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第百四話 vs第四の柱、三

今回は戦闘回になります!

では第百四話です!

「こ、これがあの坊主の力か………」


 ハクが神妃化を使用した瞬間、その迸る力にマルクは圧倒されていた。ハクの体からにじみ出ている力はまさに神の力だ。だがそれが神の力であるということをマルクには判別できない。

 だがその圧倒的な力は見ただけで鳥肌が止まらないほど絶対的なものだった。強すぎる力は理解する必要すら無くしてしまう。人間が持つ本能と直感が神経を刺激してしまうのだ。

 そして今、マルクの感覚は全て目の前で戦っているハクに向けられていた。ハクの力は色々と疑問がある。そもそも皇獣は神器として召喚された神宝でしか傷つけることができない。だというのに、今のハクは己の拳一つでフォースシンボルを相手にしている。

 この現状はどう考えもおかしい。

 それこそハク本人が神器でない限り、このようなことは起こりえないはずなのだ。

 だが。


「………待てよ?………もしや!」


 そう呟いたマルクは自身の背後に浮かんでいる妃愛に視線を向ける。そこにはミストを守るようにハクを見つめている妃愛がいた。妃愛から感じられる力は微々たるものだ。今戦っているハクと比べてもその差は歴然だろう。

 だがそれは当然だ。

 なにせ彼女は帝人で神器はまた「別に」あるのだから。

 それが帝人と神器の関係。

 しかし妃愛には神器らしい神器はない。マルクのように血剣サンギーラを持っているわけでも、ミストのように「大太刀」を持っているわけでもない。

 だが帝人である以上、間違いなく神器は存在しているはずだ。そして帝人と神器の力関係を見ると一つの推論が浮かび上がってくる。


(まさか………。あの坊主が少女の「神器」なのか………?)


 そう考えると色々と辻褄があってしまう。皇獣に対抗できる力、他の人間とは比べ物にならない気配、そしてハクが現れたタイミング。その全てがそう考えることで合致してしまう。

 ゆえにマルクは色々と納得がいった。

 マルクの中でハクは生ける神器へと認識が変わったのだ。

 であれば、あの力も頷ける。誰が見ても勝てないと思わせてしまうような圧倒的な力。強いと恐れられているフォースシンボルを追い詰めている事実。それらを疑う必要がなくなった。

 マルクはそう考えると、血剣サンギーラを腰の鞘に納めてハクの様子を見守っていった。自分の入る隙がなかったわけじゃない。ただ単純にハクがフォースシンボルにどういった立ち回りを見せるのか気になったのだ。

 全長百メートルを超えるフォースシンボルを剣を右腕一つではじきかえすその光景を、じっくり観察して見たいと思ったのだ。


 その理由は一つだけ。


 マルク自身の目的を達成させるためだ。


 いつか、というかもうすぐ、ハクがマルクの前に立ちふさがってくるだろう。その時に備えてマルクはハクの力を調査しようと考えていたのである。


 とはいえ。

 ハクにとっても妃愛にとってもミストにとってもマルクにとっても。

 うまくいかないことはある。


 現に。


「む………?この風の切るような音は………。ちっ。割とお早い登場のようだな。まったく面倒をかけさせてくれる」


 この場において新たな問題を引き起こす存在が近づいていた。

 そしてその登場にこの場にいる全員が冷や汗を流すのだった。












「あ、あれがハクの力ですか………。ファーストシンボルと戦った時とは比べ物にならない力ですね………」


「でも多分、お兄ちゃんはまだ本気じゃないです。あの姿になってもまだ余裕そうですし………」


 ミストさんを守るように空に浮かんでいた私は新たな力を解放したお兄ちゃんを見ながらそう呟いていた。今のお兄ちゃんは少しだけ髪が伸びて、瞳がいつもより赤く輝いている。その姿は月見里さんたちと戦って時も見てはいたが、力をコントロールできるユニなった今それを見ると、お兄ちゃんのすごさに感嘆してしまう。

 体から滲み出る気配はこの世界にいる誰よりも大きく、それでいて逞しい。その背中を見ているだけで安心してしまうような力強さが宿っていた。

 そしてそんなお兄ちゃんは今、あのフォースシンボルを圧倒している。フォースシンボルの大きな剣を片手で弾き飛ばしたり、その体に強力な一撃を叩き込んだりと、終始優勢の状況が続いていた。

