる反応。くそ。



「誰に頼まれた?」


 真っ直ぐに俺を見て、ブライアムは問う。

 その問に、俺の頭にはハテナが3つ程浮かぶ。


「……何のこと?」



「…………いや、お前らしく無い。そんなの、持ってきたこと無いだろ。今回は、何で引き受けたんだ」


 ブライアムの言葉に、さらに疑問符が浮かぶ。話が繋がらない。


「別に引き受けてないけど、まぁ、俺的に魔法携帯食、食ってれば問題ないかなーって思ってたんだけど、さすがに身体に良くないなーって、気付いたから、ちゃんとした食事を持ってきてやったんだけど?!お前、いい加減、誰かに面倒見てもらうの了承するか、自分でもう少し気を付けないと、死ぬぞ」


 とりあえず、言いたいことを言って、こいつの為に買ってきたサンドイッチの一つを手に取り、口に運ぶ。

 む。

 ボリューム重視で肉っぽいものにしたから、何かデカイな。ふつーに、たまごサンドも買っとけば良かった……なんて、思う。



「は?え?まさか、それお前が買ってきたって言うの?」


 ブライアムは、ポカンとしながら俺を見ている。


 いや、俺以外に誰が買うの。

 侍女も侍従も、取り巻きもいない俺に。

 自分で買う以外無いだろ。


 なんて、思いながらむしゃむしゃとサンドイッチを咀嚼する。

 中々悪くない。

 ちょっと、重いけど。

 ハンバーガーってやつに近いのかな。だとしたら、食べてみたいかも。探してみよう。


「どーゆー風の吹き回しなんだ。嵐でも来るのか?あんだけルドウィンが言っても理解してなかったお前が、今さら……」


 俺が無言でサンドイッチを頬張るのを、信じられないものを見るような目で見てくるブライアムは、ぶつぶつと呟いている。

 まぁ、分からなくもないかもだけど。

 失礼な話ではあるけど。


「だから、気付いたの。俺もこのままじゃ、良くないなーって。だから、俺より酷いお前もちゃんと食べた方が良いなーって、心配してやったのに……」

「は?え?何、これマジでお前が用意したの?!誰かに頼まれたわけじゃなくて?!」


 ブライアムの驚きのその言葉に、先ほどの拒否の理由が察せられ納得する。


 俺が食事なんて、差し入れたことが無かった上に性格上、そんなことを思いつくわけもなかったから、誰かに頼まれて持ってきたと思ったらしい。なるほど。確かに、食事なんて差し入れようなんて考えたことなかったけど。ポーションでもあれば、十分だろう的な。そこまで、甲斐甲斐しく面倒見てやるつもりも無かったし。……今も無いけど。


 そりゃ、誰に頼まれたか分からないものを、口にしようとは思わないよな。さすがに。


「……そうだけど?というか、さすがに俺も誰かに頼まれたならそう言うし、名乗りもしないやつのものなんて、受け取らないよ」


 心外だなぁと思いながら言えば、『すまん』と謝られる。


「…………いや、名乗っても受け取らないでくれよ」


 けれども、しばらくした後でぽつり、そんなことを言われる。


「……そう?」

「そうしてくれ」

「……差し入れくらい受けた方が健康的だと思うけど?」


 餌付けでもされれば、ラクだなーくらいの気持ちで返せば、深いため息が返ってきた。


「……何が入ってるか分からない差し入れのどこが健康的だ」


 と。


「……」


 まぁ、確かに。

 いくらチート魔法で安全確認が出来ても、ね。

 と言うか、これは心当たりあるやつだな。

 それ故の警戒心。

 モテる男は辛いね!


「あんまり身分高いと断れないけどねー」


 あと、あんまり圧が強いのもね。

 俺の防御力には期待しないで欲しいかな。





 *****




「で、何が目的だ?」


 俺が買ってきたものだと納得したブライアムは、それらを安心して食べ、今は食後のデザートを楽しんでいる。

 あんだけ食って、よくデザートまで入るなと思う。俺は、あのサンドイッチ一つで夜も要らない気分だと言うのに。完全に失敗した。こんな中途半端な時間に食べるんじゃなかった。せめて、ケーキにすれば良かったなと思う。

 慣れないことはするもんじゃないかも。



「ただの善意とは思ってくれないの?」


「……まぁ、ほぼそうだとは思うけど。お前がポーション以外、ケーキなんかを持ってくるのは、何か頼みある時くらいだ」

「確かに、そうだったかな」


 指摘されて初めて己の単純さに気付く。

 けれども、ポーション差し入れてるだけ優しいと思って欲しいかな。ただ、俺じゃなかったら、こいつはもう少し倒れずに済んだのかなぁって思うと、申し訳ないとは思う。


「それで?今度は何を作らせたいの??」


 言い方。

 頼みがあるって言うのは事実だけど。それだと、俺が常に何か頼んで作らせているみたいじゃん。


「……んーと、なんて言うか、こう動物の形の型みたいなのが作れたら良いかなーって」


 とは言え頼み……と言うか聞きたいことがあるのは事実だから、その本題に入る前に、ちょっと、思いついたことを聞いてみる。


「あ、でもこれ、どっちかって言うと錬金術の方か……」

「出来なくもないけど、そっちの方が上手く出来るだろうな」


 前世の記憶に型抜きクッキーって言うのがあったから、それ再現出来たらいいなーっと思ったんだよ。魔法携帯食が、あんな感じで可愛くなれば、売れるんじゃないかなーって。それで、型を作りたいって思ったんだけど、全然魔道具じゃ、なかった。

 まぁ、こいつも錬金術的な魔法も多少使えちゃうチート野郎なんだけどね。ホント、攻略対象のスペックは可笑しい。


「それと、先にウィリーに話通しとけよ」

「ん、あー、そっか。そうだね。そうする」


 ウィリーは、この国でかなり大きいメイスン商会の次男。気楽な立場でフラフラチャラチャラしてるように見えるけど、間違いなく商人の血が流れている抜け目ないやつだ。この学院で出来ることを最大限に利用して、商会の宣伝と、人材発掘、商売に繋がることの発掘に余念がないやつだ。それなのに、あまり優秀だと目立つのは、危険だと言うことで、そうは見せないように振舞っているのが、凄いところだと思う。傍から見たら、ただの金持ち男爵家の気楽な次男坊でしかないからな。


 商売的に世話になっているし、何か思い付いたら相談しろよ!と、言われていた気がする。うん。


 ちなみに、ゲームでもモブとして登場していたと思う。もちろん、チャラ男枠で。


 俺の周り……と言うか、この学院?貴族が?全体的に顔面偏差値が高めだから、自分の顔がイケメン寄りだろうとあんまり、意味無いなと思う。うん。前世を思い出すまで、自分の顔にそこまで、思うことが無かったのも頷ける。周りがキラキラしい。




閲覧ありがとうございます!

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