ぷちしんわ 十六の巻
すみません、すみません、すみません!
本当に今週は時間がありませんでした、本当にすみません!
明日はきっと本編を更新します!
初めに。
これはハクたちの冒険の中で起こった短い閑話をまとめたものになります。時系列は基本的にバラバラで、本編とはまったく関係のないお話です。
この手のお話があがるということは、作者が何らかの予定で小説をまともに執筆できなかった可能性があります。場合によってはかなり短いお話になっている可能性がありますが温かい目で見守っていただけると幸いです。
というのがいつもの流れですが。
今回はギャグはなしです。
たまには舞台の裏側を語るような一幕があってもいいかなと思いまして。
時系列は読んでいただければ理解していただけるかと思います。
「手に入れた安寧」
「スー、スー、スー………」
小さな寝息がいくつか聞こえる。
その横顔を覗き込めば幸せそうに眠る三人の顔が私の瞳に映り込んできた。
数年前まではこんな光景、見ることすらできないと思っていた私だけど、いざ目の前にしてみると絶対に手放したくないという思いが強くなっていく。
かつての私はもはや生きることすら放棄していた。でも死ねなかった。何度も死のうと思ったし、何度自殺を図ったかわからない。
でも、今はこうして愛する人と何よりも可愛い息子と娘に恵まれている。
それもこれも私に愛する人、レントが生きる意味を与えてくれたからだ。もう懐かしさすら覚えてしまうあの戦い。暴走したリアナを沈め、世界の人々全員が危機に立ち向かった大きな戦争。その中心に私たちは立っていた。
私は特別な存在ではない。確かに世界に選ばれたり、リアナの力を受け継いだりと少々特殊な環境に置かれていたのは確かだろう。でも、それだけだ。そんなもの「本当に大切なもの」に比べれば何の価値もない。
でもあの頃の私はそれを履き違えていた。
レントに出会う前の私は生きる力を、何かに争う力を欲していた。
だけど、いざその力を得た瞬間、私はその力を欲していたわけではないことに気がついた。私が手に入れた力は結局争いを生むものでしかなかった。私の手に入れた力は、レントの関係を裂いてしまうものでしかなかった。
でもその力すら私は手放せなかった。
手放すことを許してもらえなかった。
………。
「………でも、今はこうして幸せを噛み締めてる。一度死んだはずの私がまたこうしてレントの隣にいられることは本当に奇跡なんだよね」
もしこの世界に奇跡という概念が存在しているとすれば、私は間違いなくその恩恵を受けている。いや、正確には色々な人が私が死なないように計らってくれたからなのだが、それにしても私が自身の運命を変えることができたのは、奇跡と呼んで問題ないだろう。
つまりそれだけのことだった。
私が空想天園を発動し、自ら崩壊へ飛び込んだのは。
でも、あの時。
レントは私を繋ぎ止めてくれた。抱きしめてくれた。
だから今がある。
レントと私によく似た二人の子供が私たちの間で寝ている。そんな景色を見ることができている。
もう私は、戦いに赴くことはないだろう。きっと「あの人たち」はずっと戦い続けているのかもしれないが、その中に私の居場所はない。
でもそれでいいんだと思う。
武器を持って戦うことだけが「戦い」じゃない。私にとっての「戦い」は今目の前にいる家族を守ること。世界中の誰よりもこの家族を愛すること。それだけだ。
一見冷たい意見に聞こえるかもしれないが、私の場合誰かを守れるほど器用ではない。でも、それでも家族だけは守りたいとそう思っているのだ。
だから。
私は………。
「泣いてるのか?」
「………レント?」
「目、赤いぞ?」
不意にそう呟かれてしまった。
改めて自分の顔を確認すると確かに目が潤んでいる。でも泣いてはいない。泣きそうにはなっていたけど。
「ごめんね、心配かけちゃったね。でも大丈夫だよ、泣いてないから」
「………昔のこと、思い出してたのか?」
「………うん。私たちはハクさんとは違う道を選んだ。家族を築くことを選んだ。そのために力を使うことを選んだ。今もその選択に後悔はないよ。でも、少しだけ、ね………」
「………言いたいことはわかる。だけど、俺たちは俺たちの道を突き進むだけだ。それが俺とお前の人生だろ?」
その言葉に一瞬だけ私は固まってしまう。
でもすぐに笑顔を取り戻すと、今度は嬉し涙を浮かべたまま強く頷いた。
「うん」
これが私、ユノアのその後。
思うところはいっぱいあるけれど、それでも前を向いて生きていく。
そんな日常の断片だ。
もし、この続きを語ることがあるとすればそれは、新たな物語が幕をあける時だろう。
そしてそれは意外と早く訪れるかもしれない。
次回は本編に戻ります!
誤字、脱字がありましたらお教えください!
次回の更新は明日の午後九時になります!




