第二話 【無能な友達。】
途中は色々ややこしいかも知れません!
けど、最後には物語が結構動き始めます( •̀ᴗ•́ )/
街流しが一人から二人に増えただけで、ドンブラコと街を泳いでいるのが、カイリとファンの二人である。目的地の一致で、『ギルド』まで一緒に行くことになった二人だが、歩き始めてすでに10分という時が経っていた。適当に雑談しながら歩いていた二人だったが、唐突に話はカイリの触れられたくない『あの』話題に変わる。
「あの…ずっと気になっていたんですが、カイリさんはなぜそんな見たことも無い魔物の毛皮の格好を?」
「魔物ぉ?」
──なるほど、この世界から見れば俺の格好は『魔物の毛皮』という認識になるのか。パジャマってバレなくて良かった……
と、あんどの気持ちをあらわにするカイリだったが、逆にこの質問への切り返しが悩みところでもあった。
──「え、これパジャマだよ?」なんて言えるわけないし、「あぁ、さっき取ってきたんだ」ってそんなサイコだと思われたくねぇ。正直に言うか、いやダメだって!なんだ、なにが正解なんだっ…!
「あ、あぁ、これは……昔、ある人に…もらっ、て…」
──苦しい!苦しい言い訳過ぎるッ!俺が、ここまで動揺するなんて…
やはり女性相手だと調子が狂う、と思い次の相手からの返しを待っていたカイリだったが__
「素敵です!昔もらったものを、今も大事に来てるだなんて。………あっ、さては…これ、でしたか?」
一瞬、無事に話が終わったかと思ったカイリだったが、まさかのファンは赤面し、恥じらいながら、申し訳なさそうに小指を突き出してきているのだった。
「いやいやいや、違ぇよ!ちが、、うよな?ちが__」
ここでカイリはいらんことを思い出してしまうのだった。そう、ファンの質問に対してNOといえない、ある『理由』を__
──あぁ、そうか……これ、買ってもらったの……
『オカン』……だ。
◆
あれからまた五分近く歩いているカイリとファンだが、何度この服の訳を説明しようとしても__
「いや、もう大丈夫ですよ!私、ちゃんと分かってますから…」
と、取り合ってくれなかったのであった。カイリの在らぬ女の影を完璧に信じ切ってしまっている。いつかちゃんと弁明しようと心に決めたカイリであった。あと、カイリはもう一つ気になっていたことを聞いてみる。
「なぁ、ファン。俺に対しての敬語やめてもいいんだぞ?」
「……えっ?」
「だって、おれがファンって呼び捨てなのにお前が『カイリさん』だったら、割に合わねぇだろ?俺ってあんまし上下関係とか好きじゃないからさ」
別にカイリは、「たった一年や二年早く生まれたぐらいでいばんなよ」なんて思っている訳では無い。ちゃんと年上には敬意をはらって接する。が、カイリにとって同年代やそれより下の人に敬語を使われるのは、あまり気分が良いものではなかった。
──そんなの自分がまるで偉いみたいに感じるだろ。俺みたいな引きこもりで、人間の底辺に敬語なんて絶対おかしいからな。
なんてことを考えている内に、不意にこっちを茶色のキラキラした目で見つめるファンに、気づくカイリであった。
「ど、どうしたんだよ、ファン。そんな美味しい餌見つけた犬みたいな顔して?」
「あ、あのあの!『友…達』ってこと、?」
「へっ?」
「い、いや違ったらいいんです!ごめんなさい…」
まさか…とカイリは思う。そのカイリに浮かんだ考えは、この子のこんな性格だったら普通にありえる事だった。
「もしかして……友達…いない、のか?」
「………ぇっと、まぁそんな…感じ、です」
──なるほどな、だが俺はここで笑うような最低な男ではない。なぜなら………俺も友達いないからな!