 確かにフォースシンボルの気配は今までの五皇柱よりも大きいように感じる。だがあまりにも体が大きすぎるせいでお兄ちゃんの動きについていけていないようだった。

 とはいえ。


「………ダメージを与えてもすぐに回復してしまいますね。ハクの体力も無限ではないでしょうし、長期戦は避けたいところですが………」


「そ、それは確かに………」


「それに多分ですけど、このまま優位に進められるほどフォースシンボルは甘くないと思いますよ?」


「ど、どういうことですか?」


「マルクの言い方から察するに、フォースシンボルはおそらく『この場で生まれた』のです。長い長い眠りを経て、ようやく目を覚ましたのです。となれば、必然的に先頭に関する知識がないのも頷けます。つまり何が言いたいかというと………」


「フォースシンボルは戦いの中で進化していくってことですか………?」


「おそらく。徐々にですがハクの攻撃に順応していっているように見えます。ハクの攻撃速度は変わっていないように思えますし、その攻撃が通りづらくなってきたということは、学習し進化していると考えるのが自然でしょう」


 そう言われると。

 確かにフォースシンボルの動きのキレが増してきているような気がする。先ほどまではお兄ちゃんの攻撃になすすべなく吹き飛ばされるだけだったはずなのだが、今は的確に攻撃を予測して回避するようになってきている。

 それに合わせてお兄ちゃんの動きはどんどん鈍っていき、徐々に戦況が傾き始めている様子だった。それを見ていた私は心の中に焦りが浮かんでくるのを知覚する。だがだからといってミストさんから目を話すわけにはいかない。

 ゆえに私は生唾を飲み込みながらお兄ちゃんの戦いを見つめていたのだが、そこに多いがけない来訪者が現れた。


「な、なに、この音………?ぷ、プロペラ?何かが回転しているような………」


「ッ!こ、困りましたね………。あまりにも早い到着です………。少々日本政府を侮っていたようです」


「そ、それってどういう………」


 と言いかけた直後。

 私とミストさんの頭上を巨大なヘリコプターが通り過ぎた。それはよくテレビや映画などで見かける戦闘用のヘリコプターで、機体の下には機関銃のようなものが取り付けられている。

 そう。

 つまりこのタイミングでやってきたヘリコプターとは。


「ま、まさか自衛隊!?」


 この戦いにまったく関係のない戦力があまりにも早く到着してしまったのだった。













「ちっ。学習スピードが早すぎる!?もう俺の動きについてこれるようになったのか………」


 俺はそう呟くと、迫り来るフォースシンボルの剣を足で蹴り飛ばして起動をずらすと、もう片方の剣に登って駆け上がりにながら顔面へ近づいていった。そしてそのまま額に向かって拳を繰り出していく。


「はあああっ!」


「コロス、コロス、コロスウウウゥゥゥゥ!!!」


「なっ!?」


 しかしその拳が額に届く前に俺はフォースシンボルの体の上から振り落とされた。体のいたるところに生えている巨大なツノによって吹き飛ばされ、地面へ落下してしまう。

 するとそんな俺をすかさず踏みつぶそうとフォースシンボルは俺に向かって足を突き出してきた。


「くっ………」


 俺はその足を両手で受け止めると、そのまま力を言えれて押し返した。


「ぐ、ぐぐぐ………だぁぁぁぁああああああああああああ!!!」


「ガッ!?」


 それによって体のバランスを大きく崩したフォースシンボルは地面へと倒れこみ、大きな好きが生まれる。その隙をついて俺は気配創造を発動し、無数の刃をフォースシンボルへたたき込んでいった。

 無数の爆発と爆風が空間にこだまし、俺の体を撫でてくる。しかし俺にはわかっていた。この程度の攻撃でフォースシンボルがくたばるわけがないと。


「………」


「………ウウ、ウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


「………やはりな。事象の巻き戻しが使える以上、その力の根源となっているエネルギーを消費させない限り直接的なダメージは与えられないらしい。気配殺しを使えばどうにかなるかもしれないが、あまりにも体がでかすぎるからな………。うまく攻撃できるかどうか………」


 と、俺は一人で考え込んでいたのだが、ここにきて一つの事実に気がついた。

 ん?

