ぷちしんわ 十三の巻
本当にすみません、今忙しすぎて倒れそうなんです……。
でもこのお話は書いていて泣きそうになりました……。
ではどうぞ!
初めに。
これはハクたちの冒険の中で起こった短い閑話をまとめたものになります。時系列は基本的にバラバラで、本編とはまったく関係のないお話です。
この手のお話があがるということは、作者が何らかの予定で小説をまともに執筆できなかった可能性があります。場合によってはかなり短いお話になっている可能性がありますが温かい目で見守っていただけると幸いです。
というのがいつもの流れですが。
今回はギャグはなしです。
たまには舞台の裏側を語るような一幕があってもいいかなと思いまして。
時系列は読んでいただければ理解していただけるかと思います。
「長い時間の中で」
アナ!起きて、アナ!
遅刻しちゃうよ!
アナ!
「はっ!」
その声に引っ張られるように私は目を覚ました。
でも。
そこには誰もいない。
住んでいた家も、声を発しているであろう「その人」も。
そこにはいなかった。
「………あれから一体何年経ったかな。もう数えることもやめちゃった………」
そう言って脳裏に浮かぶのは「あの人」の顔。
私が犯した過ちは「あの人」をこの世界から消してしまった。
たった一度、そうたった一度だ。
人生という道を一度踏み外したせいで、今の私は孤独に耐えている。
それが別に苦痛というわけではない。後悔はあるけど、後悔を覚えることに後悔はしていない。こうなる運命だったのだと思えば、それも受け止められる。
でも。
「やっぱり、寂しいものは寂しいかな………」
そう呟いた私の視線の先には「四つの剣」が壁に立てかけられている。それらの剣にはかつてあったであろう立派な刀身はなく、どれも折れたり亀裂が入ったり不完全な状態でその場に鎮座していた。
だから。
今の私が抱えている気持ちを分かち合える人はいない。
すでにこの世に「かつてそうだった人」もいなくなってしまった。
でも。
私は生きている。
百年、千年、一万年と長い長い時間を生きて、なお私は死ねなかった。
だから、私には生きることだけが生きがいと言えてしまう。私の価値であり、私の目的であり、私の贖罪なのだ。それを「いつかくるその日」まで全うしなければ私は死んでも死に切れない。
ゆえに。
私は机に突っ伏しながら少しだけまどろんだ後、うたた寝していた椅子から立ち上がって体を伸ばしていった。凝り固まった体は筋肉を引き延ばすたびに妙な音を立ててくる。
でもそれが心地いい。
生きている実感が持てる。
すると。
そんな私の下に「一本の剣」がひとりでに近づいてきた。空中に浮かびながらゆっくりと私の手の中に入ろうとしてくる。そんな剣を私は掴み取ると大きくあくびをしながらこう呟いていった。
「ふわあぁ………。あ、そうだ。洗濯物干さなくちゃ………。最近は時間の感覚もなくなってきちゃったから気が抜けてるなあ………」
この家にも一応時計は存在する。
でもその時計は壊れるたびに何度も直してきた超レトロ品だ。今、この世界に出回っている時計はこんな針がついていたり数字が刻まれたりしていない。もっと近代的な形状をしている。
それは私が生き続けている間に、世界の文明レベルが飛躍的に上昇した結果であり特段おかしなことではなかった。
というかむしろ。
おかしいのは私だ。
街に行けば金属やコンクリートによって作られた家が一般的。でも私が住んでいる家は過去を掘り返すような木造住宅。加えて、極めて街から離れたこの地域だけは自然を残している。
街にいるであろう大企業の社長や地主なんかはこの自然をすぐにでも開拓したいと考えているのだろうが、それはこの私が許さなかった。
だって。
この地は私と「あの人」が生活した場所だから。
そして今は………。
「アナお姉ちゃんー!きたよー!今日も美味しいクッキー食べたいなー!」
「はーい!今、行くからねー!」
そう言って私は玄関の扉を開ける。
するとそこにはニコニコと微笑みながら私に笑いかけてくる少年少女の姿あった。
そんな彼らに。
笑顔を届け続けること。
それが私の仕事だ。
文明が発展しても。
住んでいる環境が変わっても。
友人や知人がいなくなっても。
それでも私は前を向く。
その一瞬を全力で生きるために。
いつか戻ってくる「お姉ちゃん」に胸を張れるように。
私は生き続けるのだ。
次回こそは本編に戻ります!
誤字、脱字がありましたらお教えください!
次回の更新は明日の午後九時になります!