「……そうか、俺と同じだな!」
「……………え?」
「そうなんだよ、俺も色々あってな。友達なんていた事なかったんだ。逆に、そんなのなくても生きていける〜なんてこと思ってたくらいだ。」
「____」
「でもさ、やっぱり人間。一人じゃ生きていけねぇのかもな、ってこんな真面目な話しようってらわけじゃないんだ!ファン!こっちから頼むぞ。俺と……」
「友達になってくれないか?」
──って、なんつうこと口走ってんだ、俺は!恥ずかしいぃーー、顔アッツ。ダメだ、まともにファンの顔見られねぇ!もう、キモすぎて黙っちゃったじゃねぇかよ!
「あ、あぁ!いや、無理にとは言わない。嫌ならいいんだ、嫌なら……」
「こちらこそ。」
「………えっ」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
そういって、彼女は今日一番の可愛すぎる笑顔を見せた。
◆
そんなこんなで友達になった二人だったが、ファンの敬語は直ってはいないのであった。
「いきなりタメなんてちょっと恥ずかしいので、『カイ君』から始めることにします!」
とのことだった。
そして、カイリもファンに対してずっと気になっていたことをことを、口にする。
「なぁ、ファン。お前ってどんな魔法が使えるんだ?」
「ひっ!?」
──ひっ?ひっってなんだ?やっぱり剣と魔法の世界に来たからには、一度は魔法なんかを見てみたいと思うのは普通のことだと思うのだが……誰でも使える訳じゃないのか?
「じ、実は私………いえ、ここではあれなので場所を変えましょうか」
「あ、あぁ。」
明らかに真剣な目付きを感じ取り、ヤバいこと聞いたかも。と、少しばかり後悔するカイリだった。
◆
誰も来ないような街の雰囲気から疎外された路地裏に二人で来ている、という展開に少しばかり心が踊るカイリだったが、残念ながらそんな雰囲気ではないのは確かだ。
「あの……大変申し訳ないのですが、実は私………」
どちらの音かもわからない心臓の音が路地裏に響き渡っていた。
「魔力だけおっきくて、魔法が使えないんです……」
「____は?」
──どゆこと?魔法が、、使えない?魔力?大きい?ヤバい何一つ理解できないんだけど。
「えーと、スマン。俺、実は結構田舎のもんでさ、そういうのにうといんだね。あの…もうちょい砕いて教えて欲しいな〜なんて」
「あぁ!そうなんですか!ごめんなさい、カイ君」
「いや、謝るような事じゃないんだけどさ…」
「えっと、簡単に教えるとですね。
私はごく稀に生まれてくる、【魔素を一瞬で魔力に変換できる能力】というのを、持っていまして。その能力を持っている者は、生まれつき『恐ろしいほどの魔力』を所持しているんです。」
「魔素と魔力の違いってなんなんだ?魔力の元、みたいなものが、魔素?」
「そう考えていただいて大丈夫です。通常の人は、その魔素を様々な能力に変換することによって、魔力とし魔法を使うんですが……」
「あぁ、その魔法が使えないってやつ?」
「えぇ、そのお恥ずかしながら、不器用すぎてその手のものが全くできず、ゴブリンでも分かるような下級魔法ですら会得できませんでした……」
おいおい、この世界のゴブリンと猿はイコールなのか?と、どうでもいいことを考えているカイリだったが、聞いて見て思ったそぼくな疑問を口にする。
「なぁ、ファンが魔法使えないのは分かったんだけど……具体的にどんくらいファンは魔力持ってんだ?」
──そりゃあ、こんだけすごいこと言われたら気になるのもやむなしだろう。それも俺がこの子を、気にかけた理由も分かるかも………
「ッ____」
「ん、どうした、ファン?」
「あ、いえ、すいません」
──どうしたんだ?なんさっき……この子__
彼女の悲しげな表情の裏に浮かんだ、壊滅的な『なにか』にカイリは気づくことなく、ファンは話を始めた。
「えっと…前にある人から言われたことがあるんです
『お前の力はあの世界最悪であり、最強のあの男、【魔王】に匹敵、いやそれ以上である』と。」
「は!?お前がまおぶぅゥ……」
瞬時に口をファンの手によって押さえられ、そのあとの言葉をカイリは言うことが出来なかった。
「あまり大きな声で言わないでください!そんなこと知られたら誰も友達になってくれませんから!」
「ッ!?」
めちゃくちゃ近い耳元でささやかれたこともあり、カイリの心臓は爆発寸前を迎える。
──あと、理由も理由だな。もっと他にあっただろ理由。どんだけ友達に飢えてるんだ、この子は?