 そう言えばマルクはどこにいった?一緒に戦うはずだったんだが………。

 と思って俺は気配探知を使ってマルクの気配を探った。するとマルクは俺の立っているすぐに頭上の空に浮かんでおり、何やら楽しそうに俺を見つめていた。

 その目には俺を挑発するような雰囲気が浮かんでおり、まるでお前一人で倒してみろと言わんばかりの態度だった。


「あの野郎………。今回はフォースシンボルが強すぎるからみんなで戦おうって言ってたじゃねえか………。結局俺にやらせるのかよ………」


 俺は半ば愚痴のような言葉を呟くと、大きくため息を吐き出してさらにこう言葉を紡いでいく。


「でも、戦いの途中だからって俺が妃愛とミストから目を離してると思ったらお間違いだからな。何かしようものならすぐにでも攻撃してやる」

 そんな台詞を吐き捨てて俺はようやく起き上がったフォースシンボルに目を向けていった。やはり俺が与えた傷はなくなっており、それどころかいつの間にか背中の後ろからさらに新しい腕が二本生えているようだった。


「おいおい、まじかよ………。戦闘技術だけじゃなく体まで進化するのか………。これは本当に骨が折れそうだ」


「コロス、コロス、コロス、コロス、ニンゲン、コロスウウゥゥゥ!!!」


「生憎だが、俺は人間じゃないんだ。ま、元人間だけど」


 俺はそう呟くと、漏れ出る神の力を体の中に押しとどめて力の最適化を測っていった。これにより戦闘能力は飛躍的に上昇し、先ほどよりも強力な力が出せるようになる。麗奈との戦いでも使った技だが、今は出し惜しんでいる暇はないと判断したのだ。

 というわけで、いよいよ第二ランド開始と言おうとしたその時。

 予想していなかった出来事が起きてしまう。


「ん?なんだ、この音。複数の気配も同時に近づいて………」


 と思った瞬間。俺たちの頭上をいくつものヘリが通り過ぎた。その存在を知覚した瞬間、俺の頭の中に嫌な予感が駆け巡る。このままではまずい。新たな犠牲が出てしまう。

 しかしその音は鳴り止むどころかどんどん大きくなり、増えていった。そしてそのヘリをフォースシンボルが捉えた時、事件は起きてしまう。


「や、やめろっ!」


 反射的に動き出していた。

 転移を使用してフォースシンボルの眼前に躍り出た俺は、複数のヘリに向かって振り下ろされた巨大な二本の剣を正面から受けとめていく。一応俺には隠蔽術式をかけているし、ヘリに姿は見えていないはずだが、それでもこのまま行けば俺が思い描いている最悪の事態になりかねない。

 そう考えた俺はその剣を弾き飛ばしてフォースシンボルのバランスを崩させると、その場にいるヘリたちを気配創造の鎖で縛り上げてこの場から離脱させていく。


「ちっ。どうしてこんな時に………!」


 と、愚痴るものの、理由を答えてくれる人はいない。マルクが言うにはフォースシンボルを囲えるほどの隠蔽術式を用意できなかったらしいが、それでもまさか正体不明の巨大生物相手にここまで対応が早いとは思わなかった。

 とはいえきてしまったものは仕方がない。

 今はとにかく安全な場所へ移動させないと………。

 と、思った矢先。


「ニンゲン、コロスウウゥゥゥ!!!」


「な!?ま、まず………」


 そう口にした時には遅かった。フォースシンボルの口から放たれたエネルギー砲が俺に向かって放たれ、それをまともに食らってしまったのだ。

 とっさに気配創造の障壁を展開してなんとか威力は殺したものの、鎖で引っ張っていたヘリも同時に墜落してしまう。集団転移を使用してヘリの中にいた人間を移動させるが、それによって自分への対応がおろそかになり、地面へ叩きつけられてしまった。


「ぐ、うぅ………。ったく、なんでこんな時に動いてくるんだよ、『自衛隊』ってやつは………」


 そう。

 この場にやってきたヘリの正体。

 それは日本政府から派遣された自衛隊だったのだ。


次回は今までとは違う戦いを描きます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

次回の更新は明日の午後九時になります!

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