ぷちしんわ 十八の巻
今回はちょっとだけ書いてみたかったお話です!
ハクとアリエス、二人が再開する物語です!
ではどうぞ!
初めに。
これはハクたちの冒険の中で起こった短い閑話をまとめたものになります。時系列は基本的にバラバラで、本編とはまったく関係のないお話です。
この手のお話があがるということは、作者が何らかの予定で小説をまともに執筆できなかった可能性があります。場合によってはかなり短いお話になっている可能性がありますが温かい目で見守っていただけると幸いです。
というのがいつもの流れですが。
今回はギャグはなしです。
現在連載中の真話対戦編においてハクがアリエスがいるティカルティアの世界に赴いた時の話を描きます。劇中ではわりとあっという間に時間が経過してしまっているので、アリエスサイドのお話をハクの視点から書いていきます。
ティカルティア編ではアリエスの視点で描きましたが、この時全てを知っているハクはどのように考えていたのか、みなさんに知っていただけると幸いです。
「前向きに」
久しぶりにアリエスに会いにいった。
俺からすると四ヶ月ほど会っていなかったことになるが、アリエスからすれば約五年もの間会っていなかったことになるらしい。こちらの世界とアリエスがいる世界では時間の流れる速度が違うからだ。
というわけで四ヶ月ぶりに会ったアリエスは俺が知っているアリエスそのものだった。誰もが羨むその美貌は変わっておらず元気な笑顔を俺に振りまいてくれる。
ただ一点。
俺が知らない光景があるとすれば。
「………なんだか本当にお母さんみたいだな。いっそのことあの子のお母さんになればよかったんじゃないか?」
アリエスの隣に見知らぬ少女がいたということだろう。
その少女の名は「アナ」と言うらしい。
白髪赤眼。アリエスを写し取ったようなその容姿は幼いながらも一際輝いていた。だがこの少女は赤子の時に捨てられていたようで、それをアリエスが発見し姉として育ててきたらしい。
それに関して俺は何も言わなかった。というかむしろ応援した。アリエスがこの世界で生きる意味を見出してくれたのなら、それは俺としても本望だった。それなりに苦労はあるだろうが、誰かのために生きるという意思は非常に強固なものだ。それがあるならアリエスは心配ないと俺は思ったのだ。
だが。
それと同時に俺はこの世界に来た瞬間、色々と悟ってしまった。
この世界には妃愛が住んでいる世界とは違って抑止力も記憶庫も存在している。ということは神妃である俺はその中に格納されている情報を覗くことができるということだ。まさか両方とも意思と体を持つ生き物だったことは想定外だったが、それでも必要な情報は入手することができた。
ゆえに知ってしまった。
アナという少女が背負っている運命。
アリエスが背負うであろう運命。
その全てを。
抑止力は徐々にアリエスという異物を攻撃し始めている。その兆候が見え始めている以上、何があってもアリエスはいずれこの世界からはじき出されるだろう。
抑止力を破壊する手段も当然考えられるが、それをアリエスはよしとしないだろう。いずれ来る全てが決着する日に、アリエスは必ず自分を犠牲にするはずだ。俺もアリエスもきっとそんなことを考えてしまう人種なのだろう。
だから何も言わなかった。
抑止力の影響下にあることだけ伝えて俺はこの場から去っていく。
「じゃあ、俺はいくよ。抑止力とか色々つまらない話ばっかりしちゃったけど、この世界を楽しむことも大切だ。アナだっけ?その子を育てると決めた以上、しっかり導いてやれよ?」
それが俺から告げる最後の言葉だった。
次にやってくるのは五年後、俺からすればさらに四ヶ月後。
その時、この世界がどうなっているのか、それは俺にもわからない。でもアリエスならばどんな困難が待っていても乗り越えてくれると信じている。そしてもし、その心が折れてしまった時にはきっと………。
この世界の誰かが助けてくれるはずだ。
そう確信した俺は少しだけ伸びてしまった髪をなびかせながら妃愛のいる世界に戻っていった。あちらの世界ではまだ戦いが続いている。この世界にはない凄惨な戦いが。
でも単純に。
アリエスの顔を見られて俺も元気が出た。
だからもう少し頑張ってみようと思う。
世界を救うなんて大げさなことは言わない。俺は俺にできることだけをやる。
今までもそうだったし、これからも、この先もそれは変わらないだろう。
そんなことを考えながら俺たちはまた日常に戻っていった。
この物語はそんな日常の中で生きる、少しだけ変わった夫婦の物語だ。
次回は本編に戻ります!
誤字、脱字がありましたらお教えください!
次回の更新は明日の午後九時になります!