「だから私は莫大な魔力を持ってるけど、使えない。宝の持ち腐れなんです。ちなみに、魔王も私がさっき言った能力を持っているとも、言われているそうです。」
ファンがチートの持ち腐れであり、世界最強の【魔王】ですら勝てないレベルの魔力持ちだ、という重要なキーワードをカイリは整理する。
「なるほどな、まぁだいたい言いたいことは分かったんだけど。その、さっき言ってた【魔素を一瞬で魔力に変換する能力】?って具体的にどんな能力なんだ?」
「えーっと、魔法を使う際の『詠唱』が不要だとか、魔素を高めるような術も不要。つまり最初から魔素ではなく魔力を持ち合わせている、と考えた方が簡単でしょうか。ですがその影響で私の体からは魔力がダダ漏れでして、普段は抑えているんですけど上級者以上の冒険者の方が見れば、「ただものじゃない」という風に認識されてしまって……」
「人が寄ってこない、っと」
「はい、ちなみに魔物なんかも襲ってきませんね。あの子達も意外と賢いから、強い敵には襲いかかってこないんです。」
──なるほどな、この子といれば魔物に襲われる心配はないってことか。なかなかそれは好都合なのではないか?というか、魔物のこと「あの子」って呼んでるたり、強さがにじみでてるな。まぁ、魔法使えないけど。さらに……
「じょあファンに声掛けた俺は、上級者確定ってことか。これが転生者特典ってやつ?」
カイリがファンを街中で見つけた時、確かに異様__いや、関わってはいけないという本能的な部分でこの子を、カイリは拒絶していた。が、あまりにもその容姿と行動がその雰囲気と一致しなかったため、カイリは試しに声をかけていたのである。
「え、なんですか?転生?特典…?」
「いや、なんでもねぇよ。それよりそろそろ、ギルド探し開始しようぜ。日が暮れちまうぞ__ん?そういえば今何時なんだ?」
この世界に時間という概念が存在しているのか、不安になったカイリだったが、そんなこんなでギルド探しが開始されたのだった。
◆
「そういえば、カイ君はどんな能力を?」
最初の様におどおど下喋り方から、もう大分慣れなたのかカイリに対しては普通に喋れるようになっているファンだったが、カイリはそんなこと気にせず突然の核心をつけような質問に戸惑っているのだった。
──あぁ、ついに来てしまった、この時が。まだ確認はしていないがきっと俺の能力は…………『アレ』なんだから。
「カイ君、私のことは聞いてたのに、自分のことは話そうとしてないですもん」
「い、いや?ほら、俺駆け出しだから、なんの能力も持ってないわけよ。、」
「でも、さっき上級者とかなんとか…」
「聞こえてたのかよ!!はァ、まぁファンになら俺の能力のことも話しておいてもいいかもしれないな」
──結構賭けだが、ファンは馬鹿にしたりしなさそうだし、口硬そうだし。これからも、なんか関わりあってもおかしくないからな、話しておくか。なんてたって____
「友達だからな!」
「どうしたんですか?」
「い、いや?なんでもない」
初の友達にテンションが上がっているのは、ファンだけではなく、カイリもまた例外ではないのだ。
「念じれば、ステータスが表示されるようになっていますよ。まぁ、ステータスといっても魔力などは数値化出来るようなものでは無いので、能力しか表示されませんけどね」
「おっ、マジ!?ステータスとかめっちゃ異世界っぽいじゃねぇかよ!そこに書いてあるのは別として…」
────ドゥウィン
と音を立て、カイリの目の前に半透明な水色のステータスが表示される。
「おっ、カイ君の能力は……狩人、ですか。なかなかレアな能力ですね!一体どこでこんな能…りょ…ん?これ、読み方がハンターじゃない。ストーウブゥッ__」
「違うよっー!全然違うよ!ハンター!そう、ハンターだから!!」
カイリは必死にファンの口元を抑え、急いでステータスを目の前から消し去る。
──おいぃィーーー!!なんで、狩人っていうるびの振り方!読み方おかしいだろ!それに、ストーカーを狩人って美化しすぎだろ。
「ファン?ちょっと二十秒くらい目をつぶっててくれるか?頼む、これは死活問題なんだ。」
「わ、分かり…ました?」
──よし、これでじっくりこの明らかにクソな能力について知ることが出来る。どれどれ?
