プロローグ 【異世界はパジャマと共に。】
初投稿です!(。-`ω´-)
お手柔らかに…
「ストーカーですか?」
このなんとも失礼な質問に対してこの男、佐野 海李はただ今戸惑っている。戸惑っているといっても、別にカイリはこの質問だけに戸惑っている訳では無い。それは…
──さっき死んだはずの俺が、なぜこんな質問を受けているのか__否、なぜ『受けられる様な状況で居られるのか』だ。
そんなことを気にしているのか、いないのか、カイリの目の前に座る女性はたんたんと、尋問のように話(?)を進める。
「もう一度聞きます。あなたはストーカーですか?」
「違います。」
「もう一度深く考えてください、ですか?」
「違いますね。」
「了解しました。ストーカーですね」
「なぜに確定!?違いますから、っていうかどういう状況なの、これ!?」
カイリは混乱を隠せなかった。当たり前だ、さっき死んだはずの男が、急に死ぬほど可愛い女性から「ストーカーですか?」という全くもって不本意な質問を連続で投げかけられているのだから。混乱するのも無理ないはずだ。だが、カイリはこんなことでうろたえる様な男ではない。
──だてに高二まで引きこもりのニートをやってきた訳じゃないからな。
にわかに信じ難いが、これがネット小説のお決まり展開ならこの女性は女神。つまり!!カイリにチートスキルを授ける大事な役割である…………が、
「ストーカーでしたね〜」
クスクスと半笑いで手元の本を読みながら、カイリの目の前の女性はそういうのだった。
「いや、なんなんですかあなたは?さっきから訳の分からない質問ばっか__」
「したことは?」
「……は?」
「したことは?」
「…………」
「もう一度お聞きします。ストーカー__つまり、ストーキングを行ったことがあなたには、おありですか?」
「……びで………いどなら」
「はい?」
「…ゆ、指で数える程度…なら、あり、ます。」
「__はい。……変態ですね」
「止めてぇー!?あ、あれは、ほら【黒歴史】だから!子供ゆえのささいな間違いだから!!」
「私は中学二年生の夏は、充分大人になっているものだと考えていますよ」
──もう嫌なんだけど、これ!?
何が悲しくて、こんな女神みたいな人に俺の黒歴史まで解き明かされなくちゃいけないんだよ、とカイリはがくりと肩を落とした。普通の人にこれ程のことを言われたとしても、カイリは別段気にせずに日常生活を過ごすことができ、精神的なダメージもささいなものだろう。だが、女性に言われるのでは訳が違う、さらにこんなに可愛い女性(女神?)からだったら、それも倍増どころの話ではない。カイリにとってこれは死活問題なのである。
「そこまで気を落とすことはないですよ。あなたはこれから異世界に転生されるのですから」
「やっぱりか!?いやー、ホントにこんなことってあるんですね〜良かった、よか……?」
そこでカイリにある疑問が浮かぶのだった。それは
『俺はなぜ死んだのか』
死んだ。という漠然とした理解は出来る、出来るのだが……感覚がない、記憶が無い、訳が分からない。どのように俺が死んだのか、そんな当たり前のことが分からない。前世の記憶がない、訳ではない。だが、死の瞬間が全く持ってわからないのだ。いや、分かってはいけないのだろうか。本来、人というのは自分の死を実感できないはずなのだ。
『そこで終わりだから…』
それからの記憶なんて、実際あってはならないのだから。
「そこまで悩むことはありません。それはこちらの手違いです。あなたはそれについての記憶を……」
「知っておく必要はありません」
◆
「えっとつまり?俺が今から行く世界は、
【魔王アリ、魔物アリ、魔法アリ、勇者アリ、ギルドアリ、友情アリ、努力アリ、勝利アリ】ってことですね。」
「えぇ、ジャンプの三原則はさしおいてもその通りです。あなたには、私たちから特別な能力を差し上げます。」
「と、特別な能力…!?」
その言葉の印象に衝撃を受けながら、カイリは色々なチートスキルを想像していく。
「やっぱり【聖剣エクスカリバー】とかそういう系か?それとも逆に【最強の盾】とか?いやでもネットでは、身体能力強化系がワンチャン最強説ってのを前にみたような…でも時をつかさどる系が反則系のチートとされているから__」
「あのー盛り上がっているところ悪いのですが、能力はこちらで決めさせていただきます。というか、あなたが前世でもっとも印象に残っている物を、強化したもの、または改良したものがあなたの能力に変化します。」
「は、はぁ…なるほど、分かりまし、た…?」
つまり、カイリが前世で最も印象に残った出来事とかが、能力になる__という理解でいいのだが、いいのだが…
──印象に残ったもの?俺が?俺みたいな引きこもりのニートがこれまでの人生で印象に残ったもの…
残ったものって__
「それでは、行ってらっしゃいませ。」
「は?」
突然として、カイリの後方に現れた門?によってカイリは体が椅子から落とされ、ズルズルと門に吸い込まれていく。そこでカイリはとんでもない自分の失態に気づいてしまった。
「!?ねぇ!これってちゃんと転生したら初期装備で衣装もバッチリになるんだよね!?」
「…良い異世界ライフを。」
「おいぃー!!まさか、まさか……」
「頑張って下さいね〜。」
「この熊の全身パジャマのまんまで転生とかじゃないよなぁァーーー!?」
◆
「あぁ…」
サンサンと照らす太陽の下、俺__カイリはぐったりと体を落とした。
「……今日は人生最高で、最悪な日だ」
【悲報】俺氏、パジャマで異世界転生される。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ぜひ次の話も(。-`ω´-)