【狩人】
《能力》
[神隠し]
[足跡辿り]
[気配察知]
[弱点察知]
【称号】
“貪欲の王”
だけ……………か_。
ちょっと能力名みればかっこよく見えるけど、やっぱり【ストーカー】特化の能力じゃねぇか……
さらにいえば、なんだよ。貪欲の王でストーキングって、王とキングをかけてるつもかよ。
「クソっ……マジで使えねぇんじゃねぇか、これ?」
「あ、あの、カイ君__」
「おい、ファン目開けるなって言っただろ!恥ずかしいんだけど!」
「いや、もう20秒経ちましたよ?あと、ギルドなんですが……」
「ギルドが、どうしたんだ?」
「ここ………ですね。」
「……へっ?」
カイリたちの目の前には、わざとらしく『ギルド』と書かれた建物が経っていた。
◆
「おいおい、マジかよ。でもまぁ、ラッキーだったな!探す手間も省けたし」
「そうですね!早速入りましょうか。」
「おう、そうだ____」
──ん、なんだ。ヤバい、ここにいたらヤバい。あのギルドのドアの向こう、なんか………いる。カイリの全神経がヤバいと告げている。あのドアの向こうのから…何か………
ファンとあった時と同じような感覚に襲われたカイリは一瞬固まってしまう、がそうしていられないのも分かっているカイリだった。
「ハッッ!ファン!危ねぇぇ!!」
────ドォゴーーーーン!!!
「な、なんですかッ!?」
とっさにファンに抱きつく体制で、『何か』からカイリは避けることに成功する。さっきまで、あったはずのドアが__否、その周りの壁ごと壊され、何かがカイリたちの元へ吹っ飛んできたのである。立ち込める砂煙に口を抑えるカイリ達の後ろから、苦しむ声が響く。
「ヴッ、うーッ」
──誰だ!?というか、吹っ飛んできたのは人!!?だとしたらなんつう……ん?コイツ!?
「あんたは!?モヒカンのおっちゃん!!??」
「おぉ、お前さんはさっきの兄ちゃんじゃねぇか…」
──どういうことだ?なんでこのモヒカン事件のおっちゃんがここに?それよりなんでこんなことに…
「どういうことだ!?説明してくれ!」
「あぁ、あんたみたいに肩ぶつかったから注意してあげようと思ったらな、言う前に……これだよッ」
──なんだそれ、むちゃくちゃじゃねぇか!というか…
「あんたは注意の仕方が怖すぎんだよっ、もうちょいなんとか出来ねぇのか?注意は有難いんだけど、俺も殺されるかと思ったぞ。」
──それより誰が?『殺られる前に殺るタイプ』ってことか?いい性格してんなぁ、全く。
「カイ君!!ギルド前に誰か……ん?女の子…?」
そこには真っ赤な髪を伸ばし、明らかに貧民な格好をした幼女が立っていたのだった。
「この子が殺ったのか?……なんて、野暮な事聞いたなぁ。まぁ、いいか」
「カイ君!!?」
「大丈夫だ。俺は厄介ごとは大嫌いだが、面倒ごとは嫌いじゃねぇからな!!」
少し晴れた土煙の中、
真っ赤な悪魔がカイリ達を見下ろしていた。
なかなか気になる展開に仕上げられたと思います
長文で結構酷い文書でしたが、これから
こんな感じでも慣れて行きますので、
長い目でお付き合い下さいm(_ _)